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前身・その最弱は力を求める  作者: 藍色夏希
第1章【その最弱は試練を始める】
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7.【改心劇を快進撃へ】

アワリティアが言い、それに答えるようにマモンが唸る。

ーーーお願いだ。見つけないでくれ!。

ただ、いのり続ける。あの化物達に見つかるなと、あの化物達に速く去れと。

アキトは、こっそり人を観察する時その人に視線を合わせない。その人の横や、その人の所有物に視線をあわせ、あくまでその人は視界におさめるのみ。視線を感じたといってこちらを振り向く。それが、恐ろしく怖かったからだ。しかし、そのアキトの癖は、いいように働いた。

「いくぞ。少々厄介な剣使いがきている。」

「ゔゔ。」

歩み、去っていくアワリティア達の観察をやめ、ボロを出さないように静かに身を潜める。

行った。視界にも、気配にも、あの化物はいない。そして、

「これは・・・」

半透明の樹皮。アキトは迷い、首を振る。

ーーーここに、隠れる。

アワリティアの出てきたその通路へ、意を決して飛び込んだ。

埃が舞い、肉眼でも確認できる程に年季のはいった通路を見て、溜息をついた。階下へと続く膨大な距離の階段が、アキトを飲み込むように口を開けていた。

「ホラーは勘弁だぜ。」

階段を降りていく。

コツリという音の連鎖。それが延々と続く。あった外からの光が見えなくなった頃。ついにアキトは、この樹林の、この『カーミフス大樹林の真意』へと到達した。

ーーーさぁ、ここがあなたの試練の、今回の試練の、終わる地。

頭蓋で響くその声は、聞くたびに饒舌さを増し、アキトに恐怖心を与えていく。

それでも、この言葉が正しいなら、とアキトは考える。新たな試練を加え、アワリティア、剣使い、この試練は、ここで決着する事となる。心の奥底で、金色の少女がはにかんだ。

「・・・ぇ」

嗚咽が漏れ、無意識の内にアキトは後ずさっていた。目の前にある絶景に、後ずさっていた。

地下に生成された巨大な空間。そして、その天井からせり出した岩塊。その遥か下に、4つの大きな箱。この空間を、絶景たらしめているのは、その箱の中心にあるそれだ。四角い宝石が何重にも重なったような美しい造形に、箱から射出される輝きを吸収するように乱反射する宝石。

「な・・・」

感嘆し、圧巻する。そして、アキトは駆け出した。きた道をまっすぐはしり、階段を2倍の速度で駆け上がる。

何度も躓きそうになり、何度も躓き、陽の光をあびる。急に視界を支配した光に目を細め、また駆ける。その、緑に足を斬られ、恐怖に挫かれそうになっても、アキトは止まらない。走る。

心の奥底で、少女ははにかんだ。あの少女なら、今から戻り許しを乞えば、満面の笑みで許すだろう。

これまで、リデアを死の危険に遭遇させたアキトでさえも。

見知った洞穴に、まだ剣の瞬く音が響いていた。あの絶景を目にして、自身の醜態を思い出して、許せなかった。でも、当の本人のリデアは許す。それも、許せない。

人類は、戦闘力に長けているだろうか?強靭な顎と鋭い爪を刃に持つ獣には、勝つのは難しい。なら、どうして人類はあちらの世界で頂点と同等のものとして君臨していた?

人間には、知能があった。先人の叡智があった。それを活かす技能があった。

要は、頭が良かったのだ。アキトには、今、戦闘力がない。なら、頭脳を使って、少女を助ける。否、罪を償う。


「貧血にして金欠にして豪傑な俺の快進撃だ。」


最後だけは嘘をつき、全く似せる気のない吸血鬼の自己紹介をパロり、自身を奮い立たせる。

この恐怖に、呑まれないように。

少し傷○語をパクりました。とりあえず、アキトの快進撃開始です。

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