表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

前編

 ☆王宮


 王宮の式典で、王太子が、婚約者ではない令嬢をエスコートし、ピンクブロンドの婚約者、聖女を指さし宣言をしようとしている。

 皆は、婚約破棄を予想し、正に、その通りだった。


 この国の王妃は、聖女が指名されるのが慣習である。


 王子は、隣に、侯爵令嬢を脇にそえ。宣言する。



「聖女サリーよ。お前はこの国の聖女でありながら、炊き出しもせずに、ヒラヒラな服を着て、商会経営と称して、遊び暮らしている。

 とても、この国の未来の王妃に相応しくない。

 よって、婚約破棄をする!そして、侯爵令嬢イメルダを婚約者に指名する!イメルダは、貴様と違って、各国に慈愛の令嬢と名が通っているぞ!」


 ・・・フフフフ、俺はこの国の王太子、ルドルゴ、聖女と婚約をするのが我国のならいであるが、孤児出身のくせに、炊き出しもせずに遊び暮らしているサリーと婚約破棄をして、幼馴染みのイメルダと婚約して、愛のある国を目指すぜ!


 対する聖女は、

「分ったのだからね!家に帰るのだからね!」


 と言って、会場を後にしようとするが、


 ・・・あっさりしているが、そうはいかない。お前は聖女だ。一生、俺の書類仕事だけはさせてやる。


「待て、衛兵よ。捕らえろ。命令だ!罰として、文書業務だけはさせてやる!」


「ウゲー、嫌なのだからね!」


 その時、一人のアラフォーが現われた。首の周りに肉が付き。司教服にジャラジャラと宝石をまとっている。

 彼は、病気の陛下の弟にして、王都女神教会の司教シイナル司教だ。


 ドスドスと前に出て、仲裁をする。


「待ちなさい。聖女は、女神教会の管轄だ。我が教会で預かろう」


「ヒィ、嫌なのだからね。スーパーダーリンはいらないのだからね!」


「困ります。こいつは、文書業務だけは出来るのです」


 なら、と女神教会の業務と、王太子の文書業務、両方をする羽目になった。


 結局、サリーの身柄は、王都女神教会、預かりだ。


 

☆王都女神教会


「嫌なのだからね。出身の孤児院で働くのだからね!」


「まあ、見なさい。サリーさん。炊き出しに集まる人達を・・・ちょうど、教会前に炊き出し民があつまっておる」


 ワイワイワイ、ガヤガヤ


「あ~、炊き出し民でも、たまにはステーキを食べたい!」

「旅行にも行きたいわ!」

「この国は、外国人に冷たいデース」


 ・・・・


「サリー、この王都には、ステーキも食べられずに、旅行にいけなくて困っている人々がいます」


「え、ステーキも食べられずに・・・困っている人達がいるの?馬鹿なの?」


「サリー、君は聖女なのに、女神教典を忘れたのか?女神様の前では、皆、平等だ。だから、炊き出しをしているのだよ」


「そ、そんな。平等なの?じゃあ、あの人達は・・・」


「そうだよ。女神教会税でやる炊き出しでは不十分だ。王家の炊き出しもだ」


 サリーは膝をついた。


「本当は、平等なのに、不当な扱いをされている人達が、こんなに沢山いる・・」


「分ってくれたね」


「はい!サリー頑張るのだからね!」


 ☆


 ガヤガヤガヤガヤ~~~


「はい、炊き出しだからね!」


「少ねえよ!」

「もっと、良いものを食べたいわ」

「外国人にも手厚くしろデース」


 ・・・フフフフ、何やら、サリーは転生者、異世界の知識を利用して、聖女の分際で、商会をやっているようだが、その財を炊き出しで使わせて、私の影響力を上げてやる。


「さあ、まずは、炊き出しを配るところから、始めなさい」

「はい!」


 サリーは、大人しく炊き出しを始めた。


 ・・・フフフフフ、これでいいか。あのピンク頭、神妙ではないか。

 どれ、私は羽を伸ばそうか。


 司教シイナルは、海外の女神教会に出かけた。視察という名の旅行だ。



 ☆一方、王太子殿下たちは、


「いいか。伯父上に炊き出しで負けてはいけない。王都市民の人気を得るのだ。増税案を作れ」

「そうよ。私は慈愛の王太子妃として、この国を愛のある国にするんだから!」


「ヒィ、もう、増税は出来ませんよ」


「だまらっしゃい。それをするのが、役人の仕事でしょう?」

「イメルダの言う通りだ。税金が余ったら、少しだけ返せばいいではないか?

