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特定不審死者Tがくれたもの  作者: 扉野ギロ
あるかないか
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第十八話 「あるかないか その三」

 なるほど、と自分でも意外なほど簡単に清子は善の言うことを飲み込めた。

 

「その人には視えているわけだから、写真にも写っていたし、おかしいとも思わなかった。そういうことですね」

「そうです」

「じゃあ、木与木多さんが透視の間は視えていたというのは……?」


「それは、透視が超次元の力だからでしょうね。絞り込みのための情報として見せたのはオークションサイトの画面で、そこの画像はすでに削除された状態だった。

 木与木多さんが見たのは、だからたぶんあの画像を開いた奴の画面かもしれない。理屈じゃ視えないはずだが、それが視えていたのは木与木多さんの透視能力が過去のリアルタイムを体験するからだと考えられませんか?」


 なるほど。

 と二度目に呟くのと同時、清子はひらめきのような感覚で一つの事象を思いついた。


「それって、爪切りが突然見つからなくなる時に似てますね……」 


 清子が言うと、善はあのニヤついた顔で「かもしれない」と頷いた。


 何度見ても不気味な顔だが、そろそろ清子も慣れてきた。

 思わず、くす、と吹き出すと、善は不意に眉をひそめる。


「なにか?」

「いえ、なんでもありません」


 咳払いで笑みを隠し、思考を元に戻そうとすると。

 清子は、またひらめいた。


 それは、どうして雅があの石を買おうとしたのか、ということだ。


 胡散臭い商品名に、高額な値段。

 普通なら怪しんで買わないようなものを雅が買ったのは、あそこに石が写っていなかったからかもしれない。


 それを詐欺と考えるか、おかしな物と考えるのか。

 雅は後者だった可能性が高い。

 

 清子が思い返す息子との時間は、小学校高学年の頃。


 この頃にはもう随分静かな子になっていた雅は、いつも漫画本を読んでいた。

 ガチャガチャのゴム人形を集めるのが好きで、スーパーなんかでいつもそこに立ち止まる。

 一つ二百円のそれをやらせてあげるのは、たまにだった。

 

 普段はカプセルの中の人形を取り出すと一人で眺めていたが。

 ある日、ガチャガチャから出てきたものを自慢されたことがある。


 雅はそれを、シークレットだ、と言っていた。

 相当嬉しかったのだろう。雅がそれを机の上に飾っていて、何度か他の人形と戦わせて遊んでいるのを見ている。


 しかしまたある日、それがどこかへいってしまった。


 最初は誰にも相談せず一人で探していたようだが。少しして、どこかで見なかったか、と訊かれた。

 当然知らなくて、一応一緒に部屋を探したものの、それでも見つからなかった。


 あの時の雅の落ち込みようは、見ていて胸が痛くなるほどで。だからもう一度ガチャガチャをやりに行こうかと提案したが、もういい、と諦めたようにみえた。

 それが気の毒で、何度かガチャガチャをやらせようとしたが、雅は二度とやろうとはしなかった。

 

 それでどうしてガチャガチャをしないのか訊くと。

 雅は失くなった人形を、つくも神になるんだ、と話していた。


 道具に足が生えてどこかに行ってしまう。

 そんな妖怪が昔話に出てくるのを知っていた。


 それから雅は、時折誰もいない自分の部屋をこっそり覗くようにしたり。ほとんど使わないビデオカメラが雅の部屋にあったのも、そういうことだったのかもしれない。


 雅は、いわゆる怪異というものを信じていたのだ。


 そう考えると、大人になった雅が異世界転生の小説を書いていたことにも合点がいく。

 そもそもそういう性格だったのだろう。


 だから、写真に写らない石に興味を示し、本物だと考えた可能性はある。

 日記にある『憧れていた』という一言もまた、そういう性格からくる願望に違いない。


 ずっと、何年も雅はそうだったのだ。

 今になって気づき、清子は下唇を噛んだ。


 気づいたからといって止めることはできなかったかもしれない。

 しかしそれでも、何もかもわけもわからずにただ泣くよりはよっぽど良かった。

 

