風になる
魔物の討伐に行くために一階に降りてバーカウンターに座りテリスに向かい合う。
「テリス、聞いたぞこんにゃろう!!」
「マスター何の話?」
「このバーの事だ!凝り過ぎて借金までしやがって」
「あれ?知らなかったんですか?いやぁー!この冷蔵庫がかなり高かったんですよ!後お酒も揃えるのにかなりかかっちゃいました!」
「まったくしかたねぇな!後でまた飲ませろよ!・・・でキメラの情報が欲しい」
テリスはうちのギルドで情報の専門家なのだ、何故バーテンダーを兼任しているかと前に聞いたら『酒場に情報が集まるのは自然の法則です』と訳の分からないことを言っていた、ただ飲みたいだけだろう!と思ったのは内緒だ!
「あの依頼のキメラはレスト方面に2時間行ったところで確認された個体ですね、サイズは三メートル、個体能力は不明です」
「あいよ、じゃ行ってくる」
「裏に【オーテック】が届いてますから使ってください、これがカギです」
「届いたんだ?助かる」
俺は建物を出て裏手に回りギルドが使っている物置に入る。
物置と言っても20畳くらいの広さがあり様々なものが置いてあり俺の求める物も見つけることが出来た。
それは二メートルくらいの乗り物でで前に一つ、後ろに二つの車輪がついていてハンドルを握り魔力を流すことによって進むことが出来る魔道具【オーテック】である。
この乗り物は便利ではあるが魔力を使うため長距離の移動には向かず、あまり使われてはいない。
【オーテック】にまたがりカギを差し込こんでハンドルを握って軽く魔力を流す。
ドルン!!ドルン!!
心地よいエンジン音を奏でながら体を震わせるの乗り心地ににやけながらゆっくり進みだし街中を進んでいく、さすがに街中で飛ばすと警備隊に怒られるからな。
「気をつけてな」
町を出るところで警備をしているモアに見送られ、街を出たらフルスロットルにする。
「うっひょー!!気持ちいい!!」
久々に乗る【オーテック】に最高の気分に酔いしれながら目的地まで走る。
一時間くらい走ったところで目的地に着く、さすが【オーテック】二時間かかる所が一時間で着いた!その速さに惚れ惚れするね!
「さて、どこにいるかな」
周りを見て右の方に森が見える・・・・あっちかな?【オーテック】のカギを抜き武器を取りだして森の方に向かい歩きだす。
森の中をしばらく歩いていると、ふと視線を感じそちらの方に振り向く。
木々の生い茂る中・・・・木々が作る闇の中にそれはいた・・・・・・影の中に30代の男の顔があったのだ。
「・・・・・おいおいこっちの合成獣かよ」
俺は魔物のキメラだと思ってたよ!まさか人の手によって生み出された合成獣の方か!!しかも見るからにろくでもない人間が作ったと分かる外見だ。
顔は男の顔、体は熊、背中にも手がありその手は人・・・・・・ろくでもねぇな。
「グラァァァァ!!」
しかも理性は無しと来たもんだ・・・・・ため息しかでねぇ。
武器を持ったまま走り出してキメラに向かうと俺を獲物として認めたのかクマの手を振り下ろす。
それをバックステップで躱すと今度は横凪で追撃してくるが、それをダッキングで躱して起きる反動を利用して下から上に切るが固い!うっすらとしか切れてない!
「グラァァ!!」
痛みはあるらしい、ちょっと安心した!合成獣の中には痛覚を取り除いている奴もいるからな、かなりいい情報だ!!
「色々なことが分かったんで終わらせる、今楽にしてやるよ」
「グラァァァァ」
突っ込んで来るキメラに向かい踏み込み・・・・・・・俺の剣で・・・・・・・脳天を貫いた。
体は固いが頭はそうじゃない、なので下顎から脳天の剣を突き刺して命を刈り取った。
そして倒れ、動かなくなったキメラを【アイテムボックス】に入れて森を出る。
「はぁ・・・・だから嫌なんだよ」
ため息をつきながら【オーテック】にまたがりカギを差し込み、魔力を流して走り始める。
嫌なことを忘れるためにスピードをどんどん上げていき風になったように走りまくって気分が落ち着いたら商業都市フィールへと戻り街に入って、ゆっくりギルドの倉庫に戻り、【オーテック】を降りてバーに向かう。
「いらっしゃいってマスターか、おかえりなさい」
「テリス、調べはついてるんだろう?」
俺はテリスを見つめて問いかける。
「・・・・・はい」
「ならラルクの狸おやじに情報を流してやれ」
「ですが」
「こういう時にこそ狸が働く時だ」
「・・・・分かりました、情報を流しておきます」
「済まんが頼むよ」
きちんと報いは受けるべきだ。
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