ⅩⅨ.ヨウは追いつく
ヨウが飛び立った後、皆しばらく呆気にとられていたが、ようやくトーマスが言葉を発した。
「そうか、皆様もご存知かと思いますが、ヨウ様のお母様はフィーリア出身なのです。もしかしたらその血を引いて…」
それにジェームズが答える。
「なるほど、平民だとお聞きしていたが、島は狭い。長い歴史の中でどんどん枝分かれして平民の中にも聖獣の血が受け継がれていてもおかしくはない。」
「それにしても大きすぎでは…」
ソフィアが首を傾げていると、サラが一言。
「先祖帰り…」
ジェームズが大きく頷いた。
「大いに有り得る。直系ではないから漆黒だが、限りなく聖獣の時代の濃い血が発現したのかもしれん。」
そうして皆はカイルとヨウが飛んで行った方向の空を心配そうに眺めた。
サラは心の中で祈った。
ーー王弟殿下…どうかエレナを助けてください…
その頃ヨウはひたすらサルファに向かって飛んでいた。空も暗く太陽が見えないため方角なんて分からないはずだったが、不思議とどちらに進めばいいか自然と理解できる。しばらく飛ぶと、前方にカイルの姿が見えた。加速して追いつき、話そうと思ったが言葉は出てこず、鳥の鳴き声になってしまった。
『俺も一緒に行く』
『まさかっあんたまで鳥になれたのか!』
『ついさっき知ったんだがな』
側からは鳥が鳴きあってるようにしか聞こえないが、鳥の姿同士なら会話が出来るようだ。
カイルは内心、自分より大きく逞しいヨウの姿に嫉妬した。
そうしているうちに遠くにサルファの陸が見えてきた。真っ黒な雲が頭上にかかり、とんでもない数の雷と竜巻が2人の距離からも見えた。
『エレナ!』
あの中にエレナがいると思うとゾッとした。2人は急いで陸地へ向かった。




