表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこの手、貸します。  作者: 白月 仄
えぴろーぐ(に)→ぷろろーぐ
1/22

ろくのいち


 ──ゆるりと流れる春風に

   ゆらりゆらりと

   ゆり揺れて

   踊り舞う花びらは

   櫻華絢爛 春爛漫


   淡き桃色に 花染めて

   春の訪れ 報示す


   旅立ちの別れ

   歩み出したその先で

   新たな出会いに

   めぐり合う


   ゆるりと流れる春風に

   ゆらりゆらりと

   ゆり揺れて

   踊り舞う花びらは

   桜花絢爛

   春爛漫────





 ────紡がれた旋律は不思議と心に染みて、身体が内側からポカポカしてくるような気がする。


 暦の上では間もなく夏に入る今日この頃。

 桜で花見をする時期は疾うに過ぎているというのに、眼前にある巨大な桜の樹はいまだに淡い桃色の花を満開にしていた。

 ただ、不思議なことにその桜の樹の下には、咲き誇っている数多の花に匹敵するくらいの桜の花弁が絨毯を広げていた。

「ホント不思議、永遠桜とわざくらって────」

「そうだよね。まるで夢現つの中にいるみたいだよね~」

「ああ、ソレ、なんとなくだけどわかります。なんだか現実離れしてますよね、この場所は……」

「うんうん、……────」

 わたしの零した呟きが発端となり、この場に居合わせている女性陣は会話を再開して、奏でられた旋律の余韻に浸っていた場の雰囲気をあっという間ににぎやかなものへと変えていった。

「少年、どうだった我が妹の歌声は?

 素晴らしかっただろう?」

「えーっと、……はい、心が洗われる様で耳に心地好かったです」

「そうだろう、そうだろう。オレの自慢の妹だからな!」

「『ほうぅ、お前にも歌のねぇちゃんの唄の良さがわかったか!?』」

「ちょっと、バカにしすぎだよ、ソレ?!」

「『そうか? お前はまだまだガキなんだから、妥当な評価だとオレ様は思うがな』」

「……あのねっ! 鳥のクセして生意気!」

 わたしはおちょくってきたその鳥に「怒っているぞ!」というポーズをするも、

「『フッ、お前まだまだだな。そんな見え透いたポーズに鳥の中で最もぷりちーなオレ様が騙されるとでも思ったか!』」

 なんだか、一部訳の分からない言い分でいなされてしまった。


 ──しかし、思えば此処『清美きよみ市』にやってきたあの日、わたしは此処で過ごしていく日々がこんなにも予想していた以上に楽くて素晴らしいものになるだなんて思いもよりませんでした───────





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