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ⅩⅥ.サルファは加護を求める

気がついたら外は真っ暗だった。

窓は開いていて、入ってくる空気のにおいで、どうやらフィーリアではない場所に連れて来られたと感じた。

部屋はとても綺麗で、おそらくどこかの貴族の屋敷だろうと思った。まだ頭がぼんやりするが、起きた出来事を整理しようと必死に脳を働かしていると、部屋の扉が開いた。

「あら、起きたんですね。」

そう言った侍女の格好をした女を見てエレナは驚いた。

「スーザンさん…?」

「ふふ、ここはサルファよ。私はこの国の人間。ラダエールの坊ちゃん王子は可愛かったけどね。狙いは最初からアナタ。」

「えっ、何が…どういう…?」

「察しが悪いわね。あなたをサルファへ招くためにラダエールの王族との婚約を潰したのよ。その方が連れてきやすいでしょ?結局強行手段になっちゃったけどね。」

ご丁寧に説明を受けてエレナは状況を理解した。しかしここまで詳しく教えてくれたと言うことは、もう自分はフィーリア島へ帰れないかもしれないとも感じた。

「起きたなら陛下へ報告するわ。早速準備して会いに行きましょう。」

されるがままエレナは身支度をし、サルファの王と対面した。



サルファの王は陰険な顔付きで顔色は悪かった。それだけでサルファがどんな国か想像できてしまう。

「ようやく目を覚ましたか。なに、悪いようにはしないさ。あなたの返答次第ではな。」

サルファ王の話は要するに、息子の側姫としてエレナを迎えるというものだった。どこの国も望むものは同じ。エレナの加護を得たいのだ。

「私にはあなた方が望む力はございません。」

「しらばっくれるつもりか?鳥に変わる様を目撃した者がいるのだ。まぁそやつは今、フィーリアに眠るもう一つの財宝を探しているがな。」

「なんですって?」

フィーリア島にはグリーンダイヤモンドの原石がある。島の中心部にある祠に祀っているのだ。それはかつて島を救った聖獣が、もう2度と島が襲われることのないよう卵の形で産み落とした守り石。島や愛し子に危険が迫った時、それらを守るため災厄が各地に起こるとされているものだ。


「確かに私は姿を変えられる。でもそれだけです。本当に何の力もないのです。フィーリア島の豊かさは父や島民の努力の結果。私の力などと思うのも烏滸がましいですわ。」


「ふん、つまりサルファが貧しいのは我のせいだと?ずいぶんと生意気な娘だ。離れに連れて行け。食事は死なぬ程度でよい。」


サルファ王はエレナが国にさえいれば加護の力が働くだろうと考え、死なない程度に監禁することにした。

ーーラダエール国が動く可能性があるが、表向きには息子に自ら嫁入り志願してきたと言えばいい。証拠は作ればいいしな。


サルファは貧しい代わりに様々な薬物を作り出すことに精を出している国でもあった。

ラダエールやフィーリアからエレナを助けに人が来たとしても、エレナに薬を盛って操るつもりだった。


「バカな娘だ。」



エレナは薄暗い牢屋に入れられ、鎖で足を繋がれた。

薬品の匂いがする。

ーーそうよ、この国は薬をつかうのに長けているわ。私もいつまで正気でいられるかしら…

ふとヨウの顔が頭に浮かぶ。

「ヨウさまっ…」


エレナは静かに涙を流した。


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