第十話 未来的古代遺跡
転移によって飛ばされた先は近未来的な施設。石材でなければ木材でもない、セメントのようにも見える未知の素材できた白が基調のSF物を思い浮かべるエントランスだ。
幻想世界と銘打ってる世界観とは真っ向から喧嘩を売ってるように感じるが、今の俺にはなんとなくその理由がわかる。
おそらく、ここはアウラ達を安置するため作られた場所なんだろう。
「ねえ、ここって『古代』遺跡なんだよね」
「滅亡した古代の方が文明が進んでた――なんて設定はよくあるだろ?」
俺に続いて転移陣から出てきたサクラ達が周囲を見て、突然のSFに目をパチクリさせる。
「そう……なのかな」
魔導照明とでもいいだろうか、電化製品みたいな明かりをサクラはじーっと見つめる。
「それより、これからの予定を話すぞ」
「「「はーい」」」
俺は違和感を感じてるサクラの思考を遮るように話を続ける。
初心者三人組は俺の下に集まり、ルルエッタは一人見た事の無いタイプの施設をじっくり見学している。
「ここは見ての通り近未来風の研究所ダンジョンだ。出現するモンスターはメカ系、魔導銃を装備してるから遠距離に気を付けるように――以上」
「はい!」
「なんだ、放火魔君」
「――爆弾魔に言われたくないんだけど!」
「どうせ、この世界に銃器はあるかどうかだろ。答えは一部のモンスターは持ってる、が本当に稀だ。それこそ、ここみたいな特殊な設定のダンジョンだけのな」
この世界でも矢弾の類は有限だ。
ダンジョンでドロップする矢筒のスキルに無限矢みたいなロストスキル――クラフトでもエンチャントできないスキル――でもなければ、モンスターだろうと弾薬が無くなれば逃げるか、殴り掛かってくるしかない。
なのですぐ弾切れする火薬銃を通常モンスターは使わない。使うのはマナを使う魔法式の銃、もちろん希少な魔導銃をほいほい持ってる敵がその辺に配置されてるわけがない。
「クラフトもできないの?」
「可能は可能だが現実的じゃないだろうな。辛うじてMP式のエネルギー弾を撃ちだすタイプが一部で愛用されてる――と思う」
そもそもプレイヤーが銃で遊びたいならガンナーズヘヴンでやれって話だ。
火薬式銃の運用が困難だとわかり、魔導銃的なモノが発見された時はめちゃくちゃ盛り上がった。――が、消費MPが火力と見合わないわ、専用スキルがないわでメインに使うプレイヤーは徐々にその数を減らすことになった、と記憶してる。
ただサブウェポンとしてインベントリに一丁は確保してるプレイヤーが当時は多かったな。
三年前の知識が今も通用するのかルルエッタに確認すると、今もそう変わらないのか彼女は頷いている。
「だそうだ。火薬式は所持重量の問題だったり、メンテナス、弾丸の供給がネックで流通してないのは今も変わってないだろ。ただアオイもサブウェポンとして一丁ぐらいインベントリに持っておくと役に立つぞ」
「そうなんですか?」
「ギミックを安全に処理したり、遠距離から牽制したり、使い方は色々だ」
幻想世界の銃事情を解説しているとルルエッタが「ごほんっ」と咳払いして、
「カオル、そろそろダンジョンの話に戻ったら?」
と、俺達に本題へ戻るよう促す。
俺もついつい脱線し過ぎたと思って頭を掻きながら、ダンジョンの話に戻ることにした。
「そうだったな。まあここに出るメカってのは警備ロボの事なんだが、ここは警備外に設定されていてセーフティーゾーンとして使える」
「ゲーム的ご都合主義ですね」
「アオイ君、野暮なことは心の中だけにするんだ。トイレ休憩も無しでいいのかい?」
「私は何も言ってません! さっきからモンスターがネタバレで姿を見せてるけど、何も見てません」
奥に続く廊下からチラッとこちらを見て奥に戻っていく。巡回タイプのロボットがさっきから不審な行動を取ってるが、セーフティーゾーンに入れないからである。
俺はインベントリから簡易テントを取り出し、その場に投げるとポンッと効果音を鳴らしてすぐ使用できる状態で設置される。
テントは設定されたプレイヤー以外は入れず通常の手段で破壊もできない、ログアウト中の無防備なプレイヤーを守る拠点アイテムなのだ。
リアル時間で一日しか設置できず、効果時間が切れると強制的にリスポン地点に戻される仕様になっている。
「よし、トイレ休憩にする。全員一度落ちて、リアル時間で――三〇分に再開だ」
「イエッサー」
妹も自分達用の大型テントを広げると真っ先にテントへと飛び込む。その後にシルフィ、アオイも俺に軽くおじぎしてテントに入っていく。
テントの中ではキャーキャー騒ぐ声がするが、中を確かめる愚行はしない。
「じー」
ルルエッタはそんな俺の顔をじっと見つめる。
「そんな熱い視線を向けてどうした」
「別に、私達がログアウトしてる間に先へ進んだりしない?」
そう聞かれた俺は肩をすくめる。
このダンジョンの攻略には最低でも数時間はかかるだろう。とてもじゃないが、こいつらが戻ってきて追いつかれる前に最奥へたどり着くのは無理だ。
「それは深読みのしすぎだ。俺だけ進んだところで、どうせどこかで追いつかれる」
「ならいいけど、じゃあまた後で」
「ああ、じゃあな」
俺は一つ増えた騒音にもう一度肩をすくめてテントに入った。
|⊥・)チラッ




