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第九話 大炎上ファーミング

一日で同時に二人以上から評価もらうとか無理じゃね? と最近思い始めました。

 なんということをしてくれやがったのでしょう。退廃的で、どこか神秘的――そんな自然と人工物の調和は、


 『炎に呑まれて、轟々と燃えている』


 火災で上がる黒煙は炎の勢いに比例して空に広がる。こんな大事になっているのだ、周辺住民アンデッドの皆さんが剣や杖を持ってカタカタ怒ってる。


「なあ、妹よ。なんでも燃やそうとするのは放火魔のそれだとわかってるか?」

「お兄ちゃんもよく言ってるじゃん、『汚物は消毒だ』って」


 『リターンハンド』のクールタイムが終わったのを確認して、俺はダガーを先頭にいるスケルトンにぶつけて転がす。


 仲間意識というモノは無いらしい。後続は気にせず踏んづけてるが、コミケ並みに密集してるスケルトンは交通事故を起こす。


 ゾンビは足が遅いから手出さずとも問題ないしとして……、スケルトンはこうして足止めしておかないとアオイが追い付かれちまう。


 タンクビルドと言ってもプレートアーマーではなく、アニメ風な騎士鎧だ。ウルフみたいなAGIの高い魔物でも出てこない限り、追いつかれることは無いだろう。


 もしそうなった時はルルエッタか妹を囮にすればいいか。もっとも優先度で言えば妹からだ、そもそも――こいつが犯人だからな。


「世紀末ヒャッハー式攻略法が最適解な場合もある。だが物事には限度ってもんがあんだろ!」

「カオルがそれを言う権利は無いと思うけど?」

「シャラップ! 俺は計算して破壊してるからいいんだよ。こいつみたいに考え無しじゃねえ」


 俺が炎を使うのは控えろと何度も注意しておいたのに、妹はゾンビにタッチされたショックで半狂乱にファイアボールをばら撒きやがった。


 そのせいで周辺の廃材に燃え移って、この有り様だ。ここ数日は雨が降ってなかったらしく、よく燃える燃える。


 いやー、ナツカシイデスネ。


『大炎上ファーミング』、


 廃都市を大人数で炎上させ、集まってくるアンデッドもついでに焼き払う。残るのは廃都市ではなく灰都市と不燃性の魔石だけ。


 そう――これは『とあるプレイヤー』が考案した、最高率の魔石集め攻略法だ。


 いやー、ゲーマーってのはろくでもねえことを考えやがる。


 しばらくしたら勝手に修復されるからって、都市ひとつ焼く奴がいるかよ。


「お兄さん……」

「大丈夫か、アオイちゃん?」

「お化けより人間が怖い――私、本当に怖いモノは人間なんだって悟りました」


 波阿弥陀仏と唱えながら、ハイライトの消えた目でアオイは悟りを開いていた。


 妹にFFされかけるわ、ゾンビと一番近くで立ち回らないといけないわ――この子は不憫属性でも持ってんじゃねえか?


「お、おう? ブッダの悟ったモノがそんな現実的な教えなら俺も仏教徒になってもいいが――っとあったぞ。あれが目的地の古代遺跡だ」

「何もないじゃない!?」

「まてまて、入るには簡単な操作がいるんだよ」


 なぜか都市の中心部にある古代遺跡。ここは俺がバグメイカーと呼ばれる所以になった装備の核となるあいつらを手に入れた場所だ。


 入るにはたしか、景観用のオブジェクトに偽装された像の――ここの出っ張りを捻ると中から転移システムが現れるはず。


「ルルエッタ! 転移の時間を稼ぐ、アレ使えるか?」


 道中で拾った魔石を見せてだけで、ルルエッタも俺が何をやるつもりなのか理解して頷いた。


「私を誰だと思ってるの? クラフトマンのアバターじゃなくても暴発ぐらいはさせられるわ。あんたこそ、ブランクがあんのにその低レベルなアバターでやれるの?」

「はっ、言うようになったじゃねえか後輩。右半分任せるぞ」

「りょーかい」


 続きまして、こちらも『とあるクラフトマン』が提唱した魔石の使用方法。


 物作りにおいて魔石は必ず使う。何せ装備自体の性能を上げたり、スキルを付加するのにも必要不可欠な触媒だ。


 そんな魔石には扱いを間違った時に起こるリスクがある。


 ひとつはただ割れて、そこから魔力が抜けてしまう。もうひとつが……『爆発だ』。


 システム的には失敗演出なんだろう。もしかしたらエネルギーという要素をシミュレーションした結果、爆発という答えが演算されただけなのかもしれない。その辺りの開発事情は置いておこう。


 とにかく、魔石は扱いを間違えると爆発するのだ。しかも魔石には同じ属性の物は共鳴する特性がある。


 さてこれ以上の説明が必要かい?


「お兄ちゃんなにするのっ」

「爆弾で連中の足止めをする。お前らは像の後ろで衝撃に備えてろ」

「「「へっ?」」」


 即席爆弾の材料は道中で大量に拾ってきた、しかも闇属性ばかり。これに魔力を流してぶん投げる! ただそれだけだ!


「爆発は芸術だ――こいつはしょっぱいボヤと一味違うぜ?」

「ええ、本家と直伝のハック爆弾――たくさん召し上がりなさい!」


 魔石を割らずに、しかも爆発のタイミングをコントロールする。一部のクラフトマンにしか扱えない、自爆のリスク承知の荒業を完璧に決めた俺とルルエッタ。


 出来上がった十個近い即席爆弾をすぐさまアンデットの群れの中に放り込み、すぐ避難を始める。


 ぼーっと見てた妹たちを強引にオブジェクトの背後に引っ張り込んだ直後、地面を震わせるほどの爆発を起こした。


 『バッドステータス:失聴』


 俺の視界に異常を示すアイコンが表示されている。だからサクラ達が錦鯉みたいに口をパクパクさせても何も伝わらない。


 ちなみにこれほどの衝撃だったにも関わらず、爆発のダメージを受けなかったのはオブジェクトの破壊不可属性を盾にしたからだ。


「戦利品の回収は!?」

「諦めろ――今の爆発を聞いて、おかわりが来るぞ」

「もったいないよお」

「知るか、俺の目的は魔石じゃねえんだよ」


 俺は目の前に転がる魔石に泣き崩れる妹を無視して、操作盤を操作しダンジョンへの入り口を作った。

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