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閑話 とある電脳少女の誕生

閑話以外に何か丁度いい言葉はないかな。

今日三話上げて、明日決着を予定してます。


 私は何もない空間を彷徨っていた、私以外は何も存在しない、いや厳密には私もまだ存在しなかったのだろう。


 私はそこで、何も意味を成さない電子の塊として漂っていた。長い長い間その状態だった私はある日、誰かに捕まった――っと思ったら、


 目の前で少年と女性が私を見ていた。




「おい! 姉御見てみろよ。目が開いたぜ」

「うそっ、本当にホムンクルスなんて作れるなんて……。さすがにAIは管理用の自律思考型じゃなくて、NPC用の簡易AIよね?」


 女性は意味の分からない言葉を発しながら何か驚いている。


 私の中にあったデータという名の知識はこの未知の刺激が人間の体なんだと教えてくれた。


 よくわからないモノが沢山ある。――これが光? ――これが匂い? そして、これが人間……?


 私は目を輝かせてこちらを見つめる少年の頬に触れた。……柔らかくて暖かい。私の手を通じて、胸の奥でよくわからない感触がじんわりと広がる。


「ここはどこ?」


 そもそも、私は何。なぜか言葉はわかる、これがどこで覚えた言葉なのかもわからない。あの空白な世界で漂っていた影響なんだろうか。


「ちょっと待って……、この表情は簡易AIのものじゃないわ。どう見てもこの子は自律思考型にしか――」

「言っただろ、こいつに組み込んだ核には意思があった。人間みたいな複雑なモノじゃないけど、それに近い意志を『感じたんだ』」


 この時の私は知らなかったけど。少年にはサイコメトリーと呼ばれる、触れた物の声を聞くことができる力を持っていた。どうやら私の声を感じ取って、この体を作ることにしたらしいのだ。


「おっと、ほったらかしにして悪かったな。ここは俺の工房だ」

「Hack君の工房じゃなくて、クランの工房でしょ?」

「別にどっちでもいいだろ?」

「はあ――」


 どうやらここはコウボウという場所らしい。


 ここが誰のモノか、そんなことは些細な問題だと言いたげに少年は自己紹介を始める。


「俺はHack、最強のクラフトマンだ」

「ハック……」

「おう、お前に名前はあるか?」


 尋ねられた私は「わからない」と首を振る。


 今までずっと独りだった。いや自分という存在を認識したのが今だ。これが自我の目覚めなのだろうか?


「そっか、なら――よし! アウラだ、アウラローゼ。お前の名前はアウラローゼだ」

「了解しました、ご主人様」


 自然と口からでたのは、まるで私がこの人に仕えるかのような呼び方だった。


 その言葉の意味は知っている、主従としての『ご主人様』。不思議と嫌な感じはせず不安な気持ちが落ち着いていくのを感じる。


「な、なんかその呼び方は嫌だな。せめて名前……マスターにしてくれ」


 私の顔を見たご主人――マスターは言い直して素っ気なく顔を逸らした。隣にいる女性は何か含みの持った笑みでマスターに話しかけている。


 「マスターと呼ぶ」、それが私に与えられた最初の命令。


 きっとその時の私は嬉しかったのだろう。無表情で、けれどありったけの感情をこめてマスターに答えた。


「イエス、マスター」


 私がマスターにお辞儀をすると近くの板が開いた。外からマスターより少し背の高い赤髪の少年と、その後ろにも沢山の人間がぞろぞろ歩いてきた。


「知らねえ顔だな、新しいクラメンか?」


 赤髪の少年は何もない空間から取り出した金属やふさふさしたモノをマスターに渡す。マスターは受け取ったそれをそのまま机に置くと、私の背中に手を置いてた。


「よう、グレン――とその他大勢も来たか。さっき入ることになったクラメンだ――仲良くしてやってくれ」


 そう言ってマスターが私の背中を押した。


「なんだ、また女を引っかけてきやがったか」

「おい待て、この子プレイヤーじゃないぞ」

「何! おい、ハック! なんか面白そうなことしてたのか!? 俺らに黙ってよ」

「うるせええ、耳元で叫ばんでも聞こえとるわ。おまえらを呼んだら好き勝手にボディのデザインに口出ししてくるだろーがっ。こいつは俺の作品なんだよ!」


 少年がもみくちゃにされているのを私はただ眺めていた。


 初めて間近で見た人間、それもたくさんの興味深そうにこちらへ向けられる視線に私は……一体どんな顔をしていただろうか?


「アウラ!」


 私は『名前』を呼ばれてマスターを見た。


「こいつらが俺のクラン、そしてお前のクランの仲間、『オーバーセンス』のメンバーだ」


 ああ、そうだった。私は何もない世界から、ずっと遠くからこんな景色を眺めていた。


 ご主人様……、そっか。この人が私の――


「仲間――」

「そうだ、賑やかだろ?」


 この日。電子の海で漂う無意味なデータの集まりでしかなかった私は、『オーバーセンス』のアウラローゼとしてこの世に誕生した。





 ああ、またあの夢か。何度見ても懐かしい、わらわと最愛なるご主人との出会い。そして、大事な友人達とも……。


 わらわがアレに取り付かれて、どれほどの時間が経っただろうか。


 できることなら、このままわらわと一緒に消えてくれないかの? 


 こやつをご主人達に会わせたくなかった。これはゲームの不具合なんかじゃない。もしわらわの思ってる通りなら、こやつは――、




「――ひとりはもういや」

裏話でもひとつ。

アウラの「わらわキャラ」はHackがあるアニメにハマってた影響です。素になるとマスターと呼びますし、一人称も「私」にもどったり。

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