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第七話 アイドル配信者

「『げっ』って何よ。アウラと一緒にいるってことは、ハックの関係者――いえ本人?」

「ノーコメントで、よろしく」


 和服をアイドル衣装にしたみたいな装備。ピンクと白を基調にしたヒラヒラな――いかにも私はアイドルですと主張しているような恰好だ。


 このプレイヤーは鬼神姫子(おにがみひめこ)。俗にいうバーチャル系のアイドルで、仮想空間でも鬼っ娘のアバターを使ってる芸能人……になるのか?


 アバター名は芸名と同じ『ヒメコ オニガミ』。ショートカットな黒い前髪の隙間からは、鬼人族の証である二本の角が覗いてる。一般の仮想空間で使ってる姫子のアバターと全く同じなのはデータの流用が可能だからである。


「その反応は絶対ハックでしょ! 昔はあんなに一緒に遊んだのに、酷くない? ねえ、アウラちゃん」

「相変わらずハイテンションよな」

「元気がヒメの売りですからっ。『姫トモのみんな、少しプライベートな話をするからCMに切り替えるね。五分くらいで戻るので、その間トイレ休憩にします』」


 ヒメコはアウラに同意を求めながら、カメラを操作してCMに切り替える。配信が一時停止になるとカメラ役の球体生物は赤色から、非配信を示す青に体色を変えた。


「よし、これでしばらくリスナーを気にせず話ができるよね」


 ヒメコは久しぶりに会った俺にフレンド申請を飛ばすと、俺たちの隣にやってきてニコッと笑顔を見せた。


「――で、そのアバターネームは……カオルね。復帰したならお姉さんにも一言あってもいいんじゃない?」

「どうせ装備作ってくれって駄々こねるんだろ」


 俺に見せつけるように、ヒメコはミスリルの指輪が嵌った左の親指を揺らす。確かにあれは俺が作ったものだが、まだまだ技術の無い頃に作ったモノだから性能は高くないはずだ。


「うちが我儘みたいに言わんでよ。有名になったらご褒美に『新しい指輪を送ってやる』って、約束してくれたのはキミじゃない」


 ヒロインが告白する――ドラマのワンシーンのように、潤んだ瞳でヒメコは俺に指輪を求める。


 残念ながら、そういう女の嘘って奴はドーラの姉御で慣れてるんだ。それと指輪を『送る』じゃなくて、『作る』な。


「演技が上手くなったじゃないか」

「でしょ? 五年前からずっと全力で走り続けたんやで、キミが『全力で楽しめ』って教えてくれたから」


 舌を出して笑うヒメコ。俺はそれを見て、彼女と初めて出会った時を思い出した。


「あの時は――うん、酷かった」

「ストップ! あの頃の話を持ち出すのは止めよう。自分の初配信を見直すのは恥ずかしすぎるから」

「くっくっくっ。わらわも最近になって昔のアーカイブを確認してみたが、緊張でガチガチだわ、トークはよく噛むわ、歌えば音を外すわ。居た堪れない気持ちになったな」


 アウラがヒメコと出会ったのは、配信者としてある意味真っ当になった後だ。黒歴史となったルーキー時代を持ち出されては、彼女も冷静ではいられない。


「アウラだって出会った当時はそんな口調じゃなくて、すんごく堅っ苦しい喋り方してたじゃない!」

「わらわはまだまだ生まれたばかりのAIだぞ? ロボっぽい話し方は仕方あるまい」

「うちだって、生まれたての配信者だったんですぅ」


 昔はオロオロ喋ってたヒメコと、ロボットみたいな話し方をしていたアウラは何故か波長が合っていた。今はもうあの頃の面影は消え去ったが、仲の良さは変わらないようだ。


 アウラとヒメコが口論してる間も、カメラマンである球体生物の持つタイマーが刻々と減っていく。このままだと放送事故に成りかねないが、ヒメコもしっかり残り時間を気にかけている。


「それよりも! 二人はなんでここに居たの?」

「ヒメコと同じだ。そっちも船が沈むと思って来たんだろ」

「もちろん。『遭難した』無人島で宝探し。――がこのイベントのキャッチコピーなんやから、救命ボートの確認ぐらいはしておかんとな」


 腰に留めていた双眼鏡を手に取り、ヒメコは船首の先を確認する。ようやく水平線の向こう側に、米粒サイズの陸が見えたのだ。


 さすがに怪物島の名前だけで何が起こるのか俺たちにもわからない。しかしそろそろ事件が起こることを警戒してもいいだろう。


「あっ――イベントが進行しそう。カオル、画面に映ってもいい?」

「良いぞ。お前の配信に映るのは今回が初めてじゃないしな」


 何かを見つけたヒメコは配信を再開するつもりのようだ。出演に関しては俺がアウターワールドをHackでまだやってた頃に、何度かイベントの配信中に絡んだたこともあり今更だ。


「やったー、ってことで『ただいまー、イベントが進みそうだから――」


 隣でヒメコが配信を再開した間に、俺も島を双眼鏡を使って偵察してみる。


 この距離じゃ、島の上に広がる『茶色の』雲が何かワカラナイナ。


「――おっと、イベントの通知か」


 ピピッピピッ。


 そんな通知音が鳴ると、イベント用のウィンドウが開く。俺とヒメコが同時に、画面をタップすると公式から最初となるインフォメーションが表示される。


「ええっと、リスナーさん向けに読み上げるね。『獅子の頭を持つ怪鳥アンズーの群れが魔導客船エヴァーガーデンを襲撃します。乗客の皆さんはこの危機をがんばって乗り越えてください』――以上!」


 ヒメコがインフォメーションを読み上げると同時に、無数の獣の咆哮が島から木霊した。


 カオルがヒメコに渡した指輪です。こういうアイテムの情報って必要かなと思い始めてる。


 リトルプリンセス


 回復魔法:Ⅳ

 歌魔法:Ⅴ

 バフ・デバフ広域化:Ⅲ

 直感強化:Ⅱ

 中級バフ効果強化:Ⅳ

 中級VIT強化:Ⅳ

 魔法コスト軽減:Ⅱ

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