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23.もう追加が来たのかよ

 人間という生き物はつくづく業が深い。そう表現するとなんだか賢そうに聞えるが、オレはかなり呆れて足元の様子を眺めた。片づけを終えた草原から帰城して僅か3日で、また人間が大量に攻め寄せたと報告があったのだ。それも先日の銀ドラゴンが自ら飛んできた。


 彼女は雌で、どうやらオレはお眼鏡に適ったらしい。番相手にして欲しいと申し入れをしたという。成人した当人であるオレではなく、リリィに――なぜオレを飛び越した。思うところはあるものの、リリィがオレの保護者であるのも否定できなかった。何しろ、オレの身元引受人はこの世界にいないからな。


「エイシェット、悪いが乗せてってくれ」


 彼女の長い鼻先を撫でてお願いすると、嬉しそうに身を低くする。献身的で強く美しい女性……種族の違いだけ目をつぶれば優良物件だった。番う時は人の姿を真似るというし、いっそお嫁さんでもいいかも知れない。


「僕達も向かうよ」


「ちゃんと待ってろよ」


 勝手に動くなと言い置いて、双子は先に駆けて行った。フェンリルである黒狼の足は速い。だが障害物のない空を一直線に飛ぶドラゴンには敵わなかった。先に到着したオレが敵と交戦してたら、後まで拗ねて騒ぐだろうな。


「わかった」


 誰かが襲われてなければ、別に睨みあいも悪くないか。エイシェットの背に飛び乗り、獣人達が鞣した動物革のベルトを握る。馬みたいな扱いで女性に失礼じゃないか? と尋ねたら、なぜか真っ赤になって照れたあと「いいの」と許してもらった。


 オレが接した女性はリリィとイヴ、どちらも偏った性格をしていてよくわからん。その前に王女と名乗る少女とも交流はあったが、いいとこ妹感覚だった。エイシェットのように積極的に「好きです」とアピールする女性は初めてなので、ちょっと困惑している。


 なお前世ではモテず、彼女いない歴と年齢がイコールだったのでその辺は語りたくないな。


 ぐるるるっ、覚えた魔獣の言葉で合図を送るとエイシェットが浮かび上がる。ちょっとしたニュアンスで意味が変わるので、この唸り声での会話は難しい。覚えてしまえば、逆に日本語以上の便利さがあった。


 召喚特典がなく、この世界の人間の言葉は理解できなかった。苦労して覚えたが英語に近い。英語の授業がまあまあ得意だったのが幸いしたけど……あれだ。細かい機微を伝える単語がなく、いろいろな意味を内包する単語が大量にあった。さすがに、トイレ行くのと勃起が同じ単語なのは問題あると思う。まあトイレで出すという意味において、オレの中では共通だったけど……くそ、どうせ彼女出来なかったさ。


 日本語に関して理解できる者もいなかったので、様々な単語を一から覚えた。あの苦労も今となっては懐かしい思い出である。敵と会話する必要はないけど、悪口言われたら理解してやり返したいし。何より直接文句言えるのは利点だ。


 リリィも当初はオレに合わせて人間の言語を使ってくれたが、今は流暢な魔族の共通語で話す。魔王が使っていた言語で、人型の魔族はほとんどが使う言語だ。魔獣は意味は理解してくれるけど、彼らの喉の機能で上手に発音できないらしい。唸り声で返してくるので、魔族の大半は魔獣の唸り声の会話も習得していた。


 くぁああ! 着いたよ。そんな意味で鳴いたエイシェットの首筋を撫でて、草原の上を旋回する。先日綺麗に掃除したばかりの草原を踏み荒らす害虫を見下ろし、溜め息をついた。直接の復讐対象ではないので、さして楽しくもない。


「巨神兵がいたら、焼き払えって命じるだけで済むのに」

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