第五話 道案内
ゲーム内時間で一日を明かし、無人島サバイバル二日目。昨日の宴会後は拠点の外の調査は行わず、クラフトの依頼を受けて素材を稼いだ。
今回のイベントは現実世界で二日、ゲーム内時間で六日で設定されている。おそらくはサバイバルの目玉となるイベントが五日から六日の間に起こるはずだ。
それまでは情報収集も兼ねて島を探索するしかない。
「さてどこに行くのかね」
リアルではまだ太陽が一度も下りておらず、しかしゲームでは一晩経過してる。それにわずかな違和感を感じずにはいられない朝の九時頃。
他のプレイヤー達と違って、ほぼ単独行動である俺らのメリットは遠征に必要となる物資が少なく済むことであろう。
身軽に動けるメリットを生かして、遠くのトレジャーを一足先に荒稼ぎしておきたいところだが……。
軽くこの島の地理を整理しよう。
島の南に位置するプレイヤー拠点。そこから北に向かえばアンズーの山が、東と西はそれぞれ草原と森が広がっておりその先は不明だ。おそらくは別の初期地点から開始したプレイヤーの拠点があるだけだろうがな。
ちなみにアンズーの山には昨日までなかった濃霧がかかっている。あれの中に飛び込むのは危険だと、長年のゲーマーとしての経験が警鐘を鳴らしている。
最後に島の北側、アンズーの巣を越えたあちら側の海岸にはサクラ達レジャー組がキャンプをしているらしい。そう休憩にリアルへ戻った時に妹から聞いた。
今後の方針を軽く頭の中でまとめていた俺にアウラが尋ねる。
「わらわ達はトレジャーとハンティング、どちらをメインに稼ぐつもりなのじゃ?」
「んー、今日は片方に偏らせず様子見だな。それと中間発表が出るまでは妨害を控える」
イベントが開始される前に俺のアバターは『オーバーセンス』に加入させ、俺の得点もクランに入るようにしてある。だからクランそのものの順位を落としてまで争うのはナンセンスだ。
他の連中も序盤はそう動くが、一位が確定したら好き勝手し始めるのがうちの恒例だ。
「なら風の吹くまま気の向くままか?」
「そこはこいつの鼻に頼るつもりだ」
俺はアウラが抱きかかえる狼の頭を撫でて答える。
「シラユキのか?」
シラユキとは昨日見つけたこいつの事だ、いつまでも子狼では呼びにくいからアウラが名付けることになった。なおロゼの機嫌が底まで落ちたのは本人のドス声を聞かなくてもわかる。
「プレイヤーに懐く動物達がイベントと無関係な訳が無い。――お宝を見つけるのに必要な案内人じゃないかって推理したんだがな……」
「ふむ、確かにこやつらがただの演出や公式のお遊びとは思えんな」
エッセンスとして扱うにはAIに使われてるリソースが高すぎる。それと動物を見つけたプレイヤーと少し情報交換したんだが、こいつらの鑑定結果が『種族名?(非覚醒)』と表示されるのがわかった。
この島の名前も踏まえて考えると、若干先行きが怪しいもんだ。
「できればこやつが怪物になる姿なんぞ、見たくはないのう……」
シラユリはなんの話かもわからず、首をかしげてアウラを見上げる。
とても凶暴性の欠片も感じられない、能天気な表情に俺とアウラは少しだけ笑ってしまう。
「怪物島がアンズーだけを指すなんてのは安直だろ? ありえそうなのは何らかのフラグを踏んだ場合……か?」
「何かしらのギミックを発動したら、あるいは他者からキルされたとかかのう」
ゲーム的なフラグならいいが、AIの選別――とでも表現すればいいだろうか。セクター0(不明)をセクター1(協力的)か、2(敵対的)かを選別する為の……、
「いや、――これは穿ちすぎだな」
「ご主人?」
「なんでもない。見えない先はいくら背伸びした所で見えない、ただの杞憂かもしれないしな。それよりそいつを地面に降ろしてやってくれ、案内人をしてもらおう」
ふと思い出した木島さんから聞いたビジター達の話を頭の隅に追いやり、俺たちは草原に向かって走り出したシラユキを追いかけた。




