Ⅺ.2人は再会する
エレナが銃撃された事件から季節が一つ進み、空気はすっかり冷え込み雪が降る日もでてきた。
ヨウはウィリアム王と連絡を取り合っていたが、例のエレナを王宮に連れて行くという件については、ちょうどエレナが怪我を負ってしまったため、完治してから手配しますと返事していた。
セント家からヨウには、銃撃事件のことは報告されたが、鳥の姿の時に撃たれた事は伝えられなかった。ヨウは、エレナが王家と繋がりがある人物と知った誰かによる政治絡みの事件だと考えていた。
しかしあれから事件の調査はなかなか進んでいない。
そのうちエレナの怪我も治ってきたため、王から再び催促の手紙が来ていた。
そんな状況に疲れていたヨウは、気分転換にフィーリア島の美術学院で開かれている学生絵画コンクールを見学しようと思い立った。
「エレナ嬢も参加しているはずだ。どんな絵を描いたのか、見てみるのも悪くない。」
島に来てから挨拶をしたっきり、直接会うことの無かったエレナ。怪我の見舞いに花は送ったが、婚約者でもない自分が見舞いに行くことは何となく憚られた。
だが心配していた。幼い頃のエレナの記憶が蘇る。
王宮の庭でいつも寂しそうな表情をしていた。
「島に帰りたいんです。王妃になんてちっともなりたくないの。」
「そうか、ならば絵でも描いてみるか?少しなら僕でも教えてあげられるよ。」
そう言って2人で庭に迷い込んでくる小動物をスケッチした時間は、ヨウにとっても心休まるものだった。
そして美術学院のコンクールにやってきたヨウは、エレナの絵を探した。
コンクールと言うより、展示会のような雰囲気だ。広いホールに並べられた学生の絵を見て、見学者は最後に評価をするシステムで、その評価順に賞を貰うことができるのだ。
ヨウが会場入りすると、周りの見学者が一瞬ざわついたが、基本的に身分の差があるため、不躾にヨウに話しかける者はいなかった。
そしてとある絵の前で足が止まる。
海に陽が沈むよくある構図の絵だが、表現の仕方が素晴らしい。夕陽の光を反射する海は、まるで宝石が散りばめられたかのようだ。
「素晴らしい。」
そう呟いたところ、背後から返事があった。
「あ、ありがとうございます…」
パッと振り返ると、そこにはその絵画の作者である、エレナ・セントが立っていた。
「っと驚いたな、もう怪我はいいのかな?」
「はい。あの、お見舞いのお花、ありがとうございました。すみません、思わず声をかけてしまって…」
「いや、いいんだよ。ちょうど話したいと思っていた。どうだ?時間はあるかい?」
「はい!」
そうして2人は学院の庭に移動して、2人のために急いで設置されたテーブルとイスでティータイムを過ごした。
ヨウもエレナも絵について大いに語り合った。
そしてかつて王宮で過ごした日々についても思い出して笑い合った。それは誰が見ても仲睦まじい様子だった。そんな時間を過ごす中で、ヨウは自分の気持ちに気づいていった。
ーーこんなに居心地がいい時間は久しぶりだ。俺はやっぱり、この子と過ごすこの空気感がとても好きだ。
誰かを大切に想う気持ちに、ヨウは自然と優しい笑顔になっていた。




