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第十六話 始まりはここだった

残り数話でメイク1はおしまいです。

どう評価されるか、物語が山場に入るときはいつも緊張します。うぐぐ

「おっほー。ボス戦あとの、この時間が生を実感するよぉぉお」


 報酬部屋には金の延べ棒と武器防具、ポーションがしっかりと別けられ、整然と並ぶ。金銀財宝といえば、山積みになってる姿を思い浮かべる人間も多いだろうが……。


 一般的なファンタジーに出てくるような他のダンジョンなら、そっちが普通なのだ。――というより銀行の金庫みたいなこの報酬部屋の方が異質なだけである。


「やったー、おっかね持ちだー」

「――これ見てるとあんたの妹だってよくわかるわ」


 金貨の山を泳ぐ代わりに金の延べ棒に頬ずりする妹。それに部屋の外にいる俺は若干引き気味だ。さすがの俺でもここまで気持ちの悪い顔で喜んだりはしない。


「だろ? ゲームは楽しまねえとな」

「……ただの皮肉よ。あなたも昔はあんな顔をしてたわ」


 いやいや、俺はもっとニヒルに笑うぜ?


 あいつみたいな締りのない顔を晒した記憶なんてないわ。


「ルルエッタさん? アオイさんへの嫉妬をお兄さんにぶつけていないで、分配を決めましょう」

「――誰が嫉妬してるのよっ。ちょっと、シルフィ聞いてるの?」


 ルルエッタとシルフィが報酬を確認しに部屋へ入って行き、最後にアオイが苦笑いで恥ずかしさを誤魔化しならやってきた。


「あはは、最後までうるさくてすみません」

「構わないさ、妹たちには秘密だが君たちには感謝してる。俺だけならここの攻略はもっと先になっていた。――ありがとう」


 あいつに直接感謝を伝えるのは俺のキャラじゃない。ルルエッタも気にしたりしないだろう。しかし本心からルルエッタ達には助けられたと思っている。


 俺だけなら北部都市で準備期間を作らないといけないと考えていた。それがリアル時間で一日掛からず来られたのは最善の結果だ。


 そんな素直な気持ちを調子に乗りそうな妹にも、ルルエッタにも伝えず、アオイにだけ口にした。


 アオイも俺の我儘を汲んでか小さく、「なら貸し一つですよ」と言って金庫の中に入った。


「――君はやっぱり女の子だよ」


 ボーイッシュに見えても女の子である。彼女の強かさに俺は舌を巻いた。




「お兄ちゃんは本当にそれだけでいいの?」


 俺が分配された報酬をインベントリに詰め込んでいるとサクラが確認してきた。

 

 たしかに装備品の類は軍服風の上下セットの二点だけ、その分素材を多くわけてもらった。


「クラフトマンには装備より素材の方が嬉しいもんなんだよ」


 受け取ったばかりの軍服に着替えた俺は、なぜかシルフィに熱い視線を向けられている。


 彼女はこういう服装が好みなんだろうか。ガンナーズアウターではこういうきっちりした格好が多かったから、着慣れてるんだよな。


 さっさと残してきた仕事を終わらせてクラフトにのめり込みたいもんだ。


「ふーん」

「さあ、出口はこっちだ」


 帰りはダンジョンの奥にある転移陣から最寄りの転移地点に出られる。まあオンラインゲームによくあるショートカットだ。


 ここなら廃都市の冒険者キャンプか、北部都市のどっちかだったはずだ。


「結局『彷徨うエルフ』は出てこなかったね」


 出口に出る昇降機のスイッチを入れて、箱が来るのを待ってる間。サクラが都市伝説の話を思い出した。


 このまま忘れていてくれた方が都合が良かったってのに……。


「そういえばそんな話をしていましたわね」

「あー、ゾンビとかロボとかで完全に忘れてた」

「そう都合よく出会えるモノじゃなかったか、ただの噂話だったのよ」


 あの大きな兵器、スコーピオンを外に出す為の昇降機が降りてきた。


 実際にはこの昇降機はもう動かすことができず、転移するための魔法陣が設置されてるだけなのだ。


 ルルエッタが約束通りに俺を一人にするため、嘘をついてサクラ達を昇降機に引っ張っていく。


「お兄ちゃんは?」


 俺だけ昇降機の外にいるのをサクラは、「あれっ?」っと不思議そうな顔をする。


「俺は用事だ」

「用事? ダンジョンはクリアしたんでしょ?」

「迷子のバカを迎えにな」

「それって例の――」


 サクラが最後まで言い切る前に消えていく。ルルエッタが強引に転移させたのだろう。


「サンキューな、トモエ。礼はアウラと一緒に帰ってから言うわ」


 俺は動かなくなった昇降機に入り、脱出口を無視してさらに上を徒歩で目指す。


 なぜ昇降機が動かなくなったと知ってるのか。


 それは前に来た時も上に何があるのか気になって、色々調べたからだった。


「デバッガーみたいな事してたよな、昔の俺」


 インベントリからカンテラみたいな携帯照明を取り出し、昇降機を走らせるレールの横を足元に気を付けて進む。


 思えばここが、Hack時代最後のソロダンジョンだったかもしれない。


 それ以降は俺の隣にはずっとアウラが居た――彼女が消失するまでは。




 四年前。俺がログインすると、全てが無くなっていた。


 各地を暴れまわって手に入れたAGも、手間暇かけて作った装備も、仲間と共に集めた素材も、――――そして原点であるNumbers.0『アウラローゼ』もだ。


 真っ先にアウラローゼ達を探そうと思ったが、何ひとつ手掛かりはなかった。


 『オーバーセンス』の誰かに協力を求めようとは思えなかった、当時の俺は疑心暗鬼になっていたからだ。


 窃盗を考えた俺が施設のログを調べても、外部からアクセスされた形跡はなかった。


 そう、クランメンバー以外のアクセスは――。


 普通に考えれば有り得ない。なぜなら装備はよくメンバーに貸し出していたし、傲慢だと思うが素材も俺より有効活用できるクラフトマンはいない。金だってクランで動けばいくらでも――だ。


 それでも混乱していた俺は仲間を疑った、クランのリーダーだった()()だ。


 アウターワールドに帰って来た俺が、旧友たちに連絡を取らなかったのはそういう理由だった。パニックになっていたとはいえ、仲間を疑った俺がどの面下げてって話じゃないか。


 そして俺はアウターワールドから去って四年後、アウラが見つかったと聞いて俺はここに――Numbersと出会った場所へと戻ってきた。

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