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ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
にゃん一章 『にゃんてSHOP』にようこそ!
2/22

いちのいち

 ──主な登場キャラ紹介──


 ・少年

 東京からやってきた少年。音恋の厚意で『にゃんてSHOP』で下宿。


ぷろろーぐ・一章・三章の語り部


 ・新人店員

 この春から『にゃんてSHOP』の店員になった新人の女性。


二章・四章・えぴろーぐの語り部


 ・店長/音恋ねこ

 ねこが大好きすぎる“ねこ第一主義”の『にゃんてSHOP』の女性店長。


 ・副店長/詩音しおん

 『にゃんてSHOP』の副店長を務める男性。副業でシンガーソングライターをしており、名前の詩音しおんは芸名。


 ・歌音うたね

 副店長の妹。ねこカフェのカフェフロアを任されている(但し、お手伝い扱い)。


 ・夢野ゆめの のぞみ

 『にゃんてSHOP』のアルバイト店員第一号。後述の夢野 叶とは双子。


 ・夢野ゆめの かなえ

 『にゃんてSHOP』のアルバイト店員第二号。高校生ながらフリーのプロフルーティスト。前述の夢野 希とは双子。


 ・ギーペ

 人間と同等以上の知能と知性を有するペンギン。『代声機』という機械で人間の言語を操り、会話によるコミュニケーションができる。


 ・みぃ

 『にゃんてSHOP』の看板猫。人間並みの高い知能があり常時二足歩行し、その体躯は雄牛ほどもある超巨大猫。


 ・ねこカフェのネコたち

 『にゃんてSHOP』のねこカフェにて飼われているネコたち。



「ここが清美市。これから三年間、わたしが過ごす街か……──」

 レトロ仕様の電車を降りてホームを抜けさらに改札口も抜けて駅舎を出た先、生まれ育った東京には既になくなっていた街並みが広がっていた。

 過去の大災害で壊滅した東京は、今現在は軌道エレベーターを伴う超巨大タワー都市に生まれ変わり、ハイテクを駆使した世界の最先端。

 だけど、本物の空も予測のつかない空気の流れである風も、ハイテクで出来たタワーの内にはなかった。

 目の前に何処までも拡がる本物の青空にわたしは心奪われる。

 お父さんが以前言っていた「本当の世界の広さ」の一端がこれなのだと直感する。

「すごーい、本当にすごーい……」

 たまらず、周囲の目を気にする事なく、はしゃぐわたし。

 ただ、惜しむらくは家族全員で、この青空を仰ぎたかった。

 もともと、ここ清美市にはわたしと両親の家族三人全員で移り住む予定であった。

 だが、急転直下の青天の霹靂、急遽お父さんの異動先が変更になったのだ。

 そして、その時点で既に進学先である清美市に在る学校の入学手続きが完了していたわたしは、今更進学先をお父さんの異動先に変更するには時既に遅しだった訳で、やむを得ず、こうして一人で清美市に降り立ったのだ。


 ──ぱんっ、ぱんっ!


 いけない、いけない。

 これから新たな第一歩を踏み出すというのに、後向きな思考に陥るところだった。

 まあ、家族と離れて暮らすのはこれが初めて。

 孤独で不安になるのは仕方がないことなのかもしれないのだろうけど、下宿先の家主の音恋ねこさんは優しそうな人だったし、後ろ向きな考えをしたそんな自分に頬を叩いて活を入れました。

「よしっ!」

 活を入れて思考がクリアになった。

 さて、確か駅に迎えの人が来てる筈です。

 何処に────────


 ────へ!?


 周囲をキョロキョロと見回していると、目に入ったのは二足歩行する超巨大な猫。

「なに、あれ? 可愛いし、もふもふしたい!」

 着ぐるみであろうことは分かってはいるけれど、実に本物そっくりで、まだ生で本物の猫を見たことのないわたしには着ぐるみでも、スゴく触りたい衝動に駆られる。

 その超巨大な猫は悠然とした足取りで此方に向かって歩いてきていて、まるでお伽噺に出てくる猫妖精ケット・シーが現実に顕れたかのよう。

 そんな歩く巨大猫に対する周囲の反応は大きく分けて二つ。

 一つは、驚愕したり信じられないといった非日常に遭遇した的反応。

 もう一つは、その巨大猫の存在が当たり前で、さして反応を示しなかったり、ちびっこなんかはわたし同様に触りたそうしていたり、他は「可愛い」と言いながら写真を撮っていたりと、普通の日常の一コマ的反応。

 さらに、言い加えるなら、前者よりも後者の反応を示した人数の方が圧倒的多数であった。


 ──しかし、ホントあの巨大猫──



 ──なんたる、もふもふ──



 心の内に留まっていた衝動が、抑え込めていた理性の蓋をこじ開けて這いずり出てくる!

