96.【鼓動】
昨日はすいませんでした。ちょっと長めの用事があって今回短いです。
たけのこの里…。
撒き散らされた脳髄と、紅く海を作り出すほどの血液。重く浮き出るほどに散らばっている腸の数々。生き残ってこの場に立っている者が、今どれだけいるだろう。
大罪囚イラ・ダルカ。これまで目撃した者はごく少数。その貴重な情報源も、狂的な憤怒で自分から身を散らしていった。彼らが伝えた情報に、一瞬で戦場を夜に変え、大勢の敵を多種多彩な傷でひれ伏させる力など無かった。
そして、肩口から小さく血を流すダリアの瞳に、諦める様子などない。視界に見える輝きの魔力。それが、今、どの瞬間よりも大きく見える。ぼんやりと淡く輝く魔力が、今は不気味なほどに強く、存在を主張している。
「ふぅ」
気だるげにバーサークを下ろすイラは、この範囲魔力で戦意を喪失させたと思い込んでいるのだろう。血のように弾けて砕け散ったバーサークが、撓み、ねじれて収束し、イラの腕に消えた。
先程から、点滅している。魔力がそれを見据えて、1番いいタイミングで強く光を発している。脳内で作り出している魔力は、脳に直接魔力を送っているため、ダリアの視界にしか映らない。
最低限の動きで、音なんてならないくらいのスピードで、漏れ出すような勿体無い殺意をその一刀全てに込めて。
「甘い。」
走り出したダリアの背後に、その影は一瞬で回り込み、手刀を落とした。
「わ・・・ざと・・・!?」
「・・・」
意識の無くなる直前。わざと油断してダリアを誘い出し、斬りかかってきたタイミングで背後へ回る。けれど、
ーーーどうしてそんなに魔力を節約している?
ひとつの疑問を最後に、首を落とされたダリアは赤く染まった。
ーーーーー
『聞こえるかい?イラ。』
「ああ聞こえるぜカガミ。どうやってんだこれ?」
『頭ん中でしょっちゅう話しかけてくる奴にやらせてる。』
全く興味の無い質問でなんとか誤魔化せないかとも思ったが、どうやらそこまで甘くないようだ。殺すなと言われていた対象をうっかり殺してしまっただけでは飽き足らず、これまで保ってきた情報をドカンと全て話してしまった。大罪囚の手数を知られてしまったのは、ミカミがまだ死んでいないこの戦場ではリスキーすぎる。
『まぁいい。そこは第五都市区だな?』
「ああ」
『分かった。俺は興都の方でラグナを探す。』
ブツリと切れたカガミの声に苦笑し、右腕から湧き出ていた紅い液体をバーサークへと変えていく。
「竜伐を全員殺す。それだけだろう?」