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第十一話 魔導剣

 休憩から戻った俺は全員が揃ってるのを確認するため点呼を取った。


 ここへ来るまでに少々のトラブルが有ったが、休憩を挟んだおかげで集中力も戻ってきただろう。


 展開した時と同じくスイッチ一つで収納可能なテントを回収して、


「全員戻って来たな。お前ら! 消耗品と装備の耐久は問題ないか? インベントリの空きは十分か? ――オーケー。いくぞ野郎ども。楽しいダンジョン攻略の時間だ」


 短剣をクルクルと回して久しぶりなセリフを吐く。それを聞いたルルエッタは小さく微笑んでいる。


「それ、聞いたの三年振りね」

「『オーバーセンス』が恋しいか?」

「ええ、本当に楽しいクランだったわ」


 ルルエッタの別アバターも所属していたクラン『オーバーセンス』、今はまともに機能している気配はなさそうだが、――まあ、原因は俺だ。


「……悪いな」

「本当よ」


 妹の「誰が野郎だ」と定番の返しも聞いて、俺達は奥へ進むことになった。




「巡回型の警備ロボットが三体だな」

「お兄さん、そんな堂々と見ていて大丈夫でしょうか?」


 隠れる場所の無い不安感で端っこに寄るシルフィが、仁王立ちで中を確認する俺に尋ねる。


「この自動ドアがセーフティーエリアの境界線だ。ドアを開けただけならまだ襲われないぞ」

「へえ、そうなんだ」


 安全だと聞いたサクラは用心深く俺を盾にして中を覗く。


 室内にいるのは半分人型なメカだ。下半身だけ車体となっており、腕の先には手の代わりに銃が取り付けられている。


 ルルエッタが鑑定した、名称『パトロールロボットG1』はホイールを滑らせ、腕部の銃口をこちらに向けて威嚇してきた。


 他にもスキルまで看破したようだが、危なそうなスキルもなさそうだ。ロボなら自爆スキルの一つでも持たせてやれと思ったが、警備ロボットには搭載できなかったか。


「ってことでアオイちゃん、ごー」

「えっ?」

「『えっ?』――じゃなくて、タンクが最初にヘイトを取らないと」


 道中の雑魚敵を適当に狩って来た俺はここで初めてパーティプレイで戦うことにした。なので最初にヘイトを取るべきタンクのアオイちゃんに指示を出すが、きょとんとしてる。


「あー、カオル。アオイは別にタンクじゃないわよ」

「あれ、そうなのか。一人だけ金属鎧だからタンクビルドだと思ってたんだが?」


 ゲーム慣れしたサクラやルルエッタがいるから、てっきり鉄板構成で組んでたのかと思ったらそうでもないらしい。


「そこまでガチな構成じゃないもの。サクラはまんま魔法ビルドでシルフィは回復メインのヒーラーだけど」

「アオイは?」

「体が動かすのが好きだから、近接キャラにしようと思っただけなので。それ以外は……」

「一応、剣と盾で持ちのサブタンクが一番近いかしら」


 メインタンクになれるほど防御力が高い構成じゃないが、盾持ちだから多少の敵は引き受けられるということか。確かにサブタンクポジだな。


「へー、なら変則パーティらしく戦うか」


 そもそもの話、俺が昔作ったクランにタンクはいなかった。どいつもこいつも自分勝手なビルドで、自分勝手に戦っていた。


 王道だけがゲームを楽しむ方法じゃないってね。


「どうするのお兄ちゃん?」

「初心者三人に敵一体任せるから。残りは俺とルルエッタに任せろ」

「わーお、かっこいい」

「元々一人で全部やるつもりだったからな。こっちは気にせず遊んでろ」

「お兄ちゃんって私達よりスキルの数もレベルも下なんだよね?」

「そこはPSの差だ――さあ、いくぞ」


 俺は先陣を切って走り出す。もちろん、メインスキルである投擲も忘れず使う。


 相手が動かないなら遠距離から先制攻撃するべきだと思うかもしれないが、遠距離は相手の間合い。それなら全力で接近したほうがこちらにとっては有利だ。


 あと初手は俺を狙って射撃して欲しいのもある。


「ピーピー、侵入者発見――警告、警告。これより先に――『ガンッ』。攻撃を確認、これより侵入者を排除します」


 力尽くで排除すると言ったパトロールロボのメインカメラがやられた。


 やったのは俺だが、これで一体は無力化でき――ませんでした!


