ⅩⅩⅠ.嵐のあと
カイルはサルファ王や兵士達を城の庭で足止めしていた。するとふいに空が明るく晴れてきた。
「おさまった…?」
「やったぞー!」
嵐が過ぎ去り、サルファの人々が喜んでいるところにエレナとヨウがカイルの元へ帰ってきた。
3人は人の姿に戻り、ヨウがサルファ王に告げる。
「今後2度とエレナとフィーリアに手を出すな。今回のことで分かったと思うが、彼女や島に何かあれば同じことが繰り返されるだけだ。まして彼女の生命を奪おうものなら災害は国を滅ぼすまで終わらない。」
サルファ王はへなへなと地面に膝を着いて脱力した。
「今回のことについてはラダエールの王より連絡があるだろうな。では、我々は失礼する。」
3人は光を放って鳥の姿になり、すっかり晴れ渡った鮮やかな空へ飛び去っていった。
その頃フィーリアでは、ジェームズとトーマスおよび護衛の兵士たちが島の洞窟にある祠を確認しにきていた。しかし洞窟は形は保っていたものの、祠周辺は酷く崩れ落ちており、その中で大きな岩の下敷きになった男を発見。近くに落ちていた銃から、後にその男がエレナを撃ち、誘拐を実行したサルファの人間だと判明した。
数日後、エレナは自室のベットの上で休んでいた。エレナが閉じ込められていたサルファの小屋の中には薬が撒かれており、それを吸い込んでしまったため暫く療養が必要と判断されたのだ。
扉がトントンと鳴った。
「エレナ、少しいいかしら?サラさんがお見舞いに来てくれたんだけど」
母の優しい声にエレナはすぐ返事をした。
「嬉しいわ、私も会いたい!」
そしてすぐ扉は開かれ、サラが母ソフィアと一緒に入ってきた。
「エレナ!良かったわ、顔色も良さそうね!」
「サラ、戻ってきてから碌にお礼もできてなくてごめんなさい。あなたが気付いてくれなければ、私はどうなってたか分からないわ。本当にありがとう。」
「いいのよ、いいの!本当に無事で良かった。」
サラは目に涙を溜めて、安心したように笑った。
母は部屋から出て、2人だけで少し談笑していた。
「ねぇ、でも王弟殿下ってヒーローみたいね!エレナのピンチに変身するなんて」
ドキッとした。サラにはいろいろ話していたが、ちゃんとヨウのことが好きだと言ったことはない。
「そっそうね…私…ヨウ様が助けに来てくれた時、本当に嬉しかった。でも…」
そこで現実を思い出す。
ーー私はイーサン殿下と結婚させられる。サルファから逃げても結末は同じなのよね…
「ねぇ、言っとくけど、貴方がヨウ殿下を好きなの前から知ってたわよ。」
「エッ?」
エレナは思わずマヌケな声が出てしまった。
「それに安心して。あなたのことは、今ヨウ殿下が王都に行って王様と話し合ってるはずよ。」
そうだ、ヨウはエレナをフィーリアに送り届けてからすぐに王都に出発していた。飛んで行った方が早いのだが、トーマスや護衛も一緒に連れて行くため人の姿で船と馬車に乗って大人しく向かったという。
「人に頼ってばっかりね、私は…」
「いーんじゃねーの。頼って。」
突然男の声で返事を返されてエレナはびっくりして扉を見た。扉は片方開いていて、そこにカイルが立っていた。
「なんか開いてたぞ。入っていいか?」
「あら、カイルも来たのね!」
「よぉ、サラ。」
エレナはまともにカイルと話をするのはあの告白の時以来だったため、少し気まずさを感じた。しかしカイルはいつも通りだった。
「無事で良かったな。顔色もいいな。食事はとれてるか?睡眠は?」
「大丈夫よ、食事も睡眠も問題ないわ。薬が身体から早く抜けるように飲まされる薬湯は苦いけれどね。」
3人はその後も他愛もない話をして時間を過ごした。




