Ⅸ.カイルの告白
エレナは屋敷の自室のベッドの上にいた。
ベッドの脇にはカイルがいて、エレナの左腕に包帯を巻いているところだった。
「まったく、こんな時に簡単に鳥の姿になるなよな、王家にバレたらどうすんだよ。ヨウ殿下にでも見られたら王様に報告されるぞ。」
「わ、分かってるわよ。お父様にもお母様にも怒られて反省してるわ。本当よ。」
そう、小鳥の姿でヨウがいるオアシス公園へ飛んでいる途中、何者かにエレナは撃たれてしまったのだ。
ヨウに小鳥の姿を思いっきり見られたが、さすがにそれの元の姿が人だとは思われなかったようだ。
しかし傷を負って屋敷の敷地内の庭で変身を解き、侍女に見つかってからは怒涛の流れだった。すぐさま医者のカイルが呼ばれ、到着するまで父と母に経緯を説明し、これまでの人生の中で一番といっていいほど怒られた。父は犯人を探すため、捜索チームを編成した。しかし事を荒立てると犯人が島から逃げる可能性もあるため、銃撃事件は伏せられたまま、水面下で調べるようだ。
「でもヨウ様はたぶん、私のことを知っても王様に報告はしないわ、きっと。」
「なにを言ってる?療養といいながら、エレナやセント家の動向を探ってるんだろう。」
「違うわ!まぁ、本当はそうなのかもだけど。王家の動向も教えてくれたもの。ヨウ様は私とイーサン殿下の再婚約の話に呆れてるご様子だったわ。」
「ずいぶんと庇うんだな、王弟殿下のこと。」
エレナはそう言われて、自分の顔が赤くなるのを感じた。
それを見てカイルは複雑そうな顔をした。
「…俺と結婚したらいいんじゃないかな。」
気づけばそう口にしていた。カイルはハッとしたが、もういいやと言わんばかりに告白を続けた。
「俺も鳥になれる。黒だけどな。どうせなら変身できる血を持った者同士が結婚する方がいいんじゃないか?王家にも、薄くなった血を再び盛り上げるための結婚だとでも言えば黙るんじゃないか?」
「カイル…そう言えば私が王宮に行く前は、そんな話も出てたわね。」
「そう、俺がどっかの貴族の養子になって、釣り合うようにするとかな。今でも本気出せばツテはあるよ。」
「ごめんなさい」
エレナは、断った。
「…カイルのことは、本当に幼馴染としか見れないの。それに私は…私…」
その続きを聞きたくなくて、カイルは被せて言った。
「包帯巻き終わったぞ!いいんだ、告白しといてアレだが、それ以上は言わないでくれ。じゃあ、またな。」
カイルはそう言って部屋を出て行った。
エレナは今起きたことに身体の熱が上がったように感じた。幼馴染な想いに応えられない申し訳なさと、自分の恋心にはっきり気づいて胸がドキドキしていた。




