怪しい勧誘はお断りします。
俺は今事務所でリリーさんと向かい合って座っている。
「なあリリーさん、うちのギルドは人数15人の弱小ギルド、そうだよな?」
「ええ、そのとおりですわマスター」
「弱小ギルドってのは、探し物の依頼を受けたり、浮気調査をしたり、猫を探したりって感じの依頼が多いと思うんだ」
「依頼は色々ありますからね」
「なのに!!何でうちに来た依頼が!大規模盗賊団の殲滅なんだ!おかしいだろ!!」
「・・・・・・マスター、確かにうちは弱小ギルドです、だからこそ来た依頼は頑張ってこなさねば成らないのではないのでしょうか!」
「いやいや論点はそうじゃなくて!何で弱小ギルドに高難易度の依頼が来るかってことだ!」
「・・・・・・で?本音は?」
「やりたくない」
「最悪ですねマスター」
「だいたい!世の中のギルマスは椅子に座ってふんぞり返ってるもんだろう!なんでギルマス自らが盗賊退治なんてしなくちゃならんのだ!!」
「マスター、世の中でまじめに働いているギルマスに謝りましょうか」
「それにここしばらく難易度の高い依頼ばっかりだったから、もう借金返済は終わったんだろ?」
「・・・・・・・マスター、【オーテック】っていくらするか知ってますか?」
「・・・・・・まさか・・・・」
「はい、借金ですね」
ああああ!俺もテリスの事言えねぇ!【オーテック】は俺が欲しいって言ったんだ!!
うなだれる俺を見ながら話を進めるリリーさん。
「話は最後まで聞いてくださいマスター、この依頼は私は指揮して10人ほどで当たります、マスターにはこんな依頼が入りましたと報告しただけです」
なに!俺がやらなくていいのか!
「もういっそ、リリーさんがギルマスでいいんじゃない?」
そうすれば俺働かないで済むんじゃないのだろうか?
「ならばマスターにもっと頑張って・・・」
「ギルマスっていいよね!!」
ダメな子を見る目で見られても気にしない!
「で依頼の件ですが、先ほども言ったように私が指揮を執ります、マスターはここしばらく大きな依頼をこなしてもらったのでお休みですね」
休んでいんだ!!やったぜ!!・・・・つーか何で俺のスケジュールをリリーさんが決めてるんだろう?
「休みはいりませんか?」
ニコリと微笑むリリーさん、何か俺の考えが読まれてる?やべえ!!
「とっても嬉しいです!ありがとう!」
「それは良かったです、ごゆっくりどうぞ」
ニコリと微笑み部屋を出ていくリリーさんを見送り、三階に戻り出かける用意をする。
ここにいたらこき使われる未来しか見えん!!とりあえず行きつけの喫茶店に退避しよう!
急いでギルドを出て、歩いて20分ほどで行きつけ喫茶店に入る。
「マスターいつものよろしく」
いつも座ってる席に座りホット一息ついて今日何をするかを考える。
いきなり休みになったから何をしようかなー?つーかずっと休んでいたい、なんでこんな生活になったんだろう?人生って思いどうりにならんよなー。
などと遠い目をしながら考えてると、マスターがコーヒーを持ってきてくれた。
「お待たせしました、気まぐれコーヒーです」
ここの店が気に入ってるのはマスターの『気まぐれコーヒー』が気に入っているからだ。
マスターのその時の気分でブレンドが変わり様々な風味を楽しめる、同じ風味はまずないのでかなり楽しめるのだ。
「ありがとう、マスター」
「この時間に来るのは珍しいですね?」
「いきなり休みになったんだ」
「なるほど、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
マスターが奥に歩いて行くのを見送りコーヒーカップに手を伸ばす。
「・・・・ああ・・・・うめえぇ・・・・」
今日のはかなりコクが深い・・・これ好きかも。
目をつぶりコーヒーを一口、一口味わうように飲む、ああ・・・・幸せの時間。
「ご一緒してもいいかしら?」
そんな幸せは長くは続かなかった、銀髪を腰まで伸ばしたモデル並みの体型をした20代の女性が俺を見下ろしながら微笑んでいる。
その後ろに控えている女性も美人なのだが顔が笑っていない、こちらを警戒しているのが丸判りだ。
「・・・・・席は他にもあるぜ?」
「ここがいいんですよ、ルクスさん」
ニコリと微笑む美人さん、普段なら美人さんに言い寄られると嬉しいものだが今回はハッキリ言って最悪な気分だ。
「なんで裏社会のトップの一人が俺なんかに会いに来る?」
この美人、裏の組織トップ3のうちの一つ【シルビアーナ】の長、シルビア・マーカスだ、姿絵でしか見た事は無いけど。
「貴方を我が組織にスカウトしに来ました」
「断る」
即断だ!なんで裏社会なんぞに行かなければならんのだ!!
「まあ冗談はこれくらいにして」
冗談かよ!!顔が本気だっただろうが!!
裏世界のトップは中々のお茶目さんらしい。
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