「──ああ、あの猫、心行くまでもふもふしてみたいなー……──」

 欲望を口に出すと、余計に衝動が強まる!

 ああぁぁぁ、ダメだ──


 ────────抱き、もふもふ♪



 わたしの目の前までやって来た巨大猫。わたしは堪らず、その巨大猫に抱きつき、もふもふします!!!!



 心行くまで、もふもふ為たところで、わたしはハッとします。

「──ご、ごめんなさい! イキナリ抱きついて、もふもふしてしまって、本当にごめんなさい!」

 巨大猫から離れて、その巨大猫に誠心誠意謝ります。

 おそるおそる顔を上げると、巨大猫はわたしをジッと見たまま怒ってる様子もなく、ホッと胸を撫で下ろします。

 そして、巨大猫はどういう訳かわたしの隣に立って並びます。

 わたしは一先ず、隣の巨大猫を視界に入れないようにしながら、迎えの人探しを再開。


 ──暫く周囲を見渡しましたが、それらしい人影は皆無。

 今更ながら、音恋さんに連絡すればいい事に気付きケータイを取り出すと、──

 ──ピロリン♪

 ──メッセージが!

 点灯したケータイの画面を見ると、音恋さんからで『出迎えに行ったコとは出会えた?』と。

 しかし、わたしはいまだ出迎えに来た人には会えておらず、音恋さんにビデオ通話を繋ぎます。

『はーい♪ お久しぶり』

「お久しぷりです、音恋さん。」

『どうしたの?』

「はい、実は出迎えに来てもらった人にまだ会えなくて……──」

『そうなの? って、なんだ、会えてるじゃない』

「はい?」

 音恋さんの言葉にハテナが頭を飛び交うわたし。

 今現在、わたしの周囲にいるのは先の巨大猫だけで、その巨大猫がわたしのケータイの画面をのぞき見していました。

 …………………!?

「──……あの、音恋さん。出迎えに来た人って……──?」

『ええ、そうよ。いまあなたの隣にいるねこの『みぃ』君よ♪』

「はうあ!」

 驚きのあまり変な声が出てしまいました。

 っていうか、

「コレ──いえ、このコはマジで猫なんですか?!」

『そうよ。みぃ君は突然変異種で他のコと違ってとっても大きいのよ。驚いた?』

「ええ、そりゃあ、もう驚きました!」

『ふふふ、それじゃ、『お店』まではみぃ君が案内してくれるから。待ってるわね。』

「はい。今日からお世話になります!」


 巨大猫のみぃに連れられて、『お店』──街の何でも屋『にゃんてSHOP』に向かうわたし。

 そこがわたしの下宿先で、今日から星御海学園高等部を卒業する迄の三年間の家になるところです。

 ところで、いま歩いている路地はコンクリート塀に挟まれた何処までも続きそうな無骨な道路で、途中途中に横路や十字路はあるのですが、まるで「先程、通った場所なのでは?」と錯覚してしまいそうな雰囲気、そんな白昼夢みたいな道です。

 そんな不気味な感じのする路地を進むこと数時間?

 ふと、ケータイを取出し、時間を確認すると────


「さ、三十分!?」


 実際は、駅から歩き出した時刻から約三十分ほどしか経っていませんでした。

 マジですか…………。

 体力的疲れよりも不気味な道の所為による精神的疲れに、わたしは知らずうちに先を歩いているみぃの背中に抱きつき顔を埋めていました。


 それから体感時間で更に数時間。実際には二十分ほどで気味の悪い路地を抜け、遂にわたしは、────


 ──『にゃんてSHOP』へと辿り着きました。


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