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ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
にゃん四章 永遠桜
18/22

よんのいち

「はい、じゃあ、続いては先日に明日は空けておいてって言った件に関して」

 普段は休憩室として使用されている一室に、今現在、店長・副店長・希ちゃんと叶ちゃん・アタシ・彼(?)に大学生さん・歌音ちゃん・ペンギン・ねこカフェの猫たち……それと、猫の着ぐるみを着た人(?)──つまり、『にゃんてSHOP』の全員が揃い踏み。

「みんなも分かっているとは思うけど、来月初旬の黄金週間は今年度最初の書き入れ時よ。そこで、その黄金週間を無事に乗り切るための英気を養うために、明日『お花見』をします!」

 …………………………………………………………………………………………──はい?

 店長のその言葉にこの場の空気は静寂に包まれる。

 お花見といえば、大抵は桜を連想する。でも、今は4月の終りで、この時期の花見となると、言ってはなんだが桜でするお花見よりは見劣りした感じになってしまいかねない。

 正直、それでは英気を養えるか───いや、店長のことだから、もしかすると十分に英気を養える凄いスポットを知っているのかもしれない。

 ただ、それでもテンションの上がりは緩やかだ。

「あれ? もしかして、みんなはそんな嬉しくない?」

「まあ、お花見と言われてもな……。花畑の花とか眺めながらの宴会も悪くはないが、こう盛り上がりに欠ける気がするんだが……」

 副店長の意見にアタシも賛成。やはり、愛でる花によっては宴会が合う合わないが有るとアタシは思う。

 先程のお花見をすると発表した店長のテンションからして、宴会を行なうことは想像にかたくない。

「あれ、『お花見』する花は『桜』だよ。言わなかった?」

「今、聞いた。まさかと思うが、遠出するのか? それとも芝桜のことか?」

「だ・か・ら、桜だよ、正真正銘の『さくら』。それに遠出もしないよ」

「おい、音恋、自分が何を言ってるのか解かってるのか? ここ清美市の桜は何処も彼処もとっくに葉桜だぞ?」

「──まだ、あるじゃない!」

「おいおい、まさか────」

「────イエース、そのまさか、『永遠桜とわざくら』でお花見よ♪」

 ──『永遠桜』?


  1:知ったかぶる。

 →2:素直に質問する。


 ふふ~ん。アタシも1ヶ月前よりは気後れしなくなったのだ。なので、

「あの、『永遠桜』ってなんですか?」

「あー、そういえば、きびちゃんたちは『永遠桜』のことは知らないよね?」

「はい」

「わたしも『悠久なる四季テンプスデアエテルニタス』の一つだってことしか……」

「俺はいま初めて『永遠桜』ってのがあるって聞きました」

「そう。なら、説明するね。『永遠桜』は、いま少年が言った通り、都市伝説の『悠久なる四季』のうちの一つで春のスポットよ。そして、真偽は定かじゃないけど、『永遠桜』は花が常に咲き誇っているんだって」

「なるほど……」

 店長の説明に表面上は感嘆するも、内心は懐疑的。だって、常に花が咲き誇っているとか、有り得ない。

「へぇ~、それが本当なら神秘な奇跡ですね♪」

 どうやら、彼(?)の感想はアタシと違って、実に純粋だ。

 なんか、彼(?)の純粋さが眩しい。これが若さか。二十歳を過ぎている──それだけじゃないけど……──アタシには直視は難しいが……………………羨ましいな。

「──で、音恋、『永遠桜』でお花見するっていっても、お前『永遠桜』へ通じる『道』への入り口がある場所は知ってるのか?」

「もちろんよ! そうでなかったら、『永遠桜』でお花見なんて言い出さないよ」

「そりゃそうだな。なら、『永遠桜』に辿り着く為に必要なモノがあることは──?」

「知ってるよ。“『Pass』”でしょ? ちゃ~んと、借りてきてあるよ♪」

「よく貸してもらえたな……」

「まぁね。運良く伝手があったからね」

 店長の視線が一瞬、希ちゃんと叶ちゃんを捉える。

 そして、副店長も店長の視線に気付いて彼女たちを見ると、何やら合点がいったようで、

「……ああ、成る程ね。希ちゃんたちの友達の彼女か」

「そういうこと。

 て、なわけで、明日は全員でお花見よ♪」

 全員? 全員というのはこの場にいる全員のこと? それって、ペンギンや猫たちも含む?

