第107話 学院祭準備3
「じゃあ、夕食でね」
「うん」
ボクは寄宿舎へ戻ってロランスと別れ、部屋へと一旦戻った。
本当、決まらなかったな。
明日とかは決まるのかな。
そして夕ご飯までしばらく部屋で休んでいた時。
ドアをノックする音が。
「はい」
開けてみると、ゼナイド様が立っていた。
「えっ、ゼナイド様……!?」
ロランスも取り巻きもいなかった。ゼナイド様一人で。
どうしてこんなタイミングで。
びっくりしながらも、部屋に案内する。
「失礼するわ」
「うん……」
ゼナイド様が入ってくるのって、初めてかな。
だから緊張して、とりあえず椅子を勧めた。
「ねえ、先程の話し合い、どう思ったのかしら?」
話題はそれだった。
扇子を半開きにして、ボクと話していく。
学院祭の準備。
「え……決まらなかった、です」
「ええ」
ゼナイド様はそう頷いただけで、否定も肯定もしていない。
「だけど」
一拍。
「”何が出来ないか”は、だいぶ見えましたわね」
音楽系は被って、展示は地味。
派手さと実務が衝突する。
「それって……良い事なんでしょうか」
「ええ」
ボクが恐る恐る訊くと、ゼナイド様は即答した。
「最初に決まらない時ほど、後で歪みにくいのよ」
「……え?」
一瞬、ボクは分からなかった。
「無理にまとめると、誰かが無理をするの」
でもゼナイド様が補足した。
「ボク、何か案を出した方が、良いでしょうか」
思わず、ボクは訊いてしまった。
するとゼナイド様は、首を横に振った。
「いいえ。今日は、まだ早いわ」
「今日は?」
「ええ」
いつかは、ボクも案を出さないといけないんだ。
難しいかもしれないけれど。
「ロランスは、空気を読む人よ」
唐突だった。
「アデリナ嬢は、責任を抱えすぎる」
「…………」
「ブランカ嬢は、アデリナ嬢を守ろうとする」
それぞれ説明をしていた。
「だからこそ、貴方が間に立てるのよ」
評価じゃない。
役割の指摘だった。
「ボクが?」
「ええ」
ゼナイド様は、それ以上は説明しなかった。
「次の話し合いでは」
一拍。
「”決めなくてもいい部分”を、先に決めると良いでしょう」
「それって?」
「後で決める事を決める、という意味ですわ」
言葉は難しかった。
でも、今決めないといけないものを減らすという事かな。
「さてと、そろそろ夕食ですわね」
「うん」
「では。夕食か明日の学院でね」
「お疲れ様です」
ゼナイド様は扇子を閉じて出ていった。
(助言……だったのかな)
命令でもない。
作戦でもない。
でも。
(命令されなかったのに、動き方だけ教えられた)
頭の中が、少し整理された。
(後で決めることを、決める)
不思議だけれども、悪くない気がした。
そして夕食の時。
食堂へ降りていって、夕ご飯を食べていく。
やがてロランスが隣に座った。
一緒に食べていく。
「ね」
少ししたタイミングで、ロランスが話しかけた。
「どうしたの?」
「ゼナイド様がポラリスさんの部屋の方に向かっていたけれど、来ていたの?」
「うん」
見ていたんだ。
「たまたま見ただけだよ。ねえ、ゼナイド様と何か話をしたの?」
「うん。急がなくていいって」
簡単に話した内容を伝える。
するとロランスは少し笑った。
「それ、一番助かるやつだね」
「うん。そうかもしれない」




