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何も無い世界で

見渡せば何も無い世界。

正確に言えば、砂地が広がる平原と6畳くらいの掘っ立て小屋以外は何も無い世界だ。

 

やぁ、皆!見てる?

ハゲデブ親父の変質者に声を掛けられたかと思ったら、本当は金髪イケメンの異世界管理者で強制的に破滅しそうな世界を救うべく移転させられたよ!

上手く世界を救えたら願いを一つ叶えてくれるんだってさ!

意味わからないから変わってくれる人募集!

下の概要欄から電話してね〜☆

 

って若干、思考がナレーションっぽくなるのも仕方がないよね?

さっきまで居たファミリーレストランから、指パッチンだけで移転された私はただただ立ち尽くすしかなかった。

右を見ても左を見ても何もない!

あるのはホコリにまみれた掘っ立て小屋のみ。

えっ、これを今からどうしろと?

はじめに小屋の中を覗いてみたが、ホコリが積もっている以外は何も無い。

ベットとか、テーブルとか、普通あるだろうと言う物もない。

何も無い!!

何度でも言う、何も無い!!

 

地面に大の字に寝転がって空を見上げると青い空とギラギラとした太陽が降り注ぐ。

正直、暑い。

仕方ないから小屋に戻る。

中に入ると、一歩踏むたびにホコリが舞うので吸わないように袖を当てつつ、左右の窓を開ける。

ホコリが、舞うが涼しい風が通り過ぎていく。

寝泊まりするにしても、ホコリだらけでは寝られないから、渋々ながら掃除をすることにした。

箒がないので、手でホコリを払っていく。

何という地道な作業か、、、。

段々、体が暑くなってきたので上着を脱いで横に置いた。

あちらの世界では、秋を過ぎた頃だったから厚着をしていたがこちらは夏に近い暑さだから動くたびに服を脱ぐ。

実家から服は持って来てたので、お金がなくて暖房器具を買えなくても、服を着込めば寒さはしのげたから。

上着の下に薄手のシャツを3枚、下はジーパンにスパッツを3枚。

我ながら着込んだなーと思っていたが、こうでもしないと隙間風が忍び込むアパートでは住んでいられない。

そうして気付けば、カップ付きキャミソールと膝までのスパッツスタイルになっていた。

恥じらいなんぞ、この暑さの前では気にしていられない。

見る人間もいないし。

 

汗を滴らせながら、手を動かす。

途中からは、手を使うより服を使って雑巾がけしたほうが要領良く出来る事に気付いて、勿体ないとは思いつつも後で洗えばいいやっと思って使った。

少し砂が残っている気がするが、なんとか綺麗になった部屋に大の字になって、寝そべって疲れを取りつつ現実逃避。

 

汗がびっしょり、喉が渇いた。

雑巾代わりにしたシャツも洗わないといけない。

 

窓から風が入ってきて、火照った体を冷やしてくれる。

あー、涼しいなぁ、、、。

 

、、、喉が渇いたなぁ。 

うん、水、無いね、、、。

 

あっ、積んだなこれ。

 

急な異世界移転と久しぶりの雑巾がけに命の生命線である水の無い現実に、体力も気力も失った私はそのまま意識を手放した。

つまり、寝た。

 

 

 

 

ザァーザァーという音で目が覚めた。

それが雨だと気付くと一目散に外に出ると、口を開けて雨を飲み込み渇いた喉を潤した。

汚れた手や顔を洗い流し、思う存分、雨を堪能したあと部屋にある雑巾シャツを取りに戻り、部屋を拭く。

おかげで部屋の中は綺麗になり、ついでに体も綺麗になった。

濡れた服は絞って床に広げる。

じっと窓の外を眺めながら、この雨をどうにか溜められないか考える。

かなりの量、降ってはいるが溜まらなければ次の雨が降るまで飲むことも出来ない。

しかし、水を溜める容器はないし、、、。

 

よし、穴を掘ろう!

深く掘れば水も溜まるだろうし、この際、衛生面とか考えても仕方がないしね!

お腹を壊せば壊れた時に考えよう!

れっつ、穴掘り☆

 

穴を掘る場所は小屋の横。

乾いてるときはかなり硬かったから、爪を犠牲にする覚悟で地面を引っ掻く。

 

あ、雨のお陰が土が柔らかい。

なんか、粘土みたい!