 自分のための涙。

 清子は、美杏が言わんとしたことがわかったような気がした。  

 雅のことを何も知らないと思いながら、なぜ泣くのか。

 悲しいという気持ちに嘘はないが、それは雅を想ってのことではなかった。

 

 雅が死んでしまって悲しい。

 それは、雅が自分にとって大事な人だったからだ。

 月次に、失って初めて気づいた。

 

 会えなくなる、話せなくなる。雅が部屋にこもるようになってからでも、家の中という同じ空間にいたから、会うことも話すこともチャンスはいつでもあると思っていたから。


 だけど今はもう、チャンスそのものが失われてしまっている。

 それが悲しいのだ。寂しい。

 だからその感情に雅はいない。

 

 自分がそう思っているだけで、雅がどう思っているかは日記の通りだ。

 雅は、死んでもいいと思っていた。

 家族の誰に会えなくなっても、異世界で生きていけたらと希望を持っていた。


 雅にそう意識させたのは、親である自分と文博のせい。

 美杏が生まれた、仕事が忙しい、そんな都合を押し付けて、雅のことを理解しようともしていなかった。

 何がしたかったのか、何が好きだったのか。古い記憶ばかり、手間も仕方ないと一方的に面倒をみていた時にしかそれがみえていなかった。


 大きくなれば手間がかからなくなる。それが当たり前だと思っていた。

 手間がかからなくなるように教育しておいて、そんなことを考えていたのだ。

 

 親のエゴといわれるものの正体。

 それを呪いのように、侵されていた、なんて思わない。

 侵していたのは自分だから。


 雅が死んでも、雅が望む未来を想っていなかった。

 会えないとか話せないとか、自分の都合ばかり。

 それをさも雅のために泣いているようなつもりでいた。 


 美杏は、自分でも気づいていなかったズルい感情に気づいていたのだ。

 だから、本当に気にするべきは、言われたことなんかじゃなく。

 もういやだ、と走り去っていったあの後ろ姿にだった。


「…………」


 いつ通ったのかもわからない来た道。

 そこを流れていく風景が、清子にはまるで逆上っている感じられていた。

 

 そうして清子が少しぼんやりとして窓の外を眺めていると、「でもさ」と運転中の鈴希から声がした。


「善くんが言ってる透視能力のことって、木与木多さんもわかってることじゃないの?」

「当たり前だ。本人なんだからな」


「じゃあどうして、存在しない、なんて言ったわけ? 念写に写らない理由がわからないにしても、そんなふうに言う必要はなかったと思うけど。あるのにない、とかさ」


 それにあの人。石のこと、何の本物だ、って訊いてたよね。

 むしろそれが核心だといわんばかりに、妙に落ち着いた声で鈴希は言った。

 

 すると善は、「ああ」と意味ありげに微笑む。


「先客だ。どっちのかはわからないが、俺たちが情報を持ってくる可能性を考えて、木与木多さんを利用しようとしているんだろ」

「へえ、面白くなってきた」


 そんなことを言う鈴希の表情は、清子からでは見えない。


「でも、だ。そう楽しんでもいられない」

「ヤマシタセイリュウ?」

「そうだ。向こうが木与木多さんを知っているなら、当然ヤマシタさんの方にも手が回っているはずだ。となると、厄介なんだよ。お前も知ってるだろ? あの人は木与木多さんみたいに、清潔じゃない」