 他の二体と一緒に、モノアイなカメラのレンズにアイアンダガーが突き刺さったまま両腕の魔導銃から黄色い光弾を連射してきやがる。


「三体で視覚情報を共有してるのか、別のセンサーも持ってるのか。だが精度は下がってる。カメラを潰したのはサクラ達がやれ!」

「わかった!」


 俺は一番奥にいるロボに向かって壁を蹴りながら接近する。


 後ろではルルエッタも駆け出す音もする。無傷なもう一体は予定通り彼女に任せよう。


「さて前に戦った時より武器の性能が悪いが、いけるか――『エンチャントサンダー』」


 キュルキュルッ


 ホイールを回転させながら向きを変えようとするパトロールロボの横から、バチバチと雷を纏ったパリィナイフを殴るように叩きつける。


 ――が多少怯むだけでダメージが通ってるようには見えない。


「イッテェ、やっぱり鉄製じゃ雑魚敵にしか通用しませんよねー!」


 向こうの機体の方が素材は良いらしい、勢いよく叩きつけた反動だけが左で二帰ってきた。


 雷の属性付与ならダメージを与えられると思ったが、装甲に穴でもあけないと効かないようだ。


 こりゃあ研究所のモンスター全種、弱点を狙って攻撃しないとまともにダメージを与えられそうにないな。


 ルルエッタが付いてきてくれたことに、内心感謝して俺は隙を見てこいつのメインカメラの破壊を試みる。


「武器貸してあげようか?」


 苦戦してる俺にルルエッタが話しかける。そっちを確かめる余裕がないのだが、もう戦いを終わらせたんだろ。


「無理そうなら、頼む。――ただ簡単に諦めるつもりはないぞ!」


 そう意気込むが、その気合はすぐに翻すことになった。


 目の前のロボの一部がパカリと開いて、そこからビームサーベルみたいな――おそらく魔法で出来た剣が飛び出してくる。


「アイエエエエ、ライトセーバー!? ライトセーバーナンデ!? いやマジでそんな浪漫武器がファウター側にあったのかよ」

「……随分余裕そうね、カオル。その武器なら二年前くらいに発見されてクラフトされてるわよ?」


 思いもしなかった浪漫武器だ。俺は後ろに仰け反って、巷ではマトリックス回避なんて呼ばれる方法で回避しながら、背後で観戦してるルルエッタの顔を見る。


 最後に敵を確認した場所にはロボだった残骸が転がってる。さすがに武器の差が大きいな。――それよりライトセーバーだ!


「マジ?」


 光剣で追撃しようとするロボから、体操のように体を回転させて距離を取った俺は縋るようにルルエッタを見つめる。


「ええ、私も一本持ってるから使ってみる? あとそれのアイテム名はライトセーバーじゃなくて、魔導剣よ」

「今は名前なんてどっちでもいいんだ、浪漫剣を使いたい!」

「――大学生にもなっておもちゃで目を輝かせないで頂戴よ」

「はよ、ライトセーバーはよ」

「はいはい」


 俺はルルエッタが投げ渡した、細い刀身の剣を受け取る。


「サンキュー! なるほど。刀身の魔法金属に過剰なマナで属性付加のスキルを使ってんのか。だがこれだと、刀身の金属疲労がやばいだろ。だからって魔法耐性の高い金属を使うと抵抗されて出力が落ちそうだな」

「……なんで一目見ただけで魔導剣の弱点がわかるのよ」

「元一流クラフトマンですから(キリッ」


 俺は赤い魔導剣とやらを軽く振り回す。残念ながら本家のような効果音は再現されてないか。だがこの熱量ならロボの装甲も焼き切れそうだ。


 俺は軽く赤熱した刀身を床に押し当てて、そう思った。


「さって、目の前には試し切りに丁度良さそうな相手もいるなっ」

「扱いの注意は要る?」

「ノーセンキューだ」


 黄色の魔導剣を前に突き出したまま、突進してくるロボ。


 俺はそれを横に回避するのと同時に、赤い魔導剣を装甲に宛がう。


 ――いける!


 装甲を溶かす魔導剣を見て、予測は確信へ至った。


 銀河系の自由と正義の守護者になった気分で俺はそのまま魔導剣を押し当てて、ロボを切断した。


 あっ、赤って暗黒面に落ちた方だったか……?

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