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第2話



アレグリアの【最期の言葉】には箝口令が敷かれた。

誰一人として、好んで口にしようなどとは思わないだろう。


【私に冤罪をかけた者、それに同調した者に加担した者。協力者にその家族や一族。私の家族を皆殺しにした者、見殺しにした者に同意した者たちよ。永久(とわ)に呪われるがいい。

それが罪なき我らの生命を奪った代償だ】


その言葉を聞いて真っ先にアレグリアの亡き骸(なきがら)に謝罪したのは…………王妃だった。


「ごめんなさい! ごめんなさい! ドレインが選んだのは、あ、あ、あなたではなく伯爵家の養女(むすめ)だったの! 王太子妃に相応しいあなたを()()()()()()からおろすには、貶めるためには冤罪しか方法がなかったの!」


泣き崩れて我を忘れた王妃の口から紡がれ続ける謝罪という名の責任転嫁に国王が表情を硬くする。

無実の令嬢をたったいま()()()のだ。

前日には3時間かけて一族の老若男女を公開処刑にした。

それも貴族の誇りを奪い、ギロチンではなく縛り首という方法で。

遺体は一晩広場に晒して国民に石を投げさせた。

いまは顔などが損壊された状態で北にある牢獄【罪過(ざいか)の塔】の壁に吊り下げられて風に吹かれている。

昨夜の冷たい夜露に濡れて、その顔には霜が降りているだろう。


ドレイン王太子は、肩を抱いていた新たな婚約者と身を寄せ合って震えている。

その婚約者であるマジョルカは……


「私は悪くないわ。……ドレインと私は結ばれる運命だったのよ。……私の居場所を奪っていたアレグリアが悪いのよ。……私は何も……私のせいじゃない」


壊れたように同じ言葉を繰り返していた。

いや、王妃の謝罪もアレグリアのせいにしていることから、誰ひとりとして悔いてなどいない。

アレグリアの遺した「呪われるがいい」から逃れるための自己正当化…………責任転嫁でしかない。


同じように、アレグリアの声を聞いた当主たちもまた、我が子の愚行に恨みつらみを口にしていた。

つい数分前まではその愚行を「一族の栄光」と誇っていたというのに。


このような状況で箝口令が敷かれたとしても、呪いを受けた可能性のある当主たちを追い詰めるだけだ。

()()()()()()()()当主たちは冷静に判断するとともに、この国の短い平穏に何をすべきか。

沈みはじめた泥舟からいつ、どうやって脱出するかを算段していた。


…………アレグリアの言葉通りなら、お前らも同罪だという事実に気づいてはいなかった。


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