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第十話 イベントの楽しみ方

あまり体調が良くないので夜は更新しないと思います。

評価、ブクマ、感想よろしくお願います。

 深紅の大剣が炎を吹き出し、巨大な炎の刃がボスを両断したアーツ『暴火の断禍』。


 美丈夫なグレンのアバターに見合う深紅の大剣が持つユニークスキルであろう。あれは見覚えがない武器だ。俺が不在の四年間で手に入れた装備なのは考えるまでもない。


 ユニークスキルは特定のボスがドロップする武器、ユニーク装備に付く。


 ランダムのスキル枠が減る代わりに、ユニークスキルは複数の効果が付くことが多い。あの大剣の場合、固有アーツも含めて火属性のスキル構成になっているはず。


「oh……真っ二つに切れちゃったよ?」


 サクラがボスの断面を近くから観察している。リアル描写じゃないから平然としてられるが、俺の画面だと結構グロい惨状だ。


「相変わらずだな、グレン」

「良いだろ? どうせあとは消化試合みたいなもんだったんだ。報酬を寄こせなんて野暮な事言わねえから勘弁してくれや」


 あちらさんから向かってきたとはいえ、ボス戦に横入りしたグレンは悪びれた様子もなく言った。


「だ――そうだ」

「お兄ちゃんの知り合い? 私は装備の試し撃ちだから別に気にしてないよ」


 サクラの言葉に他の面々も頷いている。俺はグレンと姉御を知らない連中に「俺のダチだ」と伝えて、戦利品の回収を頼んだ。


「トモエちゃん?」

「はっ、はい!」


 一人、ボスの遺骸に隠れてるやつがいる。ドーラの姉御の呼び掛けに、ルルエッタのやつは声を裏返りながら答える。


「なんだ、トモエ? おまえはまたHackの後ろをちょろちょろ追いかけてたのか?」

「ぐっ、うっさいわよ――だから、子供扱いすんなー!」


 ルルエッタはグレンに頭を乱暴に撫でられ、乱れた髪を直している。オーバーセンスの中で年少組だったルルエッタは誰からもこんな扱いだ。


「そんなにイジメちゃだめよ、グレン君?」

「あいよ、姐さん」


 ドーラに諭されたグレンは大人しく引き下がる。


 悪ガキばかりのオーバーセンスで、ドーラの姉御が唯一の良心だなんて色んな奴に言われたよな。


「グレンと姉御――なんであんたらがナンバーズを持ってんだよ」

「そんなこと、今はどうでもいいんだよ。それよりよお、まず一発――殴らせろや!」

「――ッ」


 グレンは俺の質問にも答えず、全力のストレートを俺の顔面に向かってぶちこんだ。


 遠くから「ええっ!」と驚く声がする。


「ってえな……」


 この痛みはある意味予想していた。だから抵抗もせず棒立ちで俺はなされるがまま地面を転がった。


「これでチャラだ。それでいいだろ?」

「はあ? ――くっ、あははははははは。お前は相変わらず良いやつだよ」


 説明を最初からするつもりのないグレン、だがそれでいい。


 俺の気にしていることなんてどうでもいい事だと言いたげに、グレンは面倒くさそうな顔をしている。


 言葉なんかより分かりやすい肉体言語が、俺の憑き物を殴り飛ばしてくれた気がした。


「ああ、ありがとよ。それとすまんかった」


 そうは言っても謝罪をしなければ、気が済まない。


 俺は改めてグレンと、不満げなルルエッタ、柔らかい笑みの姉御に頭を下げた。


「謝罪は受けた、過去の話はこれで仕舞いにしていいよな?」

「お、おう……」


 元々、謝るつもりだった俺はグレンの軽い了承に気が抜けた返事をする。


「じゃあ、ドレイクとジョンの分も清算は済んだってことだ」

「ちょっと待て! それとこれは違うだろ!?」


 グレンはそこでにやりと悪ガキみたいな――、悪巧みの成功に嬉しそう笑顔を見せた。一方この場にいないメンバーの名前が出てきて、どういうことかわからず俺は茫然とする。


 ひとりひとり謝るつもりだったのに、こんな扱いはないだろ?


「いいんだよ。あいつらの分も俺が頼まれてたんだ、さっきの一発は三人分……四人分だ」


 グレンは姉御に「私の分は?」と睨まれて訂正する。


 その姉御は俺らが話してる間に、ルルエッタとアウラの再会を済ませていたようだ。アウラの目が赤いのは分かるが、なぜかルルエッタの顔が赤くなってるのは何かあったのか?


 こういう場面で首を突っ込むと面倒なことになるのは学習してるから、俺は何も聞くつもりはないのだが。


「さあ、前座にいつまでも時間をかけても仕方ないでしょ? 本題に入りましょう」

「姉御……、あんたまで俺の謝罪はそんな扱いなのか」

「君の筋を通そうとする所は好きだけど、深く気にし過ぎなのよ。それより、四年ぶりにやるわよ? ――公式イベントのメンバー対抗戦」


 頻繁に行われるアウターワールド内の公式イベント。それにクラン内の誰がトップを取るのかをよく争っていた。


 足の引っ張り合い、裏で手を組んで他者を蹴落としてから、ついでに協力者も叩き潰すまでがワンセット。


 しょっちゅうイベント中にクラン内でPKしあって、他クランには――「あいつら、なんで身内で潰し合ってんの?」とよく言われたものだ。


「トレジャーハントでか?」

「ええ。誰が一番ポイントを稼げるか――負けたら、もちろん罰ゲームよ?」

「俺を後半のイベントに強制参加させるつもりじゃねえだろうな」


 参加を見送ってるガンナーズアウターのゾンビイベントを罰ゲームにする気ではないか訝しんでると、


「ふふふ、私はまだ考えてないわ。ただグレン君達は――」


 グレンの方を見てみれば――。うん、殺る気に満ちた顔をしてる。


「俺らを潰したのは忘れてねえからな」

「なんで、そっちのほうが怒りのヘイトが高いんだよっ、逆だろ!?」


 いや、たしかにあの時は競争無しで生存優先で――って話だったから俺が悪い部分もある。だがしかし、嫌がる俺を無理やり参加させたのはお前らなんだから自業自得だろ。


「そういう訳で、俺はそれを伝えに来ただけだ。詳しいルールは姐さんに聞いてくれ」


 用件が済んだグレンはさっさと帰還の転移陣に乗って帰っていった。


「結局ナンバーズを持ってる経緯を聞いてないんだが?」

「送られてきたのよ」


 姉御から聞いた話によると、文字化けした相手から送られて来たそうだ。俺が姿を消して数か月後の事、突然メールに添付されて、と。


 おそらくはインベントリの中にいるあいつの仕業だと、予想を立てた。


 ――が、どうせそれを聞いたところで、あいつは素直に答える性格ではないだろうがな。


神鉄製大剣『暴火の大龍剣』 品質:EX 状態:良好


 裂空斬・流星:Ⅵ


ユニークスキル『暴火・大剣』 

 上級大剣術:Ⅷ

 烈火属性

 炎耐性:Ⅶ

 自動再生:Ⅲ

 上級攻撃力強化:Ⅴ

 アーツ『暴火の断禍』




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