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ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
にゃん二章 新しい日常
8/22

にのに

 ────結局、アタシは彼(?)に副店長とペンギンが口をつぐんだ内容を聞くことはせず、おとなしく部屋に戻ってお店の制服に着替えた。

 それから、みんなで朝食をすませて、お店の開店準備をして今はお店の開店直後。

 ただ、ねこカフェの方は昼前からが開店時間なため、カフェフロアへと続くドアには『準備中』の札が掛けられている。

「───さて、それじゃ今日の午前中は新人バイトの二人と新人ちゃんには土地勘を養ってもらいます」

 店長は据置きのPCで『お店』にネットでの依頼がきてるかの有無を確認したあと、彼(?)と飛び入り住み込みアルバイト大学生さんとアタシにそう告げた。

 アタシはてっきり初日から依頼に駆り出されると思っていたので、少しばかり肩透かし。

「幸か不幸か現在のところ依頼も来ていないみたいだし、三人には出来るだけ早く街に馴染んでもらわないとね。それにカレ……あー、オホン、少年は一週間もしたら学校が始まるんだから通学路も覚えないと。

 あ、君の方は大学までの通学路は?」

「昨日、確認してきましたので大丈夫です。」

「そう。」

 大学生さんが店長の問い掛けにそう答えると、彼(?)は慌てた表情になる。

「……そういえば確かに、まだ学校までの道順を確認してなかった」

「そういや、少年の通う学校ってどこだ?」

星御海ほしおみ学園の高等部です」

「へぇ~、希と叶が通ってるのと同じ学校だね」

「はい!」

「──……あのー……」

 副店長と彼(?)と店長の話が盛り上がりかけているところであれなのだが、アタシは店長の言葉におかしな箇所があったので、敢えて水を差す。

「ん? 新人ちゃんなにかな?」

「あの、先ほど依頼が来てないって言ってましたけど、二件ほどありませんでしたか?」

 アタシは店長がPCを操作しているのを横で見ていたから知っているのだが、『お店』のHPには三件の着信があった。さらに店長はそれらを開いて内容を確認している。ただ、そのうちの一件は依頼否受理のボックスに移していたので受けないのだろう。

「ああ、それね。一件は依頼の日時は今日じゃないし、もう一件は依頼内容の履行は何時でもいいってあったから急いで受けなくてもいいかなって」

「はあ、そうなんですか。わかりました」

「それじゃ、詩音くん三人の街案内を頼めるかな?」

「あいよ、頼まれた。

 そんじゃ、三人とも早速出発だ!」

「「はい」」

 え? もう出発!?

 ケータイとか地図の準備は……?

 アタシの内心の戸惑いをよそに副店長と彼(?)と大学生さんはそそくさとお店の出入口へ。

「……あ、三人とも待って──」


 ──コロンカラン。


「さて、じゃあ先ずは少年の通学路からいくか」

 副店長は『お店』を出てすぐに最初の目的地を口にした。

 学校か……。

 そういえば、先日までアタシも学生だったんだな。

「Socius、星御海学園へは?」

 副店長はブレスレット型のケータイ端末のAIに呼び掛ける。

 すると、AIが検索した結果のマップ画像が端末の数センチ上に空中投影された。

「うわー、詩音さん、ソレって値段がとんでもないヤツですよね。スゴいなー!」

 副店長のケータイに目を輝かせる彼(?)。なんとも、年相応の笑顔で可愛い。

 確かに、ケータイ端末の主流は未だに二十一世紀に登場した扱いやすく程よいサイズのスマホ型。値段も最新モデルでさえ、現在は気楽に買い替えられるお手頃価格。

 ただ、副店長が身に付けているような特殊型のケータイ端末になると話は全くの別次元。その販売価格は軽くいい値段する新車を上回っているのをCMで見たことがある。

 副店長って見かけによらずすごいリッチなんだ。

「ま、予想していた以上に歌がヒットしてるからな。懐に余裕が出来たことに、つい浮かれて買ったんだ。案の定、妹に呆れらたけどな……」


 それから、いろいろな雑談と副店長による道すがらにあったお店や彼(?)が通学路に慣れるまでは目印にしておくといいモノの説明を聞きながら、素通りなら約30分の距離を倍の1時間で踏破した。

 で、今は星御海学園の校門前。

「あ! 詩音さん、後輩ちゃん、後輩君おはよう♪

 それと、新人ちゃん、久しぶり」

「おはようごさいます、カレ……後輩ちゃん、詩音さん、後輩さん。

 それと、お久しぶりです新人さん」

「おう、おはよう、希ちゃん、叶ちゃん」

「おはようごさいます、叶さん、希さん」

「おはよう、希ちゃん、叶ちゃん」

「……えっと、久しぶり、希ちゃん、叶ちゃん」

 到着して間もなく、顔見知りに声を掛けられた。

 彼女たちと会うのは顔合わせの時以来。

 年齢はアタシの方が上なのだけど、希ちゃんたちはアタシのことを後輩どころか新人扱い。そりゃ、自分は新社会人だけども……、──それって…………どうなの?

 内心でそう疑問を呈するも口には出さない。いや、出せない。

 まだ、打ち解けてもいないのなだから馴れ馴れしい態度をとるのは如何なものか、と。

 そう、アタシは思うのだ。

「ところで、詩音さんたちは依頼で学園に?」

「いや、少年の通学路の確認で、だ」

「へぇ~、そうなんだ。そういや、もう直ぐ入学式だものね」

「あの、後輩ちゃん。後輩ちゃんがよかったらでいいんだけど、入学したら学校内の案内をボクがしてあげる」

「叶さん、いいんですか?」

「うん」

「でしたら、是非お願いします」

「話は変わるが、希ちゃんたちは部活かい?」

「ええ。春休み中くらいは個別活動を認めてくれてもいいと思うのだけど、部長がね……」

「あの、希さんがやってる部活って?」

「ん、オカルト研究部よ。まあ、オカルト研究って言っても、昔からのテンプレテーマなUFO関係やUMAや心霊現象は一切やらずに、研究テーマは清美市ここにまつわる都市伝説よ」

「都市伝説ですか……。ちなみにどんな都市伝説があるんですか?」

「う~ん、そうね……例えば『悠久なる四季テンプスデアエテルニタス』あたりが有名どころね。全四ヶ所で春夏秋冬の各々のスポットがあるらしくて、一つでも辿り着けたなら幸せになれるってジンクスがあるの」

「へぇー、そうなんですか────」

 なんだろうか。彼(?)が希ちゃんたちと愉しそうに会話しているのを見ていると感じるこのもやもやした感じは。

 アタシだけ、輪の外にいるような……────

「どうした、嬢ちゃん?」

「はえ!? ……い、いえ、なんでもないです」

「……そうか。オレはてっきり、出会って間もない相手とすぐに打ち解けられている少年のことが、嬢ちゃんは羨ましいのかと思ったんだが、勘違いだったか……」

 ──ハァー……。

 なんで言い当てちゃうかな、副店長は……。

 そう、まさにその通り。

 気付けば、男子生徒二人──おそらく校内から出てきたと思われる──が話の輪に加わっていて、その輪の中でも彼(?)はもう打ち解けていた。

「少年、そろそろ次行くぞ」

「はい。わかりました。

 それじゃ、わたしはこれで」

 彼(?)は希ちゃんたちに会釈して、談笑していた輪から抜けてくる。

「うし、じゃあ行くか」

「はい!」

 副店長は手振りで希ちゃんたちに挨拶をすると、アタシたちを先導して移動を開始します。

「さて、細かいところは後回しにして一先ずは大雑把な地理を三人には覚えてもらうよ」



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