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ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
にゃん四章 永遠桜
19/22

よんのに

「おー、いい晴れっぷりだな!」

「まさにお花見日和だね♪」

 副店長と店長を先頭に、猫12匹とペンギンと猫の着ぐるみを着た人(?)を連れた一行が往来を行く。

 まだ朝の時間帯だけど、今日は休みの日なためか、それなりの人出になっていて、すれ違う人たちは一様に「何事か?」とアタシたちを注視する。

 まぁ、普通はそうなるよね。

 一行の構成員だけでも十分に注目の的になるのに、ソレに輪を掛けて注目を集める要因がある。

 それは、逸れないようにハーネスを着けられた猫たちが、店長に乗っかったり抱っこされている猫たちを除いて規律正しく行進していること。

 普段は自由気ままに振る舞っている猫たちが、隊列を組んで──大袈裟な言い様だけど──威風堂々と歩みを進める様は圧巻である。

 差し詰め、猫の着ぐるみを着た人(?)は猫の王様といったところか。

 ──でも、猫の着ぐるみを着た人(?)は何時見ても猫の着ぐるみ姿のままで、暑苦しかったり、汗臭くなったり、しないのだろうか?

「『おい、小娘。小娘は勘違いしているぞ』」

 歌音ちゃんに抱っこされているペンギンが、早速、アタシの考えてることを読んで口出しをしてきた。

「勘違いって、何を……ですか?」

 今はみんなの目もある手前、言葉を口に出してペンギンと会話をする。

「『みぃの事だ。小娘は中に人が入っていると思い込んでいるようだが、みぃは正真正銘列記とした猫だぞ!』」

 ──はい?

「……えーっと、それは冗談ですよね?」

「きびさん、ギーペの言ったことは冗談じゃないよ。みぃを拾ってきた、私が保証します!」

 ペンギンを抱っこしている歌音ちゃんが会話に加わり、ペンギンの言が偽りではないと……───って、歌音ちゃんが『拾ってきた』? あの、デカいのを──?

「『いや、歌のねぇちゃんがみぃを拾ってきた時は、みぃの体の大きさはまだ十歳くらいのヒトのサイズだったな』」

 それでも、十分大きいよ!

「あの、歌音ちゃんがその猫の着ぐる……──じゃなかった──みぃを拾ってきたときに店長や副店長は何か言わなかったんですか?」

「うーん、音恋さんは大はしゃぎだったし、お兄ちゃんは驚きはしたけど快くみぃのことを受け入れてくれたから。特にはなかっですね」

「そうですか……」

 なんていうか、あの人たちらしい。

 しかし、まさか着ぐるみを着た人(?)じゃなくて、本物の猫だったとは、真実を知っても俄かには信じがたい。

 背中とかに着脱のためのチャックが付いているのではないかとの疑いが未だに晴れない。

 アタシは歩くペースを落として最後尾に位置を取り、巨大猫の背中を注意深く観察する。

 茶トラの毛並みに揺れ動く尻尾。

 ジッと観察するも、観察だけでは前述以上のことは分からず、ここは意を決して接触を図ってみるとしよう。そうすれば、アタシの中で燻っている“猫の着ぐるみを着た人(?)説”が払拭できるハズ!

 アタシは歩くペースを少し上げて、巨大猫の背後に忍び寄る。

 ──もう少し。あと、もう少しで無理なく手を伸ばして、巨大猫の背中に触れられる。

 そして、ついに目標がセンターに入る位置に着いたまさにその時。

「あ……!?」

「…………」

 アタシの気配に気付いた巨大猫がこちらを見た! 視線がバッチリ合うも、アタシに興味が無いのか、巨大猫はすぐに顔を前に向けてしまう。

 なんだろう。相手は巨大でも猫なのだから、概ね素っ気ない態度をとるのは当たり前だとしても、少しはなんらかの反応があってもいいのでは……?

 釈然としないが、今日のところは巨大猫への疑念の払拭は大人しく諦める。

 そもそも今日はお花見なのだから、些細な事に気を割くのは勿体ない。

 アタシは気分を切り換えて歩くペースを上げて、最後尾から元の位置に戻る。


「はーい、みんな、ここからは『道』に入るから、はぐれないようにしてね」

 とある場所にて店長は一旦足を停め、一行もならって足を停める。そして、店長はさきの注意事項を告げると再び足を動かし歩きだす。

 一見すると何の変哲もない脇道。だけど、意識していないと脇道への入り口が在る事がわからなくなる。

 ──なに、コレ?! わけがわからない。


 脇道に入ってから、暫し。

 目に入る風景は殺風景で本当にこの道の先に桜の木が在るのか不安になる。

 コンクリート塀に挟まれた寂しく古ぼけた感のあるアスファルトの道。まるで時の流れから置き去りにされたようで、言い様の無い奇妙なノスタルジー感が漂っている。

 ──すごく、不気味。

「どうした、嬢ちゃん?」

「あ、副店長。いえ、この道がなんか不気味だなって思って……」

「そうだな。オレもココ以外の『道』にも入った事があるが、何処もこんな感じだったな」

「こんな場所が他にも在るんですか?!」

「ああ、在るよ。この街の其処彼処にね。ただ、『道』への入り口は何処も注意深くしていなと見落とすから、『地図』があっても見付けるのは難しいらしい。だから、手掛かり無しで自力で見付けるのは偶然になる」

 なにソレ!? この街って一体────?

