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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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92.【イラ・ダルカ】

短いです。すいません。

英雄になることを望み、自ら下層に下りた貴族の子供がいた。いなくなった子の名はダリア・エリセン。

昔から英雄願望が強く、とても上層に生きる人間とはいえなかった。けれど、エリセン家には優秀な人材が未だいた。ダリアの存在は別に必要ないとでも言うように、エリセンが落ちぶれることはなかった。


なんていう事を伝えたかったのか、衛兵として鍛錬する僕に、エリセンは呪いのように手紙をおくった。お前はまだ逃げられていない。そんな恐怖すらも抱くようになった。エイセンに恐怖を抱いたのは、それが初めてではなかった。

まだ僕がエリセンにいたころ。翼をもがれた鳥を見つけた。まだ純粋な正義感を人並に兼ね備えていた僕は、世間の厳しさなど知らぬものかと家に持ち帰った。

開口一番叩きつけられたのは罵詈雑言の嵐。なぜ罵倒されているのか、どうしてそんな目で見るのか、それすらも分からないまま、されるがままに詰られた。

「翼をもつ生物が羽を失えば、それはただの異物だ。」

そんな言い訳を並べてはいたけれど、それは血まみれの()()を持ち帰ったのが気に入らなかっただけだろう。汚い血で汚された床と軽蔑の眼差しで僕を見る母は、まったく同じもののようにみえた。

今思えば、そのころから、もう、僕が上層から逃げ出すのは、決まっていたのかもしれない。


今そんなことを思い出したのは、目の前に現れた大罪囚が放つ殺気が、予想をはるかに超えていたからだろう。衛兵が入り乱れ、魔法が炸裂し、剣撃の旋律が奏でられる。幾度となくベテランの衛兵が決死の特攻を重ね、それらが束となって第5都市区を守ろうと咆哮している。

が、いくら歴戦の剣士が肉薄し、魔道士が魔力を紡いでも、イラの体にはただのひとつも傷はつけられない。イラは自身の適応武器であるバーサークさえも使っていない。なにも持たない無手の状態で、第5都市区の最強戦力をおさえている。

「わらえよ雑兵。こんな愉快なときにそんな顔してたら」

憤怒の大罪囚イラ・ダルカが口角を盛大に歪める。

「死に顔が辛気臭くなっちまう。」


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