第九話 空から降ってきた男と女
どーん
もうすぐポイントのトータルが百に届くなーって思ってたら評価を頂きました。
十ポイント以上入ったら更新するって(勝手に)決めてたので更新します。
ドラゴンが息を吸い込み、口の端から炎が漏れ出す。
「ブレスですね、知ってた! 『ビルドチェンジ』――ワンダーフェイス」
こういった分かりやすい準備動作のある攻撃は直撃すれば、一発お陀仏と相場が決まってる。
数秒の待機時間を置いて俺の装備が一式――といってもアクセと武器だが――がワンダーフェイスに合わせたビルド装備に換装される。
「タゲはわらわか、ご主人のどっちかであろう」
「わあってるさ。おまえらは俺の背後に立つなよ! ブレスが来たらアオイちゃんの『ディフレクションシールド』で守ってもらえ」
俺とアウラは首の向く範囲内で留まる。変に背後へ回って、タゲが後ろにいるサクラ達に向けられるとまずい。
「こっちは尻尾切っとくから、タゲよろしくー」
ドラゴンの放った火炎放射タイプのブレスが、片目を奪った元凶である俺を焼こうと眼前に広がる。
「あいよっ――と、『飛来身』」
俺の手元にはすでにワンダーフェイスはない。ブレスの直前にボスの頭上に向かって投げていたからだ。
俺が使ったのは転移系の移動用アーツ。偽アウラとの戦いで使った『瞬身』と違って武器とアバターの入れ替えではない、アバターを短剣の位置まで引き寄せるアーツである。
回避・移動系アーツの中でも特に便利な性能ではあるものの、転移系は消費が重い。
まあMP関連のスキルを中心に採用してる、ワンダーフェイスのビルドとは相性の良いアーツなんだがな。
「高い所から失礼しますよ――『アストラルシュート』」
自分のブレスで視界が制限されてる灰龍の鼻先目掛けて、ワンダーフェイスを落とす。
口を開けてた灰龍は突然、口を閉じられて口の中でブレスを暴発させた。
「『リターンハンド』――俺は一度下がって回復するぞ?」
「了解じゃ」
俺は破れかぶれなボスの腕のぶんまわしを回避しながら、地面に降りる。そのままボスから距離を取ると、アウラのインベントリとは別枠であるアイテムポーチからポーションを取り出し一気に飲み干す。
もう一度、攻撃に戻る前に他の連中の状況を確認すると、
キャーキャー叫びながらドラゴンの尻尾や手足のぶん回しを回避しながら、着実にダメージを当てるサクラ達。
尻尾の辺りではルルエッタが仕事人のように、真顔で尻尾にダメージを蓄積させている。
「―――――するぜ!」
「ん?」
声がした。
龍の咆哮と女子高生が大騒ぎしてる中に、聞き覚えのある男の声が聞こえた気がした。
俺が青空の見える頭上を見上げると、
「なっ、グレン!?」
地表までつながった大穴、そこから赤髪の男が『ゆっくり』飛び降りてきたのだ。
ボスエリアを隔離するゲームシステムによる結界。赤髪の男は破壊不可属性のそれを大剣で破壊して、ボスの前に落下してきた。
「よお、Hack。久しぶりだな」
「あ、ああ。――いや、待て! お前が何でそいつを持ってるんだ」
『オーバーセンス』のクランメンバー、赤髪のグレンが持っていた二メートル近い大剣。色合いは変わっているモノの、それは間違いなくナンバーズの一つ『デッドエンド』なのだ。
「ちなみに私も一つ持ってるわよ?」
と、グレンに遅れて瑠衣さん――ドーラの姉御も薄手のチャイナ服風の装備を揺らしながら、上から降りてきた。
茶髪のポニーテールがトレードマークで、リアルの大人っぽい瑠衣さんとは真逆の活発的な容姿が彼女のアバターだ。
姉御まで……。脳筋野郎のグレンが『レビテーション』を使ってるのは不思議に思ってたが、姉御も来てたのか。
落下速度を減速する魔法でショートカットしてきた二人。モンスターが健在なら遠距離攻撃の雨がズルを阻止するのだが、俺達が道中狩り尽くしてきたから安全に降りてきたのだ。
モンスターが居ても居なくても、この二人なら軽く捌く能力を持ってんだがな。
「どう――」
「『どうして、ここに?』、なんて聞かないでね。グレンがいるのだから言うまでもないでしょう?」
グレンの勘でここまで来たらしい、相変わらずの超直感はずるい。
「おまえ、戻って早々大暴れしたらしいな。ちょっとネットを探ったら見つかったぞ」
「ルルエッタに巻き込まれたアレか」
ログインしてすぐにやったPvPか。何の切っ掛けもなく見つけるのは、さすがの『超直感』でも無理だよな。
ただそのネタを探し出したのはグレンではなく、同じく『オーバーセンス』のメンバーだと姉御が教えてくれた。
「何が起こってる、ご主人。そっちにボスが向かった――ぞ? ドーラ! グレン!」
「えっ、ちょ――お姉ちゃんとグレン!?」
上空で何か異変が起こったのはアウラ達も気付いていた。だからといってボスは依然と暴れてるのだ、間近で戦うアウラ達がその正体に気づくのは遅れても仕方ない。
「よう! アウラと――、トモエか?」
「……そうよ」
「ふーん、とりあえずこの雑魚は片付けていいのか?」
「勝手にしろ」
グレンは俺の許可を聞く前から武器を持ち換えて、こちらに走ってくるボスに棒立ちでいる。
「悪いな、『暴火の断禍』」
片翼をサクラ達に破壊され、尻尾も剥ぎ取られたボスをグレンが両断した。




