違う世界 2
街に入ると、ローブを纏った人が多く闊歩していた。
まずは食事と水を摂りたい。看板などをみると文字でなく絵で描かれているのが多く何となくわかる。
ふと声を掛けられ振り向くと、体格のいい男たちが3人立っていた。
位置取り的に真ん中の真紅ローブの男がリーダー格だろう。
「外の世界からやってきたんですね。」
答えるべきか思案していると、相手が柔和な笑顔で。
「大丈夫です。少なくともアナタに危害は加えませんので、お話だけでもどうですか。立ち話もなんですし、どこか腰を下ろして。」
ぐぅぅー。
漫画のようにタイミングよく俺のお腹がなる。
赤面したのか、体温がぐっと上がる。
「せっかくなら、お食事にしますか。」
右も左も判らない状態なので、出たとこ勝負で頷く。
けっして食べ物に釣られたわけではない。そう自分に言い聞かせる。
最初は従事している宿舎に招かれたが、抵抗のポージングで飲食店に移動することに決めた。
移動中、国名を聞くとヴェルベンという聞いたことのない国名で参考にならなかった。
街の名前はユーゲリック。今は主なき国だが安定し、そこそこに豊らしい。
リーダー格の男はゲーベン。双子のような男たちはヴァイスとメロニアという名前らしいが見分けがつかない。
お店に着き、適当に注文され食事が運ばれてきた。
ジャガイモやソーセージとコンソメスープ。幸いにも米があった。
飲み物は衛生上、水は飲めないらしくワインが運ばれてきた。
薄味だが、素朴で腹も膨れる満足度の高い料理だった。
ゲーベンの話をようやくするとこの街は過去に魔女の力で結界を張ってもらい囲まれており、普通の人達には見えも触れもしない。
よそ者で魔女の素質のある人間だけ結界が開く。
というありきたりな設定に町人は魔女の力が無くても血の認証とかで出入りは自由という都合のいい設定だった。
魔女の力量を知るには城にある【器】に血液を垂らすのが一番早いらしい。
街の平穏を守るにも定期的に強い魔女の血が必要で、外から来た人間にも城に通して補充しているというのが彼らの言い分だ。
彼らの話を鵜呑みにするわけではないが、筋も通っているし頼る場所もないし生き残るには藁にもすがりたい。
俺はゲーベン達と城に向かった。