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ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
えぴろーぐ
22/22

ごのいち

 お花見が始まってすぐ、副店長が景気付けにとギターを手に1曲を披露した。

 その歌声は、大学生の時に一方的に友達宣言をしてきた知り合いが絶賛していた通り、心に響くものだった。

 そういえば、いまでも週に2回、アタシ自身は入れた覚えの無いチャットアプリに定時連絡さながら、その知り合いから書き込みがある。

 一応、相づち程度だが、返信の書き込みはしている。

 確か書き込みがある曜日は決めているのか、週始の日曜日の夜と週中の水曜日。ただ、祝日や知り合い自身に特別なことがあった時は上記のかぎりではない。

 そうだ! 今日は祝日だし、おそらく知り合いからの書き込みがあるだろう。せっかくだし、その返信にさっきの事を併せて書き込もうかな……?

 そんなことを考えていると、アタシの手が止まっているのを気にしてか希ちゃんが側にきた。

「きびちゃん、食べてる? このサンドイッチ、あたしと叶で作った自信作ばかりだから食べてみて♪」

 さすが、希ちゃんと言ったところかな。スゴい自信だ。

「……そうなんだ。それじゃ、いただきます……」

 促された手前かつ拒否る理由もないので、手近にある1つを手に取り、口へと運ぶ。

 ──パクっ。

 あ、

「ホント、美味しい!」

「でしょ♪」

 言ってはなんだけど、希ちゃんって器用だと思う。

 いつも好奇心旺盛で活発だから、作る料理もがっつり豪快そうな印象を受けるのだけど、いま食べたサンドイッチの具は素材の味が絶妙なバランスで組み合わされていて美味へと昇華されていた。

「じゃあ、今度はあたしが作ったのを食べてみて♪」

 ──はい?

 そう言って、希ちゃんは見た目はキレイなんだけど……、その……最初の一口を食べるのに勇気が要るサンドイッチを手渡してくれた。

 なるほど、さっき食べたのは叶ちゃん作だったんだ。

 ──ゴクっ。

 意を決して、アタシは目を瞑り、手の中にある挟まった具の一層が毒茸ばりの色彩を放つサンドイッチを口に運ぶ。

 ──あ~~ングっ。

 ん!? これは────

「──普通においしい!」

 食べたあとに口の中に溢れるシュワシュワ感が爽やかな後味を残す。

 一体、具の素材は──

「ふふ~ん。あたし特製の“ベーコンハンバーグソーダ”サンドイッチは気に入ってくれた?」

 ────────え?!

 ベーコン・ハンバーグ・『()()()』ッ!?

 『ソーダ』っていったら、あの『ソーダ』だよね……。

「もう、ソーダをジェル状(?)……煮こごり状(?)──どっちでもいいか──にするのちょっと手間取っちゃったのよね」

 ──あはは……。やっぱり、希ちゃん器用だわ。

「やっぱ、ソーダの色といったらブルーハワイだよね。きびちゃんも、そう思わない?」

「……うん、そうだね……」

 そういうことね。具の層の中にあった鮮やかなブルーはその色だったんだ。

「──お兄ちゃんほどじゃないけど、それでもいいなら────」

 はて、なんだろうか?

 ふと、耳に入ってきた歌音ちゃんの声に、自然と視線が彼女の方へと向く。

「『──ん? ああ、折角の花見なんだし、歌のねぇちゃんにも一曲披露してもらえないか、って話だ』」

 なるほど。アタシの視線に気付いたペンギンの気遣いで状況を把握。

 へぇー、歌音ちゃんの唄か……。

 ペンギンが副店長のことを『歌の──』と呼んでいることを鑑みるに、歌音ちゃんのことも『歌の──』と呼んでいるということは、歌音ちゃん自身は謙遜しているけれど彼女もまた副店長なみに唄が上手いのだろう────────事実、現在このときより少し先にてアタシはそれを実感したのだから────。




 木漏れ日が射す中、満開の桜の樹の下で、みんなと笑いながら過ごすこのひとときは───────




「『小娘、なに独りゴチてんだ?! 歌のねぇちゃんが今から歌うんだから、そんなの後にしろ!』」

 ──……………………ハァ。

 まったく、空気を読まず情緒の足りないペンギンだな……もう────────









         ──春・了──


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