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ⅩⅩⅡ.ヨウは王に告げる

ヨウは船を降り、馬車に乗り換えて揺られながら王都を目指し、その間エレナのことを想っていた。フィーリアへ3人で帰ってきた時、領主夫妻、友人やセント家に仕える者たち皆んなが涙を流してエレナの無事を喜んだ。

しかしエレナは小屋の中に薬物が充満していた影響で、すぐに治療を受け休むことになった。幸い薬の作用は睡眠だけで、身体や精神に作用する類いのものではなかった。そしてヨウはエレナが休んでいる間に、大きな仕事を片付けようと王都に向かったのだ。

「そういえばエレナ嬢の話によれば、サルファでスーザン嬢に会ったそうですね。しかも災害の混乱の中いつの間にか姿を消したとか。」

「あぁ、狡猾な女だ。しかしこれを機にもっと我が国も城の警備を見直さなければ。他国のスパイを簡単に招き入れるようでは駄目だ。」


そしてヨウは王都に着くと、災害の名残で電気の復旧や飛ばされた屋根の修理に、街も城内もみんな忙しそうに彼方此方で作業している光景を見た。

ーー無事なのはフィーリアだけのようだな。

城に着いて部屋に案内され、休むことなくヨウは兄に謁見を申し込んだ。


「久しいなヨウ。こうやって直接会うのはお前がフィーリアに療養に行って以来だな。」

「兄上、今日はお願いがあって参りました。エレナ嬢とイーサンの結婚は諦めてください。」

「……」

王は意外にも反論してこなかった。ヨウは続けた。

「伝承をご存知でしょう。今回の災害はエレナ嬢の心が著しく傷つけられ、その身が危険に晒されたことが原因です。彼女はイーサンとの結婚など望んでいない。無理やり結婚させれば災害の発生を繰り返すだけだ。加護を得たければ大切に扱うべきです。」

王は唸りながら考え込み、しばらくして漸く言葉を返した。

「そうだな…私もあそこまでの嵐を経験するのは初めてだったが、愛し子の力は本物で恐ろしいと感じたのだ。手放すのは惜しいが、彼女の心がこちらに無いのなら仕方あるまい。」

王はついにエレナを諦めた。しかしフィーリアもラダエールの一部で、しかも海の向こうにある国からの侵略を防ぐ国防の要、最前線の島である。

フィーリア島が豊かで平和であることは、ラダエールにも有益。それ以上は望みすぎだということだ。


「ご理解いただきありがとうございます、兄上。では、私はフィーリアへ戻ります。」

「ん?まだ療養するのか?」

「いえ、私はこれから彼女に正式に婚約を申し込みに行くのです。では。」

「いやいや待て待て待て。誰に?彼女とは?」

「私はエレナ嬢と結婚します。彼女と一緒にフィーリア島から兄上の手助けを致しましょう。」

そう言ってヨウは王に背を向けて颯爽と帰って行った。

「なっなんだって!こらヨウ!しっかり話してからにしなさーーい!」

王の叫び声は虚しく謁見の間に響いた。


次で最終話です!

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