「『そりゃ、猫女が全員と言ってるんだから含まれるんだろうよ。それに、みぃと猫達をわざわざミーティングの場に同席させている時点で解るだろ?』」

 うわ、ホントこのペンギンはデリカシーが無い。すぐにアタシの考えてることを読むとかマジでない。

 でも、ペンギンの言っていることは一理ある。

 店長は猫たちに惜しみない愛情を注いでいるのは周知の事実。ならば、ペンギンの言った通り、店長の「全員」発言はこの場に居合わせている全員で間違いない。

「は~い、それじゃミーティングはこれでおしまい。詩音くんは希と叶を家まで送っていってあげて」

「了解。それじゃ、車を表に回すから希ちゃんたちはお店の入口で待っててくれるかい?」

「はーい、お世話になります」

「はい、お世話になります」

 店長がミーティングの終了を告げると、各人各々に動きだす。

 さて、アタシも今日はお風呂の当番だし、さっさとやろう。



 ──ピピピッ。ピピピッ。……

 耳に心地よい目覚ましの電子音。

 朝の深呼吸代わりに、抱き枕の好い匂いを嗅ぐ。

 何時の間にやら悪癖になってしまい、直そうと思っても…………無理そう。

「『ハッ。端から夜這いを止める気がぇだろうが、小娘は!』」

 何を言うかなこのペンギンはッ!? そもそも、夜這いじゃないし。

 夜中に生理的現象で起きて、それを解消したあとに、寝惚けて部屋を“たまたま”間違えただけだし。

「『かー、スゲー無理のある屁理屈だな。素直に────』」

「────違うッ!!!!」

「『おワっ!? ……いきなり大声を出すんじゃねぇ!』」

 うう、うるさい! アンタが見当違いなことを言うからよっ!

「『へいへい、さいですか……。ところで、小娘、お前はいいのか?』」

 何が?

「『今日の花見の準備だ』」

 別にアタシはこれといって準備することはないかな。

「『そうか。そういや、アイツがさっき気合いを入れて今日の弁当を作るって言ってたな』」

 へぇ~。

 そういえば、最近になって彼(?)は料理を始めたのだ。

 もともと、彼(?)は下宿人だから、学業に集中できる時間は必要とのことで、それ故に、家事当番決めをした際に彼(?)は調理当番からは除外されていたっけ。

 それが、少し前からか彼(?)は料理に興味を持ち、店長や歌音ちゃんが調理当番のときにちょくちょく手伝いをしながら料理を教えてもらっている。

 なんで、アタシからは教わろうとしないんだろう?

「『そりゃ、小娘が────』」

 みなを言わなくても、わかってる! だって、アタシは、まだまだアタシ側からのみんなとの距離が縮められていない。

「『なら、今は欲張りを言ってる場合じゃないと、オレ様は愚考するがな!』」

 ふん、そんなのアタシ自身が一番わかってるわよ!

 ……それでも、────それでも、アタシにも一言くらい「料理を教えてほしい」って言葉をかけてほしかったな……。

 あー、なんかモヤモヤする!

 このモヤモヤを解消するには、モヤモヤの原因たる抱き枕に甘んじていてくれる彼(?)を『ぎゅっ。』っと、する他ない。


 ──ぎゅっ(スカ)。


 アレ? ……おかしい。

 アタシの腕の中には彼(?)の寝間着の上着だけがあって、肝心の中身である彼(?)がいない!?

 どうして?────いや、待てアタシ。冷静に状況を整理しろ。確かさっきペンギンが言ってたハズ。「そういや、アイツがさっき気合いを入れて今日の弁当を作るって言ってたな」って。

 これって、つまり、その時には既に彼(?)は起きていたということ。

 はぁー。ペンギンとのやりとりに集中し過ぎて、すぐ隣で起きていた事に全く気付かないとか、自身の集中力の無駄なハイスペックさに厭きれる。

「『己の優れた部分をそう卑下するものではないぞ』」

 そうは言っても、人間の大多数は物事のプラスの面よりもマイナスの面を気にするものなの。

「『つくづく思うが、ヒトとは難儀な存在モノだな……。それと、もうアイツは部屋にいないのだから、言葉は口に出して云え』」

 別にいいじゃん。最初は「キモッ」って思ったけど、慣れればコッチのが楽だし。

「『まったく、内面にとどめている性格を外に出せばいいものを……──』」

 ……アタシだって、別に元から今のような対人対応が苦手だったワケじゃないし────────



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