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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第2章【その最強は世界を求める】
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84.【滅びなくても】

「なぁ、これはもしかして君がやったのか?」

アリタルカが指を指したのは、アキトによって散り散りになったラグナ・ウドガラドその人だった。

特徴的な白髪という共通点、両者皇族。

「あれ、もしかして知り合い?」

「一応知っている。たしか、アルナの隠し子だ。かわいそうに。」

アリタルカも皇族の一員だった、あちら側へ堕ちてしまったラグナを哀れに思うのは当然だろう。まぁ、そうだとしたらアキトが少々申し訳なくなってしまうが。

「一応手加減はしたんだよ・・・。」

罪悪感で言い訳する。アキトはもっとえげつないことをしようと思えばできたのだが、さすがに殺してしまうため成功率の低い方を選んだ。カーミフス大樹林での再生をみれば、あれくらいでは死なない事はわかった。一応手加減した結果、わざわざ怪我人受け入れ態勢を整えていたアリタルカに治療を頼むしかなかった。

「確かに、命に関わる傷は全て自動治癒が終わっている。風魔法の効果だろうな・・・。」

「んじゃあ、もう意識は戻るのか?」

「いや・・・、早くても1週間はかかるだろうな。」

アキトとの戦闘で無くなっていたマナは、残っていたほんの少しだけの所で命に関わる箇所だけを治したのだろう。治さなくても問題のない箇所は治さずにそのままにすれば、命は繋げる。アキトが手加減なしで殺しにかかっていれば、重傷箇所を治す魔力が足りずに死んでいただろうが。

「1週間・・・か。」

この襲撃中の状況で、1週間経てば全てが終わっているだろう。

全てが蹂躙し尽くされ、栄えていた興都は奴らの初陣で滅びた憐れな廃都となる。それか、こちら側がどうにかして勝利して、奴らの襲撃を止めた英雄となるか。

1週間では長いかもしれない。3日でも、4日でも、下手したら今すぐにでも、こちら側かあちら側のどちらかが潰える。

「なぁ、年長者として答えて欲しいんだが、いいか?」

「・・・?ああ、構わないが。」

急にアキトに振られて疑問符を浮かべるアリタルカ。それは、年長者として聞くと言われたからだろう。興都一と言われた回復術師としてでは無い。年長者として、アリタルカ個人として。

「この戦いは、どちらかが滅びないと終わらないと思うか?」

「思わんな。」

全く迷う素振りも見せず、アリタルカはNOと口にした。

「これまで戦場に派遣されて、戦争を死ぬほど体験してきた。だが、どちらかが滅びないと終わらない戦争は、少ない。」

「・・・・・・。」

「良い意味でも、悪い意味でも。」

死んだ方がマシな仕打ちを受けたかもしれない。けれど、どちらかが滅びなくても、この戦争は終わるかも知れない。

「それだけ聞ければ十分だ。助かった。」

「ちょっと待て・・・」

出口へ向かおうとしたアキトをアリタルカが引き止めた。アキトが振り向くと、綺麗に整列している棚から容器を取り出し、アリタルカがそれを放り投げた。投げられたそれをアキトが掴む。

「これは?」

「ウルガがいたら渡してくれ。塗料のようなもんだ。塗れば水で洗わないと落ちないくらいに色がつく。」

「なるほど。」

「頼まれてくれるか?」

「ああ。」

今度こそ手を振って、扉を開けて外に出る。

現在の敵戦力。カガミ・アキト、アケディア・ルーレサイト、ベルフェゴール、イラ・ダルカ、サタン。

カガミはアキトを倒す担当へと赴くだろう。ラグナを倒した今、リデアとアミリスタは狙われない。ヴィネガルナはイラが担当しているためまだ危険だ。

そして。


「へぇ、大罪囚にもこんなかわい子ちゃんがいたなんてな。」

エメラルド色に輝く刀身に、金で紋様が彫ってある。どこからでも見えるようなその巨大な剣を、彼はいとも簡単に持ち上げてみせた。かといって、その男が筋骨隆々の男であるわけでは無い。その男は長身で、筋肉など全くついていないように思える。

「あなたの名前は?」

「エリアス・ファードラゴン。ウドガラド興国騎士団、王剣のエリアスだ。」

そういって、翡翠の輝きが乱舞した。

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