「────じゃあ、わたしがみぃと一緒に初めて『にゃんてSHOP』に行くのに駅からの道すがら通ったココと似た“あの路地”も──」

「ほぉー。まず間違いなく少年が通った路地も『道』だな。『ウチ』の近くにも在るとは、気付かなかったな」

 前々から頭の隅っこで思っていたのだけど、ホント、この街はいろいろと不思議だ。

 そうだ。せっかく話し掛けてもらったのだし、此等の事も聞いてみるのもいいかもしれない。

「あの、副店長!」

「嬢ちゃん、なんだい?」

「はい、あの、どうしてここ清美市ではアナログというか……レトロな物や仕様が多いのですか? 特に自動車なんて自動運転オートドライバー当り前の時代に逆行どころか叛逆しているかのように手動運転──それ故に現代では稀な交通事故も全国最多発ですし──だし」

「あー、それな。オレも生まれてこの方、この街で運用されている車のほとんどが自動運転じゃないのかの詳細は知らないんだ」

「そうなんですか!?」

「ああ」

 これは益々、この街は不思議──というか、謎である。

「じゃあ、世界共通電子通貨が清美市では使えないのは?」

 まあ、アタシ自身は国内通貨しか使ったことはないが、此処に来る前に住んでいたところをも含めてほぼ何処でも円での価格表示と一緒に世界共通電子通貨『CC(クラウドクレジット)』での価格表示もされていた。

 それが、清美市では円での価格表示のみ。

「あー、それは、本当か嘘かはわからないが初代清美市市長が『国内通貨があるのに世界共通電子通貨──ゲンナマを伴わないデータだけのカネ──とか使うのは邪道だよね』って言って、それがそのまま議会を通過して、清美市でのCCの使用が不可になったんだとか」

「それは、また……荒唐無稽ですね」

 まさかの個人の偏見が条例化された結果とは……。ホント、無茶苦茶すぎ。

「あ、そうだ! 詩音さん、わたしも気になっていることがあるんです」

「ん、少年、なんだい?」

「はい、昨日、詩音さんと音恋さんが言ってた『悠久なる四季』のスポットに立ち入るのに“『Pass』”が必要って、どうしてですか?」

 あー、アタシもそれは気になってた。昨晩、寝る前に『悠久なる四季』について少し調べた──ネットの記事をざっと読んだ程度だけど──のだが、アタシが読んだ記事の中には店長と副店長が話していた“『Pass』”についてはどの記事にも一言もあがっていなかった。

「……フム。そいつを説明するとなると、ちぃ~と長文になるが、大丈夫か?」

「はい、わたしは大丈夫です」

「そうか。なら、説明するぞ──」


 ──どうして『悠久なる四季』のスポットに立ち入るのに“『Pass』”が必要なのか?

 そいつの答えに辿り着くにはこの地に纏わる予備知識が必要だ。だから、予備知識を紐解きながら説明していく。

 まず最初に『悠久なる四季』の春・秋・冬のスポットは清美市が出来る前から、この地に在った。

 おっと、オレの説明の中に気になるヵ所が有っただろうが、質問は一通りの説明が終わった後にしてくれ。

 じゃあ、説明を続けるぞ。

 かつて、この地には国の超極秘の研究施設群があったらしい。その名残の一部が『悠久なる四季』のスポットだ。

 さて、いまの説明でピンと来たかもしれないが、研究施設といえば研究内容が外部に漏れないようセキュリティを設けるのは当たり前の事だ。

 そう、『悠久なる四季』の春・秋・冬のスポットには破棄されて尚セキュリティシステムが今だに生きている。

 それ故に、立ち入ろうとしてもセキュリティによって目的地に辿り着くことは出来ず、知らぬ間に『道』の入り口付近にまで追い出されてしまうわけだ。

 だが、当然の事ながら研究施設群があった当時の研究員が持っていた研究施設に立ち入る為の“『鍵』”か“『Pass』”が有れば、立ち入る事は出来る。

 つまりはそういう事だ。

 あー、ここからは余談になるが、“『鍵』”と“『Pass』”の違いについても説明しておく。

 まずは“『鍵』”だが……、ま、普通の鍵との大差はない。早い話が“『鍵』”があれば自由に何時でも『その場所』に立ち入る事が出来る。

 次に“Pass』”だが、こっちは“『鍵』”と違っていろいろと制限がある。例えば──現在、オレらが向かっている『永遠桜』なんかは立春から立夏の前日までが期限で、この期限内以外では“Pass』”が有っても立ち入る事は出来ない。

