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第1話

両腕を掴まれて引き摺り出されたアレグリアは、王族および貴族当主たちの前で跪かされる。

滔々とアレグリアの()()を告げる宰相の声。

アレグリアだけではない。

ここにいる誰もが……いや、国王以外はそれが冤罪だとわかっている。

しかし、それを訴えたところですでに取り返しのつかないところまで事態は悪化していた。


唯一、アレグリアを信じて無罪を主張していたフォンデン侯爵家は、この時点ですでに処刑されている。

両親だけでなく、アレグリアの兄弟姉妹だけでなく、両親の親族も縁座という形で公開処刑(みなごろし)にされたのだ。


主犯は、壇上に立つ王太子および王太子の婚約者。

それに協力したのが王妃。

そして王妃と王太子、未来の王太子妃推しの一派。


一介の貴族が敵う相手ではない。


そして今…………最後の()()となるアレグリアの処刑が行われようとしている。


「苦しんでのたうち回って死ぬがいい」


王太子のその言葉から、貴族の前で毒杯をもって死を賜ることとなった。

アレグリアがこの場に引き出される前に、()()()()()()()は「アレグリアに真実を告げた」という。

…………フォンデン侯爵家一族の処刑を。


そのせいだろうか。

宰相から「何か申し開きはあるか」と聞かれても、アレグリアは(かぶり)を左右に往復させたのみだった。

小さく「何を今更」と呟いた声を、両側から腕を押さえていた2人の王宮騎士は聞いたとのちに語っている。


「では毒杯を」


国王の言葉に、ビロードの布をかけられたトレーがアレグリアの前に運ばれる。

押さえられていた両腕が解放されたアレグリアは両の手でゴブレットを掲げて微笑み……何かを呟いて毒杯を呷った。


その声が届いたのは王家や、高位貴族。

そして子息令嬢が『真実の愛』で結ばれた王太子と新たな婚約者のために働いた功績を賜ったばかりの当主数名だ。

この忌まわしい処刑が……その祝宴の締めくくり。

亡骸にワインをかけ、唾を吐いて口々に侮辱しながら足蹴にする。


その行為を許されて誇らしげだった表情は今、ドス黒く恐怖で強張っていた。

誰も…………動こうとはしない。

否、指一本も動かせなかった。


アレグリアは苦しさをまるで耐えるかのように蹲って背中を丸めたまま……静かに事切れていた。


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