「まあね。じゃあ、どうする?」


 鈴希が言うと、そうだな、と善は少し悩んだが。すぐに「どっちにしてもあの人を頼らないことには、何もわからないままだ」と、これから向かう先を決定した。


          ◯


 都内より、隣県は隣県でもそこは内陸の側にある。

 そもそも海岸線よりも内陸のほうが国内としての面積が広いのは当然で。

 だからどこへ行ってもアスファルトと民家と施設と店と、という風景は変わらない。


 それが周囲を埋める幾種もの樹木に変わろうと、立ちはだかる山に変わろうと同じだ。

 むしろ、見飽きた風景、とでも言うべきだろう。


 新鮮味などどこにもなく、しかし新鮮であることが確かな場所。

 数多の木々が霧を吐き。それは今が夏の影響も相まってか、ヘッドライトの光の中ではもはや霧雨というくらいに外は湿気っている。


 行き違い二車線の道路のその両脇は数多の木々に挟まれており。夜闇に次々と浮かび上がるさまが、ここを戻る道のない一本道のように錯覚させ。

 それはつい三十分ほど前に越えてきた山の風景と似ているものの、道がおよそ平坦なために山だという意識は薄い。


 だから、森だ。


 最後に他の車とすれ違ったのは十分ほど前。

 いつクマやシカが飛び出してくるやもわからない夜の森の切れ間を、黒いワンボックスカーは走っていた。


 午後八時。

 その一時間前に鈴希と運転を代わり、今は善が運転している。

 

 長い一本道に脇道は少なく、あったとしても先を示す看板などない。

 おまけに風景にも変化がほとんどないため、ナビゲーションがなかったら、曲がり角を間違えても道に迷っていることに気づくのが遅れてしまうだろう。


 別荘地のせいか、建物も森に隠れるようにして存在しているため、目印も目印にならず。

 外から来た人間にとっては、ちゃんと不親切なところだ。


 車が徐行を始め、少しすると脇に入る道が現れる。

 トラック一台分程度の道幅だ。

 

 切り開かれてはいるものの、舗装はされておらず、砂利が敷き詰められているだけ。

 さらに奥へ二十メートルほど進むと、そこに古びた木の柵が道を塞いでいた。

 そばに一本だけ立てられた人丈の街頭が寂しげだ。


 善が車を降り、木の柵を開けて帰ってきた時、清子はずっと抱いていた疑問を投げかけた。


「あの、雅も石もどちらもないのに、ここへ来る意味はあるんですか?」


 すると善は、「ありますね」と頷いた。

 それが何なのか訊いても、「今さら説明なんていいでしょう」とどこか楽しげで、まともには答えなかった。


 そこからまた奥へ五十メートルほど車を進めたところ。

 そこにヤマシタセイリュウの家がある。


 幅二十メートルほどの大きな三角屋根を被ったありがちなログハウスだ。


 正面を向く五角形の壁は、絵に描く家の形そのもの。

 玄関扉の脇と上部に鉛筆型のランタンが光り、その右側には一メートル四方程度の窓が二つ感覚を置いてあり、暗く。左側には広いウッドデッキとその幅に合った大きな四枚戸の窓あって、そこから明かりがもれている。


 庭には薪を割る丸太と、あとは背面にタイヤを背負ったいかにもといったジープが一台停まっているだけで、何もない。

 

 善はその広い空間に車を頭から突っ込んで停めると。


「スズ。車の位置を直しておいてくれ」


 そう言い残してから、伊藤さん行きますよ、と先に車を降りた。 

 続いて清子が車を降り、一応振り返って鈴希のほうを確認すると、「後で行くから大丈夫ですよ」と彼女は微笑んで頷いた。


 玄関扉の前に立つと、善はそこに付けられたシンプルなノッカーを五階ほど打ち鳴らした。

 すると十数秒後、すぐ先でこもった足音がし、扉が奥へと引かれる。


「こんばんわ」


 溢れ出す大量の光の中、立っているのは女性。

 ティーシャツにスキニージーンズとラフな姿。身長は善と同じくらいだ。

 勝手に意表を突かれ、驚いた清子は小さく「えっ」と声を出していた。

 