 私たちは外遊する!各国の主要な孤児院にお金を配って、良い気持ちになるから、資金を用意しておけ!」


 かくして、王太子とイメルダは、外遊に出かけた。



☆数ヶ月後


 シイナル司教は、外遊先から、聖王国に緊急に呼び出された。


 ・・・ほう。炊き出しと寄付が認められて、大司教に任じられるのか?


 とほくそ笑むが、待ち構えていたのは聖騎士だ。


「拘束!しろ」

「ヒィ、何故じゃ。一国の司教を、許されませんぞ」

「黙れ!邪教審判を受けろ!」


 シイナルは拘束をされ、会議室に連行された。


 ・・・


 法王は開口一番、

「シイナル司教よ。禁教、民主主義を説いているのではないか?」


 とたずねた。


「そんな間違いです。そんな教え説いてませんよ!」


「フ、なら、これを見ろ。貴国の王都の惨状だ」


 魔道映写機で上映されたものは、サリーが映っていた。


 ☆


 場所は王都女神教会前広場、夕方、大勢の炊き出し民が集まっている。


 サリーは民衆を前にして、壇上に上がっている。

 手をカクカクシカジカと動かしながら、演説をしている光景が映し出された。


『あえて、言おう!貴様らは【カス】であると!ステーキを食べられない者は、コロッケーを食べればいい。旅行に行けないものは、散歩をすればいいと他人は言うかもしれない。しか~~~し』


 民衆から、どよめきが生じる。


 ザワザワザワザワ


 サリーはためて、腕を腰で組み。踵を返して、壇上を練り歩く。


 ザワザワザワザワ


 また、クルッと回って、右手で拳を高く上げ


『だが、私は、約束する!貧民もステーキを食べて、旅行に行ける国を約束する!女神教会シイナル司教の元、5年で、平等な国を目指す!貧民も貴族の服を着られて、外国人に暖かい国を目指す!留学生は国の宝だ!』


『『『サァリー!サァリー!サリー!サリー!』』』


 ・・・・


「ヒィ、こんな教えを説いてません。私は、人気取りのために、炊き出しをしろと命令しただけです」


「本当に、そうかぁ?」


「ええ、ばらまき王子に対抗して、私は人気を得たいだけです!」


「ふ~ん。外国人を受け入れたのは?」


「それは、知り合いの商会にもうけさせるためです!技能講習といいながら、安く使いたいだけです!そして、商会に献金をしてもらいます。そのためには、不良外国人が善良な市民に迷惑を掛けてもどうでもいいです」


「理にかなっているが、クソだのう」


 数時間後


 シイナル司教は解放され、一人で、自国に戻るように、命令された。現状を何とかしろとの事だ。


☆王都


 ・・・何だ。王都の・・貧民が少ない。いつもは並んでいる賭博魔道店の前の列がない。

 それに、何だ。ピンク色の腕章をつけて歩いている者がいる。


 足並みを揃えて、軍隊か?


「「「!護国!繁栄!豊穣!発展!平等!勤労!」」」

「おい!そこの者!何故、ブタを連れ歩いている!」


「ヒィ、悪気はありません!」


 ・・・何だ。何故、ブタを荷車に乗せて運んでいる者を咎めているのか?


「・・・何だ。今日、王都に来られたのか、シイナル司教がブタと似ているからと、馬鹿にしている訳ではないな。行って良し」

「気を付けられたし、いくら、ブタと似ているからって、ブタと言われたら、シイナル司教殿は気分を害されるかもしれない」


「許可書を出そう。見えるところにはっておくのだ。シイナル司教の肖像画はあそこにある。確認しろ。決して、ブタと似ていると言ってはいけないぞ」


「はい、畏まりました。はあ、確かにブタにそっくりだ!」


 ピンクの腕章をつけた者が指さす先には、大きな肖像画がはられていた。


 シイナル司教の肖像画だ。


 ・・・ヒィ、まるで、馬鹿にしているみたいじゃないか?

 サリーめ。どうしてくれようか。


 シイナルは、教会まで急いだ。


最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