第十二話 Numbers
昨日に引き続き一回更新です。(昨日に書いとけばよかった……、申し訳ない)
メイク1の終わりに近づいてきましたが、メイク2以降はそのまま続けるか、少し休憩を入れるか不明です。
そもそも終わりまでかけていないという。ストックは30話近くほどあるんだけどね。
戦闘を終えた俺はルルエッタと二人でPC端末や小難しい事が書いてある書類の山を退けながら、研究所の一室を漁っていた。ここはダンジョンであり研究所なのだ、当然セキュリティという名のダンジョンギミックが存在する。
俺らが今探しているのは所員のIDカードだ。都合よく落ちてるIDカードで先に進むのは少々ご都合主義じゃねえかと思ってしまうが、クリア不可能なダンジョンを作られて困るのは俺達、プレイヤーだ。
「ナンバーズの一つを魔導剣に改造する」
俺はずっと考えていた事を口にする。
あの後、一通りのメカ型モンスターを排除したのはいいがルルエッタに借りた魔導剣は耐久の限界を迎えた。
修理設備とスキルがあれば耐久を回復させられるのだけども、ダンジョンの中では関係ない話だ。
「何よ、突然」
埃を頭に付けたルルエッタの声には呆れを含んでいる、けれどその顔はどこか嬉しそうなのは気のせいか。
ロッカーや机の引き出しを乱暴に荒らし、俺達は雑談しながらダンジョンの鍵を探す。
「いや、こんな浪漫武器を見たら作らないわけにはいかないだろ」
「またバグメイカ―って呼ばれるわよ?」
別の部屋からもドッタンバッタン、大きな物を蹴ったり倒したりして家捜ししてる音が聞こえる。
いくら壊しても勝手に直るゲームとはいえ、一向に成長の見えない妹に心の中で頭を抱える。
「はっはっはっ。一向にかまわん」
「ナンバーズに丁度良さそうなのがあったっけ?」
「デッドエンド、すまない……」
他にも素体として丁度いい作品は存在するが仕様頻度を考えればアレ一択だ。デッドエンドだけはゲームバランスを壊し過ぎて、使用を控えていたからな。
「あんた――あのゲームブレイカーのナンバーズを魔導剣にするつもりなの?」
「ねね、ナンバーズって何?」
部屋の扉から顔だけ覗かせるサクラとその他二名。隣の部屋を探し終えた彼女達は俺達と合流するため、こちらにやってきたようだ。
妹にも話さなかった昔の事を教えても良いのか。ルルエッタは俺に確認する。ずっと蚊帳の外だったサクラ達も、俺の目的を聞き出すタイミングを計っていたのかもしれない。
「――どうするの?」
「言ってもいいさ、俺も戻る覚悟は決まったからな」
逃げるのはもう終わりだ、俺は迷子になったナンバーズを探し出さないといけないのだから。
「ナンバーズっていうのはカオルの前アバターが使ってた数字の入った装備のシリーズよ」
「なんだか中二臭い」
「それはそうよ、カオルが中学生の時に作ったんだから」
「うっせ」
別にいいだろ、ナンバーズは既存の武器とは一線を画す。あれはただの武器じゃなかったんだよ。
「それでそのナンバーズなんだけど……まあ、簡単に言うと正真正銘のバグ装備よ」
「はい?」
サクラは首を傾げる。
「Numbers.Ⅱ『アズライール』、クロスボウ・スナイパーライフル型の――重力とか空気抵抗とか、射撃の邪魔になるモノを全て無視してどこまでも弾丸を飛ばす超長距離射撃の死神」
「はい?」
シルフィも同じく首を傾げる。
「Numbers.Ⅲ『デッドエンドブレイカー』、大剣・グレラン型の破壊不可属性を無視して破壊可能にするゲームブレイカー」
「はい?」
アオイも――以下略。三人は「何をやらかしているんですか」とでも考えていそうな顔だ。
「お兄ちゃん、その装備はどうしたの?」
俺は一瞬、ルルエッタの顔を見る。
おまえも予想はついてるんだな。それもそうか、アウラが一人で彷徨ってるんだ……。
俺とルルエッタが苦々しい顔をして考え事をしてると、サクラが心配そうに尋ねてくる。
「お兄ちゃん?」
「いやなんでもない。ナンバーズも今まで作った装備も全部ロストしてる」
全ロスなんてゲームの仕様上、普通は起こり得ない。
なので三人娘の頭上には疑問符が浮かぶ。それと同時にサクラだけは何か納得した空気もある。おそらく俺が引退してた理由を察したのだろう。
「――なんで? この世界ってPKで盗られたりしないよね。ガンナーズの方で?」
「ガンナーズでも対策してれば、そう簡単に全ロスなんてしねえよ。それに一切のログも痕跡もなかった。ゲームとは関係ない不正な手段で盗まれたんだ」
「外部からのハッキングってこと!?」
俺があの時見たモノを調べようと思ったが、中坊に何ができる。唯一の成果があったとしたら、とある人間とのコンタクトだけだった。
その人が挙げた可能性が、一つはゲーム外からのハッキング。しかしそれは有り得ないとシルフィが断言する。
「ありえませんわ。このアウターワールドを含む、ビジター社の仮想世界がハッキングされたなんて」
アウターワールドにも使われてる、ビジター社のセキュリティシステムは軍用のハッキングAIでも突破はできないことで有名である。23世紀の高度に発展した情報社会で、設立から一度たりともセキュリティを突破させなかった実績は教科書にも残る偉業だ。
その鉄壁のセキュリティからビジター社が提供する仮想空間に本社を置いてる企業すらある。公的な機関――役場のような行政機関すら仮想空間で手続きが可能になっている。
「それ以外にありえねえんだよ。ナンバーズを保管してたのはクランの工房だ。そこからアイテムを取り出そうと思ったら、必ず取り出したログなり、工房の入退出ログが残る。それが何も残ってなかったんだから」
「運営に問い合わせたんですか?」
俺は何も答えない。ただ「さあな」とジェスチャーだけ伝える。
黒いナニカは異能の力で視たモノでしかない。協力してくれたビジターの関係者にもアレについては話していない。
昔の話はそこまでに切り上げ、最後に残された場所を調べる。
「あったぞ」
机の引き出しを開けると未開封のお菓子とIDカードが入っていた。
中身がどうなってるのか確かめたくもないダークマターは見なかったことにして、俺はIDカードを手に取る。
「あ、こっちも別の部屋でクラフトのレシピとか、この研究所の地図を見つけたよ」
「オーケー、ここで見つかる物は大体見つけただろう。ギミックを解除して、先に進もう」
暗い空気を浄化するサクラの元気な声が、空き巣の成果を報告した。それだけで場の気分が良くなった気がするのだから感心する。
ルルエッタはまだ俺に何かを聞きたそうにしてるが、空気を悪くしたくなくて切り出せない。しかしサクラ達が先に部屋から出たのを見計らって、小さな声で話しかけてきた。
「本当に外部ハッカーだと思ってる?」
「いや違うだろうな。犯人はおそらく、運営側に関わる人間だ」
「作ってから一年以上、初期の物を含めれば二年以上経過してる装備を回収したってこと? どうして……」
ルルエッタはバグ装備を回収する為だと思ってるらしい。だが真実の一部を知る俺にはそれが目的じゃないとわかる。
「ナンバーズ以外は巻き込まれただけ、犯人の目的は――ナンバーズだけだ」
あの頃から違和感はあった。
ナンバーズの核となったアレは、ゲーム用に作られたアイテムなんかじゃない。あいつらは仮想世界に隔離された卵だったのだ、と。




