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第二話 無能な僕と無敵の彼女

-この異世界で2人だけ

そう思うだけで僕はなんだか満たされる。


ゴブリンの村に兵士達が来ないよう国王にお願いするので、同行して欲しいと君は言う。

もちろん僕はゴブリンの村を後にした。


僕がゴブリンの村に降ってきてチヤホヤされたのと同じ頃、彼女も王国に降ってきて国王に保護され、お世話になっているそうだ。


同じ!全く僕たち境遇同じ!なんだろうこの距離が縮まる感じ。

僕と彼女は地元が同じ。地元というかこの世界に来る前の世界が同じ。

僕は浮かれて足取りも軽い。


違う!全然違った!森を抜けて王国がみえると想像を上回る発展した大都市に腰を抜かした。

ゴブリン村と全然違う。

沢山の家や商店が建ち並び沢山の人々行き交う大都会だ。

発展した城下町の中心部には大きな城が見える。

僕と彼女は境遇は同じだが生活レベルが全然違うようだ。


街で気になるのは武装した兵士達による物々しい警備で平和ではないのかなと感じたこと

それと、看板などの文字は見たことない文字で読めない。ゴブリン達には文字文化がなかったので気がつかなかったがこの世界は言語は日本語なのに文字はオリジナルなのだ。

「変な設定だな」と僕がつぶやくと彼女も「変でしょ」と答える。なんか幸せ。


今日は遅いので王様に会うのは明日にして城下町の宿屋に泊まることになった。

もちろん別々の部屋だ。

「この宿屋は一階が酒場になっているの。もう少しお話ししない?」と誘われて、無一文で彼女におごってもらうのが情けないとは思いつつ二つ返事で承諾した。

この後、僕はこの世界の現実を知ることになる。



-これはデートだ。

道中もデートのようだったが、テーブルをはさんで飲み物を飲みながらゆったりトークをする、これは紛れもないデートだ。


欲を言えば酒場ではなくカフェとかがよかった、未成年なのでお酒は飲めないし。


宿屋一階の酒場はムードのカケラもない冒険者酒場だった。屈強な男たちが大声で荒々しく騒ぐ、よく言えば活気のあふれる空気感だ。

僕たちは隅っこのテーブルに座る。


僕らの会話はこんな感じ

彼女「この世界の人達どう思う?」

僕「この世界に来て人間にあったのが今日が初めてだからよくわからないな」

彼女「ワタシ馴染めてないの、考え方が違うというか」

僕「異文化どころか異世界だから、ある程度はこちらからこの世界のルールに合わせてあげたほうがいいと思う」

なんかいい感じ、相談のってる感じ、飲み物オーダーしたいけどメニュー読めない。


「よかった、価値観の同じ人に出会えて・・」

かなり打ち解けたムードになったあたり、彼女が一歩踏み込んだ感じで

「ねぇ、この世界に来てから体に異変とかない?」


デートムードのトークはここまで

僕は屈強な男に胸ぐらあたり捕まれヒョイと持ち上がってポイって投げられた

ガッシャーン!別の客席のテーブルに激突して大きな音がなる


-いきなりの出来事で理解が追いつかない

いったい何が、脚が痛てぇ

ぶつけたのであろう脚が痛くて立ち上がれない。


いつのまにか、15人から20人くらいの男達が剣を構えて彼女を取り囲んでいる。

酔っぱらいに絡まれたとかにしては度を越した状況だ。


体格のいい男

「お前ら、今日魔物に肩入れしたらしいな!」

察するにゴブリンの村の一件だ。あの時の兵士の誰かから聞いたのだろう。

話せばわかってくれ・・・なかったな昼間は。

膝が痛みで動かない、腰も抜けてるようでやはり立てない。


いっぽう彼女は臆することなく

「明日、国王にお話しします」


男「国王のお気に入りだからって、調子に乗るな!

国王には明日オレから報告する!

お前が魔物の仲間の化け物だったから討伐しましたってなぁ!」

容赦なく彼女に剣を振り下ろす。


よけてぇぇ!そう叫びたいが声にならかい。


彼女は避けるどころか、男に一歩近づいて剣を振り下ろす腕を片手でつかんで止めて、そのままグイッと捻る。

大男の体はグルンと回って床に落ちる。


なになに合気道かな?


彼女は切りかかった男の剣を奪い、片手で前に真っ直ぐ突き出すとこう言った。

「これが、あなた達のルールならばワタシもあわせます」


この世界のルールに合わせたほうがいいと言ったのは僕だけど、もっと平和的な意味であって・・。


いっせいに男達が彼女に斬りかかる。

彼女は華麗な剣捌きで次々と相手の剣を弾き飛ばし

足払いで倒していく


圧倒的だ。彼女はひとりで武装した男たちを倒してしまった。

しかも大怪我しないように手加減も加えて。


この状況に驚く僕に彼女が視線を向ける

あぶない!彼女に向けて大きな炎が噴き出す。

魔法だ。まだ男達の仲間がいたのだ。

火事になったら宿屋の宿泊客も含めて大惨事だ。


彼女がまた日本語ではない言葉で詠唱すると、大量の水が降り注ぎ。一瞬で火が消えた。


強すぎる、彼女強すぎる


僕も試しに昼間の回復魔法を試しに自分の脚に向かって唱えてみるが、一向に痛い。

みかねた彼女が

「ちょっと発音が違うかな〜」と正しい魔法で治してくれた。



彼女はこの世界の暴力的なところが嫌いと言った。

僕は元いた世界も平和だったとはいえないが、この世界には魔法がある、

言葉を唱えるだけで炎や水が生成できるなら、エネルギーや資源を奪い合う必要がないから、この世界はもっと平和的にできるだろうと

カッコつけて柄にもなく大きなことを言ってみる。


僕がくしゃみをすると彼女は今日はもう寝ようと言う。

実は魔法のときの水でずぶ濡れだった。

それぞれの部屋で眠り、明日は2人で城に行って王様に話しをしよう。



-2人の距離は縮まったのに、僕は複雑だった。

実は火が消えた後になんとなく剣を拾おうとしたが、完全な金属の塊で重く僕には両手でも持ち上げることができなかった。

さっきまで彼女が片手で軽々と振っていた同じ剣が。


彼女がこの世界で特別に強いのは間違いない。

いっぽうで僕はこの世界で特別に弱いのではないかとの疑念が頭から離れなかった。

元の世界でも弱かったけど。



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