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第五話 ステラのクラフトマン

 俺が工房で作業を始めてすぐ、この工房を普段使ってる子が様子を見に来た。


 アオイが先ほど名前を出したメイという子なのだが、茶髪にメガネをかけた内気な女の子である。


 元々モノを作るのは好きだが、戦うのが苦手だったらしくクラフトや一緒に観光だけでもどう? ってことでアウターワールドを始めたらしい。


 あとは安全な場所で釣りだったり、農業に牧畜だったり。結構マニアックな――牧場○○みたいな遊び方をしているとの事。


「おお、サクラちゃんのお兄さんすごいです」


 どこか既視感を感じる――わざわざリアルを聞くことはしないが、この子はよくウチに遊びに来ていた早紀の友達の一人なんだろう。


「こういうギミックのある装備もいいだろ?」


 俺が思い付きで作ったコンパウンドボウ(近代的な弓)の滑車を動かしながら、メイは興味深そうに観察してる。


「はい! でも、これで試作品なんですか?」


 メイが軽く試してみようと――うん、顔を赤くして弦を引いてる。


 コンバウンドボウは引き始めに力を必要とする。さらにプレイヤーが使うのを前提にした弓で現実の弓より尖った性能だ。STR装備を付けていない、か弱い女の子には難しいに決まってる。


 さすがに有り合わせの素材で作った試作品だから、メイでもなんとか弦を動かる程度には押えてある。


「当然。この部分はミスリルを使うとして、本体には竜骨を使いたいな」

「金属パーツだけじゃダメなんですか?」

「ここを生体パーツにしたら自動修復じゃなくて自動再生のスキルが付けれるようになるんだよ」

「修復と再生に差があるですか?」


 メイはあまりゲームに詳しい子ではないらしい。スキルの組み合わせによって無限にビルドのあるアウターワールドだが、それが全てではない。


 牧場系のスローライフや異郷の街を観光するだけでも十分楽しめる。彼女のように現実では体験できない経験をするのもアウターワールド、仮想世界だからこそである。

 

「修復は欠損した場合、同じ素材で補わないといけないけど――再生は欠損しても勝手に直るって違いがある。もちろんどちらもメリット・デメリットはあるけど、経験上再生のほうが便利な事が多いな」

「なるほどです」


 なぜか金属部分も再生に含まれるのかは気にしてはいけない。


 そう、これはゲームなのだ。うん、便利な言葉。


 俺がメイにクラフトの小ネタなんかを教えてると、アウラ達がやってきた。


 そろそろクラフトを始めたいから、素材を持ってこいとメッセージを飛ばしたからだ。


「扱いが難しい物作ってるわね」


 来て早々、ルルエッタが俺とメイの間にあるコンバウンドボウを見て言う。


 近代弓は拘るととことんカスタマイズできるからな。まあ、アウターワールドならスキルがあるから、なんとかなるだろう。


「そうなの?」


 ここまで本格的な近代弓を使ったことが無いサクラが首を傾げる。


「そうなの、特殊ギミックって構造を理解してないとメンテナンスが難しくなるのよ」

「自動再生は付けるつもりだ。だから耐久が減ったら倉庫にでも入れてほっとけば直るさ」

「だから、ランダム性の高いエンチャントスキルを平然と決め打ちしないでよ。ガチャに沼ってる人に喧嘩売ってんの!?」

「再生持ちモンスターの魔石を使えばなんとかなるんだって」

「なりません! 自分の能力を前提にして話しない!」


 物の声が聴けるって素晴らしいね。どいつが何のスキルか、それが事前に聴けるんだから。


「はあ――っで、なんで弓なのよ? あの時のメンバーで弓使ってる子なんていなかったけど?」

「次のイベントがサバイバルだろ? 弓はあった方が良いと思ってよ。魔導銃より弓のほうが静かで一発がでデカいからな」


 魔導銃はレシピが見つかった時に試しに作って満足したんだよな。その頃にはガンナーズアウターに活動を移してたし。


 今回は魔導銃で遊んでみるか。ガンブレードかガンランス的なモノでも作って。


「あんた、変な事考えてない?」

「うむ、何かとんでも兵器を考えてる時の顔よの」

「いいだろ、クラフターなんだから何作るか考えてもよ」

「まずは廃都市での約束を守ってくれるかしら?」

「いえす、まむ」


 ルルエッタの言う通りだ。まずはこいつらの装備から作るか。


 俺はお遊びで作った弓をアウラに渡して、一同の希望を聞いていく。


「火特化杖!」


 サクラ……放火の魔力に取りつかれてないか?


「ヒーラー用の杖をお願いします」


 シルフィちゃんは真っ当なヒーラーに育ちそうだな。自分にバフかけまくって、モンスターを殴り殺す自称ヒーラーとか居たんだよな――身内に。


「近接アクセ」


 はいはい。クラフター装備が戻って来たから、ルルエッタの欲しがるレベルのエンチャントはできますよっと。


「え、えっと……どうしよう」


 アオイちゃんだけは何を作ってもらうか迷ってるな。


 スコーピオンに踏みつぶされた剣と盾はダンジョン産と交換になったし、ルルエッタと同じアクセもいいだろうが――


「騎士鎧一式はどうだ?」

「一式もですか」


 その提案に反応したのは妹とルルエッタだ。


「お兄ちゃん、アオイにだけ甘くない?」

「アオイみたいな子が好みだったのかしら?」

「外野、うるさいぞ。剣と盾はこの前手に入れたんだからアクセか防具しかないだろ」

「じゃあなんで防具一式なのよ」

「俺の作りたいもの」


 杖もアクセも作り甲斐がないんだよ。それに金属鎧一式はスキルレベルをあげるのに丁度いいからな。


「「じゃああたしも!」」

「お前らは金属鎧じゃないだろ! 『ダンジョンの素材で作れる範囲』って俺は言ったよな?」

「ぐぬぬ」


 時間があるんだからもっと作ってくれても――って、メイがいるのに俺が作ってもしょうがないだろ。


 そう二人に視線で訴えかけると、渋々下がっていく。エンチャントくらいならしてやってもいいが、クラフト自体は自分の所のクラフトマンを優先するのが筋だろうが。


 不義理なサクラとルルエッタにお仕置きとして全力のデコピンを入れ、具体的な完成図の設計を始めた。

ロボ物が書きたいと思い立って、すでに六千文字程。多分明日には投稿するかも? 一万は超えないと思います。

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