第八話 悪運のコレリック戦 その2
やばい。
明らかにやばそうな攻撃が回避させるつもりのない速度で撃ち込まれる。
「ちっ、名前付きなだけあって一方的に殴らせてはくれんか。――『ランパート』」
アウラが俺の前に立って盾を構える。その直後、閃光が俺らの視界を塞いだ。
「――直感と魔眼ってそういうことかよ」
キュクロプスの魔眼から飛び出たのは赤いビームだ。その場から動けない代わりにノックバックを無効化するアーツを使い、その光線をアウラが受け止めている。
アウラのドレスアーマーの布部分がビームの余波ではためく。
ミスリルとドラゴンの素材で作った魔法攻撃にも高い耐性を持つはずのタワーシールドが、焼け爛れていく音がする。
攻撃までの予備動作に対して攻撃力がおかしい、おそらく一定条件を踏むと発動するカウンターだ。
俺はバフスキルを使っただけの非戦闘状態。直感持ちとはいえ周囲の敵を無視して、最優先に攻撃してくるのはおかしい。
「どうする、ご主人。今ので盾は使い物にならん。次にビームが飛んで来たら防げないのじゃ」
俺の放った弓のアーツもビームに飲まれて消えてしまった。これは完全に出鼻を挫かれたな。
「グレン達に一度合流する。競争以前に共闘しないときついわ」
こちらのカウンターも完全に無駄だったわけじゃなさそうだ。こっちに攻撃を誘発させたおかげで、向こうは棒立ちなボスに総攻撃を仕掛けたらしい。
またタンク陣が交代しながら攻撃を引き受ける膠着状態に戻ったらしい。
総攻撃でリソースを枯らしたグレンが戦いを傍観しながら、マナの回復に努めていた。
「お前らも初見の洗礼を受けたか」
すでに他のPTの後衛もアレを食らったようだ。偶然、近くに盾を持ったアウラが控えていたから命拾いしたが、そうでなかったら俺も溶かされていたかもしれん。
「条件は判明してるのか?」
グレンはどこからか入手したマナポーションらしき緑色の薬を飲みこんでいる。代わりに俺の質問に答えたのはドーラの姉御だった。
「おそらく一定距離からの脅威度が高い攻撃に反応にして――でしょうね。目を狙うと特に脅威度が跳ね上がるらしいわ」
ふむ……。パターンが決まっているなら、誘発させてパターンハメに持っていけそうだがそう簡単な話ではないないのだろう。
「ハメれそうか?」
「それを試した連中はここに残ってねえよ」
「全滅したわけか――」
アウラも思ってた通りの返答に驚きはない。ここの開発がそんな単純なAIにしているはずがなかった。
この場に残ってるPTの中に俺も知ってる顔がある。それはつまりグレンの勘の良さを知ってる連中であり、ハメ防止のペナルティから逃れたのはグレンの忠告を聞いたからであろう。
「キュクロプスの眼が赤い間に、カウンターを続けて発動させると凶暴化してビームを周囲にまき散らすようになるようだ」
俺が他PTと戦う巨人の顔を見ると、さっきまで金色だったはずの眼は確かに赤く染まっている。
どうやら俺の運は良かったらしい。タイミングが悪かったら全滅させていたな。
「定期的にビームを撃たせて、その間に総攻撃――か。これもうパターン入ってるよな」
「入ってるっちゃ入ってるが、物理耐性が高すぎてダメージが通りにくい。まだ何か攻略法が足りて無さそうだ」
「デッドエンドは?」
「はっ? LA狙いで温存するに決まってんだろ。切り札を使うにはまだ早えよ」
デッドエンドの弱点はその耐久性の低さにある。耐性、物理防御力を無視してダメージを与える代償が継戦能力の放棄なのだ。確か大剣の上位アーツを何発かぶっ放せば自動修復待ちに陥るはず。
そもそもの話、Numbersの中で耐久性に優れた装備はあったか?
今思えばどいつも浪漫を追求し過ぎて燃費が悪いか、耐久がなかったりする装備ばかりであった。
まあ、尖った性能の装備の話は置いておこう。
グレンはネームドモンスターのLAボーナスを狙って、ぎりぎりまで最大級の手札を控えるつもりだ。
こういうイベントでは戦闘のスコアは貢献度によって三種類に分けられて加算される。
アタッカーは単純に敵に与えたダメージの「戦闘スコア」、
回復やバフデバフをしたサポートの「支援スコア」、
最後に敵の攻撃を引き付けるタンクや危険にさらされた味方を守った場合の「防衛スコア」である。
そのスコア上位者と最後のトドメを決めたプレイヤー、さらに戦闘時に特別な貢献をした「MVP」がリザルトの報酬にボーナスが加算される。
このイベント限定のハンティングポイントもそれに対応してボーナスがもらえると予想している。
「このままやってもしょっぱいポイントしか貰え無さそうだな」
「わらわの分は基本、加算されんからな。何かしら弱点を探すしかなかろう」
「丁度いい難易度のゲームだ――ヌルゲーになるよりいいさ。『ビルドチェンジ』――空間戦仕様」
俺が何をやるつもりか察したアウラ達は仕方ないやつだ、と言いたげな表情をする。
グレンの方も満更ではないらしい、好戦的な笑みが隠しきれていない。
「私とアウラはサポートにまわるわ。好きに暴れてらっしゃい」
「悪いね、さあ、このひりつくような緊張感を楽しもうぜ」
俺はワンダーフェイスの剣先をキュプロクスに向けて啖呵を切った。




