バレンタインのお返しは意味も込めてマカロンを
いつものバカップルがただイチャイチャしている作品です。
「初めての手作りチョコレート」の続きとなります。
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現在、公園の真ん中にあるベンチで2人が声を高らかに上げて談笑している。1人はロマンチックに考えるのが大好きな文学少女である詩乃、そしてもう1人は物事を全般に理屈で考えることが多い理系男子である颯真である。この2人は真反対に見えるが、実は高校生時代から付き合う誰もが認める仲良しカップルもといバカップルなのだ。
「詩乃、今年もバレンタインチョコありがとう。お返し受け取ってくれるか?」
「勿論、ありがとう。じゃあ今開けるね」
今日はホワイトデーであり、このやり取りもいつもの恒例のやり取りであるのだが、彼女の反応はいつもと少しだけ異なった。
「え? もしかして、これ手作りなの?」
「うん、詩乃が手作りでチョコを作ってくれたから、僕も作ったんだ」
「凄い!! それも作るのが難しいマカロンを難なく綺麗に作るなんて……。でも、私はあんなに苦労したのに、少し悔しい」
「いや、問題そこ!?」
彼女は高校生時代は彼にいつも有名なチョコをバレンタインチョコとして渡していたが、大学生になったので今年は手作りチョコを渡したいと、四苦八苦して手作りチョコを渡したのである。因みに渡したチョコは、彼の好物である蜂蜜とさつま芋を隠し味として入れた彼特製だ。
そんな特別なチョコを貰った彼は、とても嬉しかったので、こちらも特別なものにしたいと思い、いつもは彼女の好物であるマシュマロを贈っていたが、今回はバレンタインのお返しの意味である"特別な存在"も込めてマカロンという形で渡すことになったのだった。
「それにしても作るの大変だったんじゃないの?」
「確かに普段の料理よりは少し大変だったかな。お菓子作りは料理と違ってキチンと量らないと出来ないらしいからいつもよりも慎重になったし」
「そうだろうね。でも、あんまり失敗作はしてないじゃないの?」
「あぁ、失敗は1回もしていないな」
「料理だけでなくお菓子作りも完璧に出来るの〜。もういっそのこと数学科じゃなくて、化学科に行って研究してきたら? 絶対実験上手いと思うけどな〜」
「いや、俺は数学をこよなく愛しているから化学科には興味ない」
「こよなくって……少し傷つくなー」
「そんなことで傷つくなよ。俺は詩乃のこと、このなく愛しているんだから」
「う〜ん、アウト……なんて嘘。私も颯真のこと愛してる!!」
なんとも見ていて甘くてこっちが溶けてしまいそうなやり取りであるが、この2人は日常茶飯事であり、それをこの地域の人達はみんな知っている町の公認カップルである。そのため何の問題もなく、寧ろ現在2人の周りにいる人達は、ニヤニヤと見守っている人もいれば、またかと暖かい目で見ている人もいて、不快な目で見ている人は誰一人いないのだ。
まあ、一応本人達は過激なスキンシップことはとっていないものの、ハグをしたり、頬にキスをしたりと誰もが見ても仲良しっぷりは見せつけられているのだが……まあそれもここではご一興である。
「あれ…… このマカロン、ピンクと茶色だけ? 颯真ならもっとカラフルにしそうだから少し意外かも」
「あ、それは妹に教えてもらったんだよ。どうやら色によって少し意味が違うみたいで……敢えて絞って作ったんだ」
「確かにそれは聞いたことあるわ。えっと何が何だったか忘れたけど……」
「ピンクは初恋とか永遠の愛とかっていう意味があって、茶色は安心や思い遣りって意味があるらしくてな……だからその……」
「ありがとう……私も同じ気持ちだから本当に嬉しい。そこまで考えてくれて……」
「……なら良かった」
先程はバカップルぶりを見せつけたが、未だに付き合いたての初々しさを醸し出してくるのがこの2人。彼はしっかりと想いが伝わったことに心の底から安堵し、彼女はその想いにこれ以上のない喜びを感じていた。
「じゃあ折角だから今食べるね。いただきます」
「レシピ通りに作っているから不味くはないと思うけど……」
「うん、美味しい。とても優しくて、でも颯真の愛が詰まっているのを感じた。それにしても、本当にきめ細かいよね。ムラもないし、形も本当に綺麗だし、それに砂糖も入れ過ぎていないし……」
「おいおいマカロンだけじゃなくて、その笑顔を俺にも見せてよ〜」
「え……今それだけニヤニヤしているってこと? 恥ずかしいから見ないでよ〜」
「いや、駄目だ。俺が作ったマカロンでニヤけているんだから、俺には見る権利がある」
「何よ理屈……このシチュで顎クイは卑怯だよ……乙女としてときめいちゃうじゃないの」
「うん、可愛い」
「もう〜。いつもはこんなことしないくせに!!」
「いつも詩乃が積極的だから、今日は俺が積極的になろうかなって」
「嬉しいけど……やっぱり不思議。ホワイトデーの魔法でもかかったのかしら?」
「うん、そうみたいだな」
またしても2人の世界観に入ってしまったが、今傾いている太陽も2人の幸せを照らして優しく見守っていることだろうから、私達も一緒にこのままそっと見守ることにした方が良さそうだ。
不思議だと ホワイトデーの せいにして
笑顔満開は 日常茶飯事
(by いつも2人を見守っている人達の心の短歌)
お前達、ホワイトデーじゃなくてもイチャイチャしているだろうが!!