 

掘れば掘るほど簡単に土がすくえる事に調子に乗って両手で、雨にも負けずどんどん掘り進んでいった。

地面なんだし、考えればすぐに分かるだろうに、童心に返って掘りまくったのが駄目だったのだろう、ガリッという音と激痛で我に返った。

 

「いったぁぁ!!!」

 

見ると、やはり右手の中指の爪が少し剥げている。

雨で泥を洗い流して見ると、じんわりと血が浮かぶ。

涙目で指をしゃぶりながら原因を探ると、ねじれた木が埋まっていた。

無事な左手で、ゆっくりその周りを掘っていくと、ねじれた木でできたカゴが現れた。

昔、親戚のおじさんが入院した時にお見舞いと称して果物を入れてリボンを付けて持って行った時のあのカゴである。

何故カゴが土の中に埋まっているのかという疑問が湧くが、今はカゴにかまっている暇はない。

右手は負傷したから、左手だけで穴を掘らねばならなくなったから、急がないと時間がかかってしまう。

腹立ち紛れにカゴを入り口まで放り投げると、作業を進めた。

今度は慎重にゆっくりと。

 

片手で掘り進んで小1メートルは掘っただろうか、またもや硬い何かに当たった。

それの周りをほじくって取り出すと、小皿くらいの石だった。

雨が当たり泥が流れて、所々緑色が見えたので擦って泥を落とすと、平べったい翡翠が現れた。

 

うぉぉ!!お宝ゲット!!

って、あっても今の状況じゃ宝の持ち腐れなんだけどね、、、。

 

やれやれと溜め息をついた途端に、お腹からきゅるるっと音がした。

 

そう言えば、昨日の昼にご飯を食べてから今まで食べてなかったもんなー。

口に入れた物と言えば水だけ、、、。

 

やはり、来るんじゃなかったと後悔するが、強制的に行かねばならなくなった時点で意味がなかったのだと肩を落す。

とりあえず、お腹がいっぱいになるまで雨を飲み込むと疲労がたまる体を引きずって小屋に戻った。

雨で綺麗になったカゴを片手に。

 

小屋に戻って、乾いてるシャツに着替えると壁に寄りかかり目を瞑った。

こういう時は早めに寝るに限る。

今までも一日や二日、ご飯が食べれない時は寝て過ごしていた。

 

大丈夫だ。

明日になればきっと。

今までもどうにかなっていたんだし。

あぁ、それにしてもお腹空いた。

 

「ハンバーガー食べたい。サンドイッチや、フライドチキン。ジョイフルのチョコレートパフェ、こんな事になるならもう一つ頼めばよかった。」

 

すんすんと、鼻を鳴らしながら想像を膨らましていく、肉汁たっぷりのパテにシャキシャキのレタスとトマト。

特製ソースとマヨネーズを間に挟んでかぶりつけば素敵なハーモニーが口いっぱいに溢れ出して、匂いまで感じるくらいに。

 

「えっ!匂い?」

 

ついに妄想が現実に?っと目を覚まして匂いの元を辿ると、木のカゴいっぱいにハンバーガーやフライドチキン、ガラスの容器に入ったチョコレートパフェが入っていた。

急いで近付き、震える手でハンバーガーを掴む。

ゴクリと喉を鳴らし、思いっきりかぶりつけば、妄想ではなく、現実に口の中いっぱいに味を感じた。

あとは、いわずもなが涙を流しながらカゴに入っていた食べ物を食べ尽くした。

お陰様で満腹になったのだが、一気に食べてしまった事に後悔が押し寄せてきた。

 

あぁ、、、。

あまりの空腹に全部食べてしまうなんて、私とした事が、、、。

それにしても、何で急にこのカゴから食べ物が出てきたんだろう?

 

じっとカゴを見つめて、確信を込めて呟いてみた。

 

「ポテトとコーラが飲みたい。、、、おぉ!!」

 

呟いてすぐにカゴから、湯気の立つ出来たてのポテトと、コップに入った氷入りの水泡がパチパチ激しいコーラが現れた。

感動しながら二つを手に取り、また呟く。

 

「ゴディバのチョコレート、、、おおおおお!!!!!」

 

そこにはゴディバのラベルがついた箱が鎮座していた。

モリナガや、メイジに比べ値段が高い高級品のチョコレートが今ここに!!!

感動しすぎてチョコの箱を掲げて小躍りする。

 

良かった、神は私を見捨てなかった!!

これで食料問題は解決だー!!

ごめんね、八つ当たりして!

これから大事にするからね〜!!

 

その夜はカゴを大事に抱えて眠りについた。

朝起きて無くなってたら困るから。

 


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