プロローグ
ポイント投下されたらこっちも投下するしかないじゃない!
アムールの帰り道。
瑠衣さんからお昼を奢ってもらって、喫茶店を出たのが午後一時。
行きよりも暑い野外の熱気に早紀はまたも蕩けそうになっていた。
「お兄ちゃん、コンビニ」
「勝手に行ってこいよ」
駅の近くにあるコンビニを見つけた早紀は何か冷たいモノが欲しいと、俺の腕を組んできた。
自分で暑いって言うくせ、無頓着に密着してくるのはどうなんだ。
「財布持って来てないです」
「嘘つけ、スマホ持ってんだろ――ってか、暑いんだよ!」
乱雑に振り払われる早紀は隙を見て、俺のポケットからスマホを奪い取る。最初からそれが目的だったのか。
「財布ゲット! ほら、お兄ちゃんもアイス買って帰ろうよ」
「早紀! ――ってもうコンビニに入ってるし」
小学生みたいに元気が有り余る妹はそのままコンビニに突っ込んでいた。
スマホが無ければ電車にも乗れない、俺は仕方なく早紀の後に続くことにする。
自動ドアが俺の姿に反応して、ガラスの扉をスライドさせる。涼しい空気と一緒に「いらっしゃいませ――」と電子音声だけが響いて、無人型の店内を探索する。
(半分以上が仮想空間での娯楽広告だな)
アーティストのバーチャルライブ、スポーツ観戦。仮想空間で行われる多くのイベントが広告用モニターに表示されてる。一番目立つ場所には黒髪のアイドルがアイドル衣装で、歌うポスターがでかでかと映し出されていた。
そういえば、リアルの観光地を仮想空間に移した――仮想旅行がブームになったのは随分昔の事だったな。
高級なサーバーを使えば匂いや肌で感じられる空気も作れるのだ、わざわざ現実で旅行にいくメリットは気分的なモノに限られてくる。
現実が徐々に管理AI達の領域である仮想空間に侵食されていた。
このコンビニだって、企業オフィスのある仮想空間でAIが客層、商品の在庫数まで逐次状況を把握しているはずだ。
商品が少なくなれば、人がトラックで在庫が運び。
トラブルがあればAIが社員を呼びだす。
飽きられた商品は店頭から消え、人を使って新商品を生み出させる。
これもまた人間がAIに管理されてる一例とも言えるのではないだろうか。
「お兄ちゃん、アイスはこっちだよ」
「先に選んでろ、母さんと父さんの分も買っとけよ」
「はーい」
ジュースと菓子も補充して、……たまには弁当でいいか。
ヘビーな話を聞いた俺は晩飯を作るのも横着したくなって、妹にもそう伝える。
「珍しいね、アウターのサマイベが始まるから?」
「もうそんな時期だったか」
「そうだよ、忘れてたの? 早く装備作ってくれないと間に合わなくなるって!」
装備を作る約束を思い出した早紀は急いで買い物を終わらせる。無人のカウンターでカゴに入った商品をスキャンし、支払いの認証を俺にするよう急かすのだ。
「急いだところで、まだレベル上げも済んでないんだが?」
「レベル上げはよ」
「はいはい」
レベル上げと言っても、残った装備の確認が先だ。クラフト用のアクセが少しでも残ってたら、あいつらに作る装備は十分に作れるさ。
俺がそんなことを考えながらスマホをレジに近づけて支払いを済ませると、自分のアイスだけを取り出して早紀は外に飛び出した。
「車に気を付けろよ?」
「はーい――って誰が子供だ!」
俺らの日常は仮想世界が侵食してきても何も変わらない。
コンビニでは広告のナレーションがなお続いている。
「『今年の夏は仮想の海で』――ビジター社と○○社が生み出す最高のサマーバケーションを経験しませんか? リアルと変わらない体験が、仮想世界にてお待ちしております」
ゾンビパニックの街を徘徊するイベントはやめてくれ。
俺はそう願いながら東京砂漠に戻った。
評価ブクマありがとうございまする!
あと4ポイントだああああ




