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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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85.【不可視の愛】

緑の髪と緑の剣。その特徴を言えば、誰もがこう答える。王剣の中で、最強の男、と。

翡翠の輝きを灯した魔剣。それを軽々と持ち上げ、けたけたと笑うエリアス・ファードラゴン。その男は、ベルフェゴールと戦う事なら許されたようで、

「その汚い眼を閉じろ下衆。楽に逝かせてやる。」

「おいおい、こんな可愛い子がたくさん出てきたら困っちまうな・・・」

憤慨した様子のベルフェゴールの殺気を正面に受けて尚、その男は怯まない。それが愚かな選択だとしても、誇りを重んじる彼にとっては些細な事だ。

エリアスが指を鳴らす。パチン、と鳴り響く音は、まるでなにかに届かせるかのように放たれており、ベルフェゴールが向いた先に、その光景はあった。

「ッ!?」

植物の緑によって隔離された大広間。壁に敷き詰められた緑のひとつひとつが絡まり合い、強固な壁を築きあげていた。いや、それだけならばベルフェゴールを驚かせる事は出来ないだろう。簡単な事。うねる植物がアケディアの両手首を縛り上げ、そのしなやかな肢体を壁に磔にしていた。

この世界の大厄災と言われる大悪魔。たとえそれが序列6位だとしても、怒らせれば命は無い。

背後に怒りの炎が見えるようだった。イラに言わせれば、これは、あまり美しく無い怒りだというのだろうか。けれど、エリアスにはとても、素晴らしい怒りに見えた。

「大丈夫だ殺さないさ。俺との勝負に勝ったら解放してやる。」

「下等生物がほざくものだな。貴様がここで上などと思わない事だ。」

「戦わないとわからないだろぉ?」

最早何も言うまい。怒りだけを瞳に宿した。研ぎ澄まされ、純粋な輝きを放つ怒りの輝きを瞳に宿した。

勝負は一瞬で決する。

「あがっ!!」

ベルフェゴールが突き出した手の先。エリアスの膝から上が消失した。なんの魔力の気配もない。魔力の用意時間もない。彼にその死があることが()()()()()()()()()()()圧倒的な力が、エリアスの反応速度を超えて炸裂した。

「口だけだったようだな。これなら、アワリティアを下したという()()()の方が面白かった。」

吐き捨てるように言い、亡骸に背を向ける。その愛おしい少女に手を差し伸べようとした時。

「うしろっ!」

「!?」

ボバッ、と血袋が弾け飛び、またしても大量の血液をその豪奢な大広間にぶち撒けた。それは見なくても分かる。紛れもなく、目の前で消し飛んだエリアスだった。2つの致死量の血液が広間を飾り、残虐な装飾に首をかしげた。

「ただの下等生物にこんな再生能力が・・・?」

「何かの魔導具?一回きりの蘇生道具を身に付けてた人、見たことある。」

未だ緑の鎖に囚われたまま、眼下の悪魔に声を投げる。それを聞いても納得できないようで、ベルフェゴールが血を指でなぞる。一筋の輝きが血に舞い降りた。

「血の匂いが、しない?」

血特有の、その独特の匂いがしない事に、ベルフェゴールが気付いた。浴びてきた血液の量が、その悪魔は多かったのだろう。

「気付いて欲しくなかったな。」

「またっ!?」

左手を掲げる。カッ、と収束するエネルギーが限界を超え、破裂する血袋から盛大に音がなった。けれど、血は流れない。さっきまで鬱陶しいほどに撒き散らされていた血液が、今はもう必要ないとでもいうように無くなった。

「偽物の体・・・!」

「知られたんならしょうがない。」

辺りを覆っていた植物たちが蠢き始め、次々とエリアスが飛び出してきた。植物たちの壁を突き破るように、産み落とされる命のように、エリアスたちの猛攻が始まった。

「何人集まったところで変わらん。」

振りかぶった翡翠の大剣を手に、ベルフェゴールへと飛来する。が、刃の届く領域に着く頃には、不可視攻撃が体を中心から円状に消失させる。

絶対的防御と攻撃を両立させるベルフェゴールの不可視の力。エリアスの偽物たちはそれになすすべも無く倒されていく。はずがない。変わらずに作り続けられるエリアス。それをまたベルフェゴールが撃ち砕いていく。そして、撃ち砕かれたエリアスが爆発する。

「ぐっ!聖約発動。」

爆炎の中で絞り出した一言。不可視攻撃がアケディアに向く。消え去ったのは植物の壁だけ。落下するアケディアを抱きかかえ、爆撃を避け続ける。

「とどめ」

「大罪悪魔を舐めるな。貴様らとは、感性が違う。」

ベルフェゴールが地面を指差す。

「は?」

皇城第1層から3層にかけてを、不可視攻撃が撃ち抜いた。

「皇城制圧完了。」

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