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最終話(前編) 消えゆく異世界で愛を叫ぶ

魔王の宮殿は予想よりも小さいものだった。

セレブのお屋敷くらいの広さだ。


小高い丘の上にあり周りの景色が一望できる。いい眺めだ。

僕は建物の前で待つことにした。

さすがの僕もここまでの旅で自覚している。

魔王と彼女の最終決戦において僕は全くの空気だということを。

そして学んでもいる、大切な局面で僕が人質になったりしたら時間のロスになる。


作戦はこうだ。

もう世界の消滅まで時間ない。先ずは力づくで魔王がダーククリスタルの力を発動させるのを止める。

その後、説得できたらする。できなそうだけど。


彼女が宮殿の中にひとりで入っていく。

きっと彼女なら大丈夫。ここまでの旅で彼女は余裕で無敵だったから。


僕には彼女が必要だけど

彼女には僕は必要ないのかも知れない。


僕は完全に自信をなくしていた。壁にもたれボーっと景色を眺めていた。



-空が白い。

向こうの空が白い。真っ白だ。

頭上の空は青い。


ちがう、白いのは空だけじゃない遠くの大地が崩れ落ちてどんどん白くなっていく。

消えているんだ。

世界の消滅が始まっている!

あっという間にすぐそこの地面がひび割れて崩れでいく。


負けた!?

まさか彼女が負けたのか?

僕は魔王の宮殿の扉を開け奥へと走った。


宮殿ももう崩れ始めている。

彼女は?


魔王の間に辿りつく。

魔王はひとりで部下もいない。

手には黒い水晶のついた杖がある。

あれがダーククリスタルにちがいない、

禍々しい光を放っている。

すでに発動しているようだ。


彼女はどこだ?

魔王の傍に大きな球体がある

よく見るとその中に彼女が閉じ込められいる。

目を閉じて動いていない。

無事なのだろうか?


魔王はこちらを見ると

「もう一人いたのか、でももう遅い。世界の消滅は止められない」

魔王は勝ち誇った顔で自慢げに語り出す

「封印魔法。魔王家に代々つたわる究極魔法。これでコイツを封印した。一度しか使えぬがこの世界で唯一の脅威であったからな」


完全に一枚上手だった。

魔王は準備していた。

激しく後悔したこんなことなら2人で乗り込んで僕が囮にでもなればよかった。


僕は走った。

彼女の元へ。

彼女を助けたい、例え無理だとしても

いや無理だけど、せめて彼女の側で一緒に消えたい!


前方の床が崩れ落ちて隙間ができる、

1メートルちょっとの谷間ができてしまう

今までの僕だったらきっと踏み止まっただろう。

僕は思いっきり跳んだ。


きっとこれが勇気なのだろう。

僕は土壇場までこれがなかった。今までにこうやって踏み出す勇気があれば、僕の人生も変わっていただろうか。


僕のなけなしの勇気をのせた彼女へのジャンプは届くことなく、僕は大きな亀裂の中に落ちていく。



落ちていく。

やはり、そんなもんだ。


相当な高さを落下している、これは助からない。

このまま地面に打ち付けられて。


落下が止まった。

地面が消滅したのだ。

もはやダーククリスタルを中心として僅かな床や壁の大きな破片以外は真っ白い空間とになっている。


重力も無くなった。身体が浮かぶ。

いや大きな瓦礫に吸い寄せられるから引力は残っている。

僕は残った世界のカケラを蹴りながら彼女を目指した。

諦めない。僕は諦めない。


みつけた。僅かに残った床に魔王と彼女の入った球体が!

僕はその球体にしがみついた。

やった!


中で彼女は目を閉じている。

僕は思いっきり叫んだ。

今まで言えなかった想いを



魔王がコッチ見てる。

彼女に声が届いたかは定かじゃないが、

間違いなく魔王には告白を聞かれた。


世界の終わりは微妙な空気に包まれた。


真っ白になっていく。

僕も彼女もそして魔王も



ふと、思い出す

迫り来るトラック

前の世界の記憶だ。

彼女の顔。







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