人のセックスを笑え
またか。これで何人目?
十七歳にして、食事した程度の男まで数えると両手の指じゃ無理。いつもいつも男は通り過ぎる。わたしに留まってくれない。
「今から仲間と飲むから。また連絡するよ」
鈴木はカサ・ブランカって洒落た名前のアパートの狭い部屋で、カッコつけて煙草を吹かしていた。
「おまえから連絡してくるなよ」と牽制する。
つまり、わたしたちの関係はおしまいって事だ。事後の余韻もへったくれもあったものじゃない。
恋はだいたい三ヶ月で終わる。なぜか分からない。
お悩み相談したチヒロには「相手が鈴木だの、山田だの、佐藤だの、ポピュラーな苗字ばっかり」と笑われた。
人のセックスを笑うな、って小説なかったっけ? そう叫びたい気分。
セックスまで至らないけどね。ちんちん入らなくて。下手な相手を選別しちゃってるのか、きつマンなのか、、、。
それは親友のチヒロにも言えない秘密。でも結局、破局の原因はそれか?
あーあ。男って、ビッチ好きだよね。
ネットなんかだと処女が崇められてるけど、実際は処女なんて面倒くさがられる。フェラもできないし、だいたいマグロになりがちだし。
わたしなんてキスから我慢してる。正直、口腔内をまさぐり唾液を交換とか吐き気をもよおす。他人はよくできるなあ。
自分が不甲斐なくて、片っ端から男と付き合って試していたら、表の顔はヤリマンで裏の顔は処女って二面性を持った。
アメリカにはアセックスって言葉があるらしいね。セックスしないカップルがいるんだって。
自由でいいなあ。アメリカへ行こうかなあ。英検四級の実力で? ははは。
「何、笑ってるんだい?」
ベッドで山田、いや鈴木が興味なさそうに訊いた。
「話しても分からないでしょ」
「何だよ」と怒ったふりをして、佐藤は、いや鈴木はわたしにデコピンした。
鈴木とは喧嘩にならない。おでこをさすり、わたしは半泣きになった。
「じゃあね」
勝負下着を着けて、一張羅のワンピを頭から突っ込む。七畳半の部屋を出て、さようなら。
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