「意外かな? しょうがないよね、こんな名前だし」


 ふふ、と女は笑う。 


「山に下、青い柳でヤマシタセイリュウって言うの」


 そう言って指先で空に字を書くと、「よろしくね、伊藤清子さん」と女は手を差し出した。


 白い肌、長く細い指。

 それと重なる自分の手が、随分くたびれているように見えた。


「よろしくお願いします」


 清子が会釈すると、青柳は「どうぞ」と二人を中へ促した。


 一面板張りのそこに、三和土たたきはない。

 代わりに扉の脇に一枚泥落としのマットが敷かれていて、善は慣れた様子でそこで足を擦り、そのまま靴を脱がずに中へ入っていった。

 土足で人の家に入るなんて初めての清子は、若干緊張しながら善の真似をして後に続く。


 最後まで扉を支えていた青柳は、二人が中に入ったのを確認した後も外を覗き込んでいた。 

 

「やっぱりあのオバサンも来てるんだ」

「もちろん。従業員ですから」

「ふーん……」


 不満げに鼻を鳴らして扉を閉じ、そしてまた「どうぞ」と、青柳は二人を左手の部屋へ改めて促した。


 先に善が部屋に入り、後に清子も部屋へと進むが。

 その背後、ガチャ、と鍵を閉める音が聞こえた。

 慌てて清子が振り返ると、そこで青柳は唇に人差し指を当てている。

   

 何をしているんだこの人は。

 唖然とする清子とすれ違いざま、青柳は「ふふふ」と楽しげに笑い声をもらした。 


 抜群のスタイルに整った顔立ち、一本に結われた綺麗な髪。

 善や鈴希に通ずる、清子が普段見かけることすらないような希少な人間は、しかし二人よりも変わった空気を醸し出していた。  

 

 艶めかしいという点、その存在感が最も近いのは善だろうが、それにしても変わっている。

 清子が漠然と感じるのは、山下青柳という女へのおかしさだった。


 感じるべき、いわゆるカリスマ性のようなものを彼女には感じない。

 奇妙な感覚に小首を捻り、清子は部屋に入った。


 どうやらそこはリビングのようだ。

 五メートル以上は確実にある高い天井、そこから垂れ下がるペンダントライトのコードは長く。

 

 奥に見えるキッチンスペースと中間にあるダイニングテーブルの辺り、そしてソファやテレビの置かれた団らんのスペースに、と幾つも配置されている様子は、さながら蜘蛛の糸のようだ。

 

 特段珍しい風景でもないのに、そんなふうに思うのは、彼女を呪術師だと聞かされているからかもしれない。

 清子がどこか探るような視線で青柳に目をやると、青柳は五人掛けはあろうかという大きなソファの端、善のそばに寄り添うように座っていた。 


「久しぶりだね、善くん。いつ以来かな?」

「ホネ以来ですよ」

「そうだったけ。なんかもっとずっと前な気がしてた」

「一年前です」

「ほーらね。ずっと前だ」

「そうですかね」


 やっぱり、この人はおかしい。

 訝しみつつ、清子は一人掛けのソファに腰を下ろした。

 

「それで、早速本題いいですか」


 善が言うと。


「そんなに焦らないでさ。ご飯食べた? 善くん来ると思って、カレー作っておいたよ」

 

 そんなことを言って、青柳はキッチンを指差した。


「いえ。来る途中済ませました。それで本題なんですけど……」


 言い掛けた善に、「そうだ、ワイン飲む?」と青柳は聞く耳を持たない。


「いや、運転があるんで」

「泊まってけばいいよ。じゃあ、ウィスキーはどう?」

「急ぎなんで」


 すいません。

 善が頭を下げると、「えー、つまんない」と青柳は大袈裟に善に寄りかかった。


「運転なんてさ、あのオバサンにやらせればいいよ。どうせ体力無限だし。それにさ、久しぶりなんだから一杯くらい付き合ってよ」


 指先は彼の胸板をなぞり、間近に見上げるような目つき。

 少しずつ、清子が彼女に感じるおかしさの正体に気づきかけてきたその時だった。


 激しく窓を叩く音。

 

