ⅩⅧ.ヨウの想い
「空から行くって、どういうことだ?」
ヨウが問いかけると同時にカイルは変身をはじめた。
強い光が部屋中に放たれたと思った次の瞬間、カイルは大きな漆黒の鳥になっていた。
ヨウとトーマスは驚いたが、他のみんなは知っていた。
「なんてことだ…エレナだけではなかったのか…」
ヨウは同じ時代で同世代の若者2人が鳥の姿になれることに驚きを隠せなかった。
「ヨウ様、こんなこと王が知ったら…」
「やめろ、頭が痛くなる。情報が多すぎる…」
ヨウは眉間を指でつまんで溜め息をついた。だが今はそんなことよりエレナの救出が先だ。
「カイル君、1人で行くのは危険だ。空からでも、エレナの居場所まではっきり分からないだろう。」
「俺はエレナを助けるためなら命なんて惜しくない!」
その強い言葉にみんなシン…と静かになった。
ただ1人、ヨウはその言葉にひどく動揺した。エレナを大切に想う男が目の前にいることに焦りを感じたのだ。しかもその男は鳥になって彼女を助けに行こうとする、まるでヒーローのようだ。
ヨウは何もできないただの人間である自分を呪いたくなった。
そしてカイルはついに外へ出て、黒い雲に覆われた空へ飛んで行ってしまった。
「ヨウ様…」
トーマスが気遣わしげにこちらを見たが、ヨウの眼は空をまっすぐ見て、拳を強くにぎりしめていた。
脳裏に浮かぶのはエレナの笑顔。王宮の庭で少し気疲れしている表情のエレナ。2人で楽しく絵を描いた時のエレナ。島で久しぶりに再会した時の美しく成長したエレナ。オアシスの森で怪我をした小鳥姿のエレナ。コンクールで2人で語り合った時のエレナ。全ての思い出が一度に押し寄せて、彼女を想う気持ちが溢れた時、ヨウは窓から外へ飛び出し、庭でその身体が光りはじめた。
「なっ、これは、殿下!」
カイルの変身の時より一段と明るい光を放ったあと、ヨウの姿は一際大きい漆黒の鳥に変わっていた。
周りいる全員が驚いたが、ヨウ自身が一番驚いていた。そしてこれでエレナを助けに行ける!そう思って迷うことなく黒い空をサルファの方向へ飛び立った。




