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死せる幻想世界 絶望を斬るナナシ  作者: chiyo
ACT-00 転生する神話ー"Another day comes to you"ー
3/34

#2

「うみゃ~うみゃみゃっ!」


 ”霊降機リフト”を降りてから数十分後。


 やはり、"転生の回廊"の探索は難航を極めた。


 上層とは比べものにならぬ程、この階層に巣食う魔物は多く、涙目のナルムが振り回す精霊式棍棒スピリット・クラブが、次々と足元に群がる虫型のモンスターを蹴散らしていた。


「うみゃらぁ……ッ‼」


 ヤケクソの叫びと渾身の乱撃。


 ナルムが肉球で柄のスイッチを押すと同時に、棍棒の先端に設えられたパイプから、充填チャージされた"風の精(シルフ)"の力が噴き出し、未熟なナムルの筋力を補助。増幅された威力でモンスターの頭骨を叩き潰していた。


「いいぞっ! 上手いぞ、ナルム……! 大丈夫、そいつらは草むらのスライムより弱い!」 


 ナルムを励ましながら、ユウは機銃弓オート・ボウのチャンバーを回し、虎視眈々と自分達を狙う大型のモンスター、蟻獅子ミルメコレオと対峙する。


 選択した属性エレメントは『炎』。獅子の上半身と蟻の下半身を持つ怪物は、その矢に注意を払いながらも、凶暴に過ぎる鋭利な爪と牙を躍動させる好機を、醜悪な唸り声とともにうかがっていた。


 そして、


(いまだ……!)


 躍動の気配を察知し、素早く回避したユウの指が引き金を弾き、機銃弓オート・ボウから五本の矢を射出!


 三発が命中し、矢に刻まれた火霊球ファイヤーボールの呪文が、ミルメコレオの巨体を爆裂させる。


「くっ、うっ……」

 

 爆裂したミルメコレオの体から蟻酸が降り注ぎ、かわしきれなかったユウの脚はわずかにダメージを負う。ユウは機銃弓オート・ボウの回転式チャンバーを開き、矢を再装填リロードすると、虫型のモンスターを倒し尽くし、へたり込んだナムルのところへ向かう。


「うみゃあ~、何が双美人コスモスの加護だよぉ……! めっちゃ魔物出るじゃんかぁ!」


 ナルムは赤くなった目をゴシゴシとこすり、”うみゃ~”と気の抜けた声で鳴く。


 ねぎらうように、ユウが頭をくしゃくしゃと撫でると、ふてくされていたナルムは照れくさそうに頬を緩めた。


「あ、ユウ……! 足……!」

「平気だよ、治癒の矢も持ってきてあるから」


 ユウが足を引きずっている事に気付き、あわあわと慌てるナルムに微笑むと、ユウは腰の矢入れから取り出した一本の矢を宙にかざし、矢に刻まれた回復呪文ヒールの効果を発動させる。


 ユウの酸に焼かれた脚も、ナルムの全身の擦り傷も、あっという間に癒え、窮地を逃れた二人は安堵の息を腹腔から吐き出していた。


「でも、本当だったんだな。”転生の回廊”が魔物の巣窟になってるって――」


 本来、この場所は勇者足る”転生者”が、この世界に命を芽生かせ、その命を器たる肉体に繋ぐ、神聖なる場所だった。


 少なくとも、いま自分達が倒したような、低クラスの魔物には近寄ることすら出来ない場所だった。

 

 だけど、アレが出現した事で世界は均衡バランスを崩し、神聖なる奇跡・加護の類は、徐々にこの幻想世界ラブーツァから消えつつあった。


 神秘や加護だけではない。


 いまや稀少な存在となった魔導師が作った、ユウが持つ機銃弓(オート・ボウ)と矢のような"道具"を利用する事が、魔術を行使する"最もポピュラーな手段"となって久しい。


 ――嘆かわしいことに、幻想世界から、次第に幻想が失われつつあった。


「うみゃ~ここ数年、この回廊から転生者様は出てねぇって話だし、本当に双美人コスモスの加護が消えちまってるんじゃねぇかなぁ……」

「……かもしれない。だけど」


 ”転生者”の来訪を告げる村の”降竜笛こうりゅうてき”は、高らかにその音を鳴らした。


 此処に”転生者”が来るのは間違いない。


「道は険しい。だけど、迎えに行こう。アレに対抗出来るのは、悔しいけど”転生者”様だけだ――」

「うみゃ!」


 改めて決意を固めた、ユウとナルムは、靴底で石畳を鳴らしながら階層の最奥へと向かう。


 彼等の希望である”転生者”が、この幻想世界ラブーツァへと誘われる聖域――双美人コスモスの祭祀場へと。

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