『おーい! 鍵閉まってますけどー!』


 その向こうで鈴希が叫んでいる。

 

「ほら見て、善くん。すっごい顔」


 楽しげに笑う青柳は、窓の向こうの鈴希を指差して言った。

 それから「おーい」と手を振り、窓を開けるつもりはないようだ。

 見かねて清子が窓の方へ行こうとすると。


「じゃ、そろそろ本題話そっか」


 青柳はそんなことを言った。


 あからさまだ。

 彼女はあからさまに、鈴希を嫌っている。

 傍で清子が少しハラハラしていると、善が「お願いします」と清子に目配せをした。


 初めからそのつもりだったとはいえ、家主は彼女だ。

 一応「失礼します」とだけ言って、清子が窓を開けると。


「ありがとう、清子さん」


 鈴希は部屋に入るなり真っ直ぐに青柳の元へ行き、彼女の正面に向き合う形でローテーブルに腰掛けた。


「こんばんわ、お久しぶり」


 対して青柳は、ニヤついた表情を浮かべ、手の平をヒラヒラさせている。

 

「スズちゃん久しぶりー。元気だった?」

「ええ、とっても」

「なんか老けたんじゃない?」

「かもですね。もう三十五なんで……」


 鈴希が言った瞬間、青柳の顔が引きつった。


 これで、答えが出た。

 清子が山下青柳という女に対して感じていたおかしさ。

 容姿は美しいがそれでも、無理がある、と感じていたのだ。


 見た目にわからないその無理を感じ取れたのは、女としての勘だろう。

 自分にまだそんな力があったことに、清子は満足していた。が、鈴希は三十五だったのか、という驚きは大きかった。


「そういえば青柳さん、お誕生日いつでしたっけ。お祝いお送りしてなかったんで教えてもらえます?」


 鈴希の言うことに、青柳はまたぴくりと顔を歪めた。


「気にしないでー。こうして善くんが会いに来てくれただけで十分だから」

「あー、そうですか。若い男っていいですもんね」

「……えー。善くんそんなに若かった?」


 振り向く青柳に、「二十八です」と善が言った。

 清子はひとり、なんとなくわかる、と納得してソファに戻った。


「もう大人だね。善くん」

「そうですかね」

「そうだよ。さらに魅力が増したっていうか。すごくいい匂いがする」


 と、青柳がまた善に体を寄せる。

 すると。


「もしかして酔ってるんですか?」


 青柳さん。とその直前に鈴希の口が、お、と動いたのを清子は見ていた。

 どうやら青柳もそれを見ていたようで、小さく舌打ちをした。


「なんか眠くなってきちゃった。話は今度でもいい?」


 ついに機嫌を損ねたか。

 呆れて清子が状況を見守っていると。


「そんなこと言わないでください」


 善が青柳の手に自分の手をそっと重ねて言った。


「山下さんが聞いてくれないと、誰にも解決できないんです。だから、お願いします」


 これまでと変わらない声色。しかしその目は、明らかに艶を帯びている。

 次いでもう一方の手もそこに滑り込み、柔く指が踊る。


「えー……」


 しぶっているように見えるが、つられて青柳の目もとろけ始めているのがわかる。

 善のほうが一枚上手だ

 確信して、清子からほっと肩の力が抜けた。


「これなんですけど」


 そう言って善が胸ポケットから取り出したのは、木与木多が念写した五枚のポラロイド写真だ。

 

「何かわかりますか?」

「んー、どれどれ」


 テーブル上鈴希の開いた股の間、青柳はそこに受け取った五枚の写真を並べ、その内の一枚を取って顔に寄せた。

 眺めること数秒。

 写真から目を離した青柳は、「何も感じないね」と言った。

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