エピローグ 前半
腕を切り落とされた後遺症は現実でも数日残り続けた。
なにせ痛覚の感度が現実と変わらない状況で腕を切断されたのだ。妹や両親に異常を悟られないようするのに苦労した。
アウターワールドの方は、アバターが隔離保護されてログインできない状況になっている。
例の野良AIの調査を頼んだ協力者が連絡するまで、アバターを動かすなと言われてるからだ。
「早紀、今日は留守にするから昼は勝手に食べてろよ」
朝の九時に起き出した早紀に、自分の分とついでに焼いたトーストと目玉焼きの乗った皿をテーブルに置く。
「お兄ちゃん、どっか出掛けるの?」
「ああ、ちょっと用事だ」
「なになに、私に言えないような用事?」
寝癖の残ったままパンを咥える妹は眠そうに聞く。俺も人の事は言えないが、夜遅くまでアウターワールドをしてたんだろ。
「アムールで知り合いに会ってくるだけだっつーの」
「今日って――火曜日は定休日だよ」
アムールと聞いて、早紀のまぶたがピクピクっと二度動く。だがしかしスマホの画面を確認してがっかりする。
どうせ、また何かたかる気だったんだろ。
「瑠衣さんにお願いしてあるから問題ない」
「いいなー、私も行きたい!」
「――却下だ」
お前は少しは頭を働かせろよ。別に何かを食べに喫茶店にいくんじゃないんだぞ。
「ええ、あっ。もしかしてええ! デートだったり?」
と、思ったら別の方向に頭を使い始めた。早紀の年齢ならそれも仕方ない話ではあるか。
「はあ――、ちげえよ。頼み事をしてた人と会うだけだ。デートに喫茶店を貸し切りにするかよ」
「ふぅん?」
疑いの目をしたまま、早紀は顎をくいっとコーヒーを入れろと命令してくる。
こいつ、母さんに告げ口して面倒事にするつもりか?
誰がいれてやるか。――いっそミルクも砂糖も無しの無糖ブラックで出してやるのも手かもしれん。
「わかった! ついて来たいなら勝手にしろ。た・だ・し、休店日だからな。コーヒー以外は期待するなよ」
「ほんと? やったー」
妹の相手は瑠衣さんに任せよう。
その方が結果的に面倒を回避できると思って、妹もあいつのところに連れていくことにした。
東京の今日の気温は40度近く、アスファルトの上は40度を余裕で超えてるだろう。
「あづいぃ。オアシス、カムヒアー」
冷房の効いた電車から降り歩き始めてすぐ、早紀が東京砂漠に泣き言を言い出した。目の前にあるアムールのお洒落な喫茶店の扉が、妹にはオアシスへの入り口に見えてるらしい。
「なら大人しく家に居とけよ」
「たまには外出しないとモヤシになるじゃん」
「あっそ」
歩調の変わらない俺に、待ち切れなくなった早紀は走り出した。
喫茶店のガラス窓からは会う約束をしていた女が若干笑いながら手を振っていた。
「ほら、お兄ちゃん早く! 瑠衣さーん、お邪魔しまーす」
早紀は笑われてるとも知らず、一度俺の方に振り返りそのまま喫茶店へ元気に入って行く。
若者向け、というより大学生向けの落ち着いた内装。いつもなら何人か大学生が飲み物を頼んで駄弁っていたり、勉強をしていたりするはずの店内にちょっとした違和感を覚える。
「コウ君、いらっしゃいませ」
「突然無理言ってすみません、姉御」
俺より五つ年上の女性、この喫茶店のオーナーである高月瑠衣さんが柔らかい笑みで迎えてくれた。
頭の後ろで長い黒髪を結び、この喫茶店の制服であるフリルの付いた白いブラウスとサロンエプロン――胸当てのない腰から下のエプロン――が今日も良く似合ってる。
「――もう、その呼び方はやめてよ。でも、その様子ならアウラちゃんも見つかったみたいね」
「ええ、本当にご心配をおかけしました」
俺は瑠衣さんに頭を下げて感謝する。
彼女こそアウラのアバタ―をデザインしたプレイヤー、アウラの生みの親の一人だった。
「コウ君もアウラも私にとっては弟と妹のように思ってたらから安心したわ」
「瑠衣さんとお兄ちゃんってどういう関係なんですか?」
「あら、早紀ちゃんには話してなかったの?」
「あはは、俺がアウターワールドの話をしたのはこの夏に入ってからでしたので」
早紀は興味津々だ。今までは大学の近くにある喫茶店の常連とオーナーとしか思っていなかったはずだ。それ以外にも繋がりがあったなんて思いもしなかったのだろう。
瑠衣さんと俺は一瞬目配せを交わし、妹の相手をお願いした。
「そっか。なら早紀ちゃんには、わたしとコウ君が同じクランで遊んでた頃の話でもしましょうか?」
「あんまり変なこと言わないで下さいよ、姉御」
「ふふふ、どうしましょうか」
この人には好き勝手に振る舞う俺でも頭が上がらない。なにせ、中坊時代(黒歴史)は全部知られてると思っていいからな……。
妹がこちらから意識が離れたのをいい事に、俺は窓側の席で待たせていた人の下へゆっくり近づく。
「おまけつきですみませんね」
「構わんよ。どうせこちらに関わらせるつもりはないんだろ」
「もちろん。――で、調査結果はどうでした?」
「話が早い男は好きだぞ? 私もすぐ仕事に戻らねばならない身でな」
そう言ってメガネをくいっと上げる仕草をする女性。今日会う約束をしていた木島瀬里はビジネススーツを着た、ビジター社のお偉いさんである。
彼女の前にはブラックのアイスコーヒーとタブレット端末が置いてある。ここに来てまで仕事をしていたのだろうか。
「例のアンノウンAIの出処はセクター2だった」
木島さんは俺が席に着くとすぐに本題へ入った。
「セクター2?」
確か、あの卵型の保管箱にそんなことが書かれていた気がする。ただ、2ではなく0だったよな。
「お前がナンバーズを見つけた場所。あの古代遺跡に偽装された研究所がセクター0にあたる」
「やっぱり、ただのダンジョンじゃなかったってことですか」
「木島幸一郎は知ってるか?」
瀬里さんがミルクと砂糖の付いたアイスコーヒーをテーブルに運んできてくれた。俺はそれにお礼を伝えて、聞き覚えのある名前を頭の奥にある記憶から引っ張り出そうとした。
補足に入れるのを忘れてたのはこちらでした。
ワンダーフェイス 品質:EX 状態:最高
上級斬撃強化:Ⅹ
上級属性付与・全属性:Ⅹ
上級状態異常強化:Ⅹ
ダブルハンド:Ⅹ
アストラルシュート:Ⅹ
上級STR強化:Ⅹ
上級DEX強化:Ⅹ
上級短剣戦闘術:Ⅹ
武器破壊耐性:Ⅹ
自動修復:Ⅹ
オーバースキル『クロックキーパー』
ルルエッタから受け取ったアクセサリー
アルケミストリング 品質:B 状態:良好
クイックユーズ:Ⅱ
クイックチェンジ:Ⅲ
アイテム投擲:Ⅲ
下級消費アイテム強化:Ⅳ
下級錬金術:Ⅲ
下級DEX強化:Ⅲ
下級VIT強化:Ⅲ
下級LUC強化:Ⅴ




