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第五話 呉越同舟

(/・ω・)/ブクマと評価が増えてるー。せんきゅー

 シラユキは背後のロゼに警戒してか。指示を出す前に『神隠し』を使って逃げてしまった。


 つまり今は俺とロゼの二人っきりになったわけだが、


「先に進まないの?」

「ちょいまち」


 俺は入った横道の壁に描かれた壁画ってやつをじっくり調査していた。


 壁画に描かれているのは多くの動物と人間が共存している姿。俺の連れてるシラユキより大きそうなオオカミ、大五郎と一緒だったクマの絵もある。


「ただの背景なんか眺めてないで早く。お姉様を待たせるつもり?」

「こういうのも攻略のヒントになるんだよ――っと、ほら見ろ」


 徐々にその平和な世界も崩れだす。


 切っ掛けはコインか? それが登場してから人間達の人相が悪くなり、動物達の姿は怪物へと変貌していく。これが怪物島の由来か。


 さらに先に進むと獅子の頭部にワシの手足をしたアンズーらしい絵が登場した。その上には巨大な鳥の姿……も、こっちは獅子顔じゃないな。


「人間同士が争う姿? 人間らしい姿」

「創作に無粋な事を言うなよ。戦いの原因はコイン、俺たちの集めてるトレジャーみたいだ」


 アンズーは人間に使役されて、他の集落からトレジャーを強奪している。今までの絵とは打って変わって随分悲惨な光景になった。


 つるつるに磨かれた壁を手で触れる――冷たい感触と一緒に警告のような思念を感じる。


 どうやらこれはただの背景ではなく、プレイヤーへの警告らしい。となると、この山の主はあの巨大な鳥なわけか。


 それにしても動物達が怪物に変貌した原因はなんだ? コインだとしても、ここまででシラユキに変化は何もない。もしかしたら人間の方に原因があるのか?


 壁画は最終的にアンズーを使役する集団が生き残り、その人間達もアンズー達に裏切られて滅んだようだ。


 なんとも後味の悪い壁画の終点、そこは行き止まりと朽ちた宝箱があった。


「あれを見たあとにトレジャーか」

「拾わないの?」

「拾うさ。さすがにトレジャーを集めさせといて、それが罠でした。なんてオチを開発もしないだろ」


 中には金貨が箱一杯に詰まっており、トレジャーは全てロゼに回収させた。


 そこで俺は背後からかさかさと動く気配に気づいた。てっきり情報とトレジャーだけのボーナスルートかと思ったが、そうではなかった。


 カマキリ、アリ、ダンゴムシ、クモ, etc.


 穴という穴から虫が退路を塞ぐようにわらわらと湧いてき、ここがモンスターハウスだと気づいた時には二〇を超える人間サイズの巨大虫がこちらに迫ってきていた。


「へい、ロゼ――『スモグレ』」


 わざわざショートカット用のインベントリではなく、ロゼに指示を出してみる。素直に従うのか試してみたかったからだった。


「――ん」


 物臭そうにしながらもロゼが煙幕玉を渡す傍ら、アクセを一つ外してマナ視ゴーグルに変更する。こいつは暗視ゴーグルのような物で、これで煙の中でもマナを持つモンスターの姿がわかる。


 俺は虫の群れに煙幕玉を投げ込む。


 虫の大きさは元のサイズの何十倍、それだけの大きさがあると呼吸器官に煙の粒子が詰まったりしないか。


「素直に指示を聞いてくれんだなっ!」


 煙の中で混乱している三匹のケイブマンティスをまとめて切り裂く。洞窟カマキリとは分かりやすい名前だ。


「お姉様との外出がかかってる」


 ロゼは不愛想に答える。アウラと同じく後ろにいるだけだが、びくびくしてた彼女と違ってロゼは傲岸不遜な態度である。


「なるへそ、ならついでに戦闘も参加するか?」

「それは無理、体液が少しでもかかったらお姉様が悲しむ」


 やっぱりアウラが最優先か。アリスには心を開いている様子だったから、人間かビジターかで区別しているようだな。


「そうですか――、『クイックチェンジ』」


 長物の斬馬刀は振り回しにくい。代わりにメイスを取り出し、


「はいっ、ボールを相手にシュゥゥゥーッ!」


 ゴルフクラブのようにミスリルのメイスをフルスウィングする。


 金属の塊が丸まって転がるダンゴムシに直撃し、硬そうな甲殻にベキッと音と共にヒビが入る。そのままゴルフボールとなって他のモンスターを巻き込んで吹き飛んでいった。


 激突した洞窟の壁は泥交じりの水しぶきを辺りにまき散らし、崩れた壁がモンスターを飲み込んでいく。


 これで包囲は崩れた、


「『ショックウェーブ』――ロゼ、先にいけ!」

「ん」


 メイスの先端を地面に叩き込み、そこから扇状に不可視の衝撃波が広がっていく。モンスター達の足が衝撃で止まっている内に、包囲の空いた穴からロゼ――そして俺が続いて脱出した。


「このまま逃げても先に敵が居たらまずいんじゃない?」

「だな。目的のブツは手に入ったから、あの道は塞がせてもらう。インベントリの中に錬金術で作った粘着爆弾が入ってるだろ」

「あー、これか」


 現代的な手りゅう弾の形をしたスティッキーボム。何かにぶつかるとその衝撃で中から粘着性の糸が露出し、対象に付着するタイプの自作グレネードだ。


「貸せ、時間を調整して壁に投げる」


 グレネードのピンを外しスリーカウント、元の道に戻る同時に放り投げる。そこからさらにカウントを七つ数えたタイミングでそれは爆発した。


「ちっ、火力が足りなかったか」


 俺は走ってる間、頭の上に乗せたままだったゴーグルを握りしめて振り返る。天井から小石や粉じんが舞い落ちるが崩落するまでではない。


 だがあと一押し、あのヒビに衝撃を与えられれば崩れそうだ。


「……はあ」


 ロゼも足を止め、アウラが愛用するハンマーを取り出した。


「呉越同舟でも、どうしてワタシがこの男まで助けないといけないの」


 そう言ってハンマーを触手に持たせて、天井に向けて勢いよくぶつける。


 それにしても呉越同舟……ね。こいつは俺も嫌っていると思ってるらしい。


「それは勘違いだ、ロゼ。俺は別にお前を嫌ってないさ」


 俺が彼女の思い違いを指摘すると、ロゼはこちらを向いて呆けた顔を晒した。



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