ⅩⅦ.守り石の力
フィーリア島中心部の洞窟の中に大きな祠がある。
そこに祀られている両手いっぱいの大きさの美しいグリーンダイヤモンドが強く光を放った。その光は島中に広がり、セント家の屋敷にももちろん届いた。
今セント家の屋敷には、エレナの救出すべく、父ジェームズ、母ソフィア、ヨウ、トーマス、そしてサラが揃っていた。
「この光は⁈」
トーマスが驚いて声を上げた。ジェームズが応える。
「おそらくこれは…島の守り石だ。エレナに何かあったのかもしれん!」
「あぁエレナっ」
動揺するソフィアをサラが宥める。
「大丈夫よおばさま。エレナの加護目的なら、悪いようにはしないはず。」
ヨウが光について聞く。
「私も伝承を聞いたことがあるが、島と愛し子を守るためのものだろう?光が放たれたということは、これから災害が起きるのだろうか。」
「その通りです。島は安全です。しかし周辺国に被害が及ぶでしょう。そしておそらく今は無事でもエレナの身に危険が迫っているのは確かだ。早く助けなければ…」
「俺が行く!」
その時カイルが屋敷に入ってきて声を上げた。
「カイル君…」
「ごめんおじさん、ここ最近島の中が騒がしかったから護衛に何が起きてるのか無理やり聞いた。俺ならすぐにエレナを取り返せる!」
あまりの自信に、ヨウがカイルに言った。
「船で行くのは危険だ。サルファの領海はこちら側とは違う。奴らは不思議な薬で国を守っているんだ。今ラダエールから応援の軍隊と船が派遣されるからそれを待って…」
「海じゃない。空から行くんだ。」
「なに…?」
※※※
その時エレナを攫わせた後もなおフィーリアに潜伏していたデイビットも守り石の輝きを見て、中心部に財宝があると確信していた。そして彼は祠に辿り着き、美しいグリーンダイヤモンドの原石を見つけた。
「ようやくお目にかかれたな。これで俺もようやく国に帰れる。」
彼がそう言いながらダイヤモンドに触れた瞬間、フィーリア島が激しく揺れた。
ゴゴゴゴ…とまるで怪物が地面の下にいるかのような地鳴りが聞こえる。洞窟の天井から大きな石次々落ちてきて崩れそうだ。
「なっ、くそ!原石だけでもっ」
欲をかいたデイビットは何とか原石を持ち出そうとして逃げ遅れた。天井から大きな岩が彼めがけて落ちていった。
時を同じくしてサルファでは突然の豪雨と雷、竜巻が同時に発生していた。王宮は大パニックに陥っていた。
「これはっ⁈」
「きゃーー‼︎」
凄まじい強風と雨で城が揺れている。使用人たちは城内のあちこちで悲鳴をあげている。
サルファ王は自室の窓から外を見て恐怖を感じていた。愛し子がいればその加護により国が豊かになる。そしてフィーリアには宝石がある。そういう都合のいい伝承の一部だけをみていた愚かな王である。
「なぜだっ!こんなはずではっ…クソ‼︎」
王は壁をガンと殴りつけたあと、事態を収めるべく部屋を出て行った。
一方ラダエールでも、いまだかつてない雷雨と暴風に王や城内の人々は何事かと外を見る。その時王宮の一番高い塔の上に雷が落ちる。
「キャー‼︎」
こちらでも城の至る所で悲鳴が聞こえている。
ウィリアム王は昔聞いた伝承を思い出した。
聖獣の愛し子になにかあると、島を中心に周辺国が滅びると。ウィリアムはサルファに連れ去られたエレナに何かあったのだと悟ると同時に、その大いなる力に初めて恐れを感じた。そしてエレナを息子と結婚させ王族に迎え入れても、加護による繁栄ではなく、この脅威が発生する可能性もあるのだと、初めて気づいたのだった。




