第十話 勢揃い
新作を投稿しました。
「ソフィリア・ルーンベル ー戦場育ちの人造少女は魔法使いとなって、世界に踏み出したー」で検索して頂くか、もしくは作者から飛んで頂ければ幸いです。
俺たちが無機物ルートを突破した先で合流したのは数百人のプレイヤーだった。
ここが最後の休憩ポイントらしく、千人以上のプレイヤーが入れるサイズの空間が広がっている。
「お疲れ様、あなた達が最後だったわね」
「ただいま、お姉ちゃん」
「うむ、数日振りだな」
姉御を見つけたアウラとトモエが駆け寄っていき、抱き着いて再会を喜ぶ。
俺らが最後ということは全員揃ったようだ。
「――姉御がいるってことは表組とここで合流か」
「ええ、ここが今来れる最上部。あの先がイベントのクライマックスになる舞台と繋がるそうよ」
俺とトモエが到着して、『オーバーセンス』のメンバーが揃った。その事実に内から込み上げてくるものがある。
まあ、そんな素振りを見せたら嬉々として冷やかしてくるから見せないがな。
「――ん? で、姉御以外は?」
出迎えたのは姉御だけで、周囲を見渡しても男共の姿は見えない。
「あの子達が大人しくしてると思うかしら」
「あっそ、お外で小鳥と戯れてるわけね」
まだ夜も浅い時間だ。ポイント稼ぎを兼ねてアンズーと遊んでるか。とはいえ外は暗くなり始めているはずだ、そのうち集まってくるだろう。
俺が他のメンバーの居場所に納得していると通知音がした。
アウラに後ろから無防備に体を押し付けられながら確かめると、公式からのイベント告知である。要約すると、
『六日目の昼にアンズーの精霊界と繋がるから撃退しろ』とのこと。
テントの並ぶ休憩所の奥には意味深に開いた穴がある。そこから何が出てくるのか、ゲーム脳ならすぐわかる。
「シラユキって精霊だったのか」
「わふ」
精霊と呼ばれたシラユキが姿を見せて自慢げに胸を張っている。
ファンタジーな原住民によくある精霊信仰なんだろうが、信仰の対象がこれか……。
「カオル君が何を思ってるのか分かるけど、これくらいの関係性が共存には良いと思うわよ。ほら、奈良の鹿もこんな感じでしょ」
「姉御、あいつらは結構凶暴らしいですよ」
「あらそうなの?」
「そうそう、あいつら鹿せんべい持ってると群がってくるし、手に持ってる袋とかを噛むんすよ」
俺らが奈良の鹿談義をしていると、ジョンが顔を出した。その後ろにはドレイクとグレンもいる。
グレンが不機嫌そうな顔をしている。やはり撃墜スコアはドレイクが一番か。
「いやー、これでオーバーセンス勢揃いっすね」
場所を移して、俺たちのテントもなぜか中心近くに設置させられた。ヒメコやアーサー、大五郎の所のテントもあり、随分にぎやかな場所に半ば強制で連れてこられた。
「不参加組が半数近くいるがな。それと初日にお前が死ななかったらすぐに揃ってただろ」
「先輩が俺をPKしたんでしょ!? あとどうせグレンも単独行動取ってたんでしょ」
殺した側がいうことじゃない。
ジョンの魂からの叫びだが、それは誰にも届かない。
「あれはしゃあねえわ。漁夫は悪即斬に決まってんだろ」
「ギャングビーストとかリーダーも結構漁夫に来たりするっすよね」
「言わねえと分からねえか?」
「聞きたくないっす」
真実を知りたくないジョンは両耳を塞いでいやいやする。いい年した大人の男がしただけで可愛さの欠片もねえ。
それと残念ながらPTチャットは音声のように聞こえるが、実際は頭に直接響く。両耳を塞いで聞こえなくなるのはオープンチャットだけだ。
「おまえのキャラだ、諦めろ」
「オレはオチ要員っすか。ひどいくないですか!?」
「オチにジョンを爆破すればいいんじゃなね? みたいなところあるよな、どこのクランも」
俺たちが騒いでいると大五郎もやってきた。やつの言うとおり、ジョンの扱いは他所のクランでもそんなもんだ。ある意味愛されてるからこその扱いなのだ。
頭を抱えて叫んでいるジョンも本心では喜んでいるだろう。トモエが呆れた表情をしているからそのはずだ。
仲の良いフレンドたちとわいわい騒いでいたら、このイベントではまだ顔を合わせてなかったクランがやって来た。
「Hack君、久しぶりー」
「白百合のお姉さん方もお久しぶりで」
二十代くらいの若いお姉さん方は白百合の園という女性クランだ。そのプレイスタイルはアーサーのKoRのような攻略をメインのクランとは違い、どちらかというと大五郎のDGに近い。
もちろん酒飲みという意味ではなく、この世界を楽しむ方向性としてだ。ファッションであったり、料理であったり、もちろん酒だって飲む。女性らしくこの世界を旅するのが白百合の園というクランだ。
「Hack君もすっかり大人になっちゃったわね」
「ようやくカガリさんに追いつけそうですよ」
「あら、うまく女性を褒められるようなったじゃない。こんないい男になるならクランリーダーになる前に、うちに入れちゃえばよかったわ」
俺の「あなたは年を取ってませんね」という言外の誉め言葉はちゃんと届いたらしい。上機嫌になったカガリさんは俺に抱き着こうとするが、トモエがギロリと睨んで途中で動きを止めた。
「トモエちゃんもいるじゃない。ずっとオンラインになってなかったのに――」
「別のアバターを使ってたんですよ」
「もー、それなら教えてよね。それよりこっちにいらっしゃい。彼とうまくいってるのかお話しましょう」
トモエはそのままお姉さん方に連れていかれた。最初は距離を取ろうとしていたトモエは、お姉さん方の一人に一言二言囁かれたと思ったら自分から進んであちらの輪に突っ込んでいった。
「こいつらは変わらないな」
「ご主人は変わったのか?」
アウラはにやにやしながら俺の隣で含みのある呟きをする。
「――なら仕方ねえわ」
四年前の続きの風景を見ながら俺は笑って答えた。
残り二話でストック切れとなります。しばらく新作の方を更新するのでこちらは止まると思います。
本当に申し訳ありません。