 ついでに話すと、秋の『黄金の海原』は立秋から立冬の前日までで、冬の『眠る森』は立冬から立春の前日までだ。

 ここで更に余談だが、説明した中に夏のスポットに関して何一つも無かった理由は、そもそも都市伝説の『悠久なる四季』が成立した当初は都市伝説のスポットは春・秋・冬の三つだった。ところが、“括りのタイトルに「四季」があるのに実質は三つとは如何に?”と物議になった。

 そして、その当時、この三つの土地の所有権を有していた企業のお偉いさんが「丁度、企業ウチが所有している土地の中に『コレ』に当て嵌まる要件を満たし且つ夏のイメージがぴったしのがあったよね。アレを加えれば、めでたく『悠久なる四季』は題名に偽り無しだ」って言って、『悠久なる四季』は今現在の形と相成ったわけだ。

 ちなみに、追加された夏のスポットである『常白とこびゃくの丘』は見学の申請をすれば、基本的に何時でも行くことが出来るぞ。

 ん? 何で、そんな事を知ってるのかって?

 そいつは、前者がオレが自身で実験した結果だがらさ。後者についてはその企業に勤めている知り合いから聞いた話さ。

 以上が『悠久なる四季』のスポットに立ち入るのに“『Pass』”が必要な理由だ。──


 副店長は説明を終えると、「あー、しゃべった、しゃべった。歌を歌う以外で、こんなに口を開いたのは久しぶりだ」と言いながら、携帯していた水筒を傾けて咽喉を潤している。

 そんな最中に、申し訳ないのだが、


 →A:説明の中で気になった事を質問す

    る。

  B:やっぱり、申し訳ないので質問は取

    り止める。


「あの副店長、先の説明の中にあったセキュリティシステムの仕ku──」

「詩音さん、実験したってどういう意mi──」


「「あ!」」


 ……ううぅ、まさか発言のタイミングが彼(?)と被るとは。なんか気まずい……。

「あー……えーっと、きびさんからどうぞ」

「……いえ、アナタが先でいいですよ。アタシの質問は取るに足りないものですから」

 彼(?)は順番を譲ってくれるが、アタシの質問はある意味本当に取るに足りない質問なので彼(?)に譲る。

 ──副店長の説明の中にあったセキュリティシステムの内容をアタシは知っている。『幻惑の迷宮(マジックメイズ)』。中学生の時に自らを魔法使いだと言っていた友人が、休み時間などに話してくれた話の中にあったのを思い出した。

 だから、アタシは思い出した内容と一致するセキュリティシステムの仕組みを知りたかった。

 でも──、どうやら副店長は知らないようだ。今は彼(?)に抱っこされているペンギンが気を遣ってくれたようで、思考を読む能力で探ったのか、アタシの方を視て首を横に振っていた。

「それじゃ、お言葉に甘えて──

 ──あの、詩音さん、実験したってどういう意味なんですか?」

「そりゃ、『ウチ』が今現在『眠る森』の地主だからさ」

「そうなんですか!?」

「はい!!??」

「マジ?!」

「ビックリです!」

 それは、初耳!

 質問した彼(?)やアタシは言うに及ばす、希ちゃんと叶ちゃんもその事を知らなかったようで驚いている。

「ああ、そういえば、希ちゃんたちには言いそびれていたままだったな……」

 これで何度目かはわからないけど──ホント、何でもアリというか、都市伝説の土地を所有しているとかハチャメチャだよ。

 まあ、それで副店長は実験ができたわけか。

 あれ? でも、そうなると新しい疑問が浮かんできた。

 アタシは先頭を歩く店長に視線を向けると、まるでタイミングをはかっていたかのように店長がこちらを振り返った。

「土地の管理は買った当人に任せていたからね。それに、今回のお花見は私単独でのサプライズ企画だったから、詩音くんに聞くわけにもいかなかったし……」

「いや、オレは口は固いほうだから、興を削ぐような真似は──」

「──そうは言うけど、詩音くんは“いもうと”に甘々だから、直接は言わなくても遠回しには言っちゃうでしょ?」

「──確かに……そいつは……否定できないな」

「でしょ。だから、詩音くんに聞けば即解決なところを自力でやってのけたんだから」

「へぇ~、そりゃ凄いな!」

「まぁね。


 ──さて、ようやく到着だよ